I was...
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「はー終わったー…」
櫻井課長に頼まれた資料の差し替えはなんとか無事に終わった。
「お疲れ。助かりましたわ」
「お力になれたならよかったです。
あ、ちょっとコーヒー買ってきますね」
二宮さんははいよー、と答えてスマホを眺め始めた。
今日1日今まで仕事の二宮さんしか知らなかったけど
仕事以外でゆっくり話したせいか、
二宮さんの私への態度が穏やかになった気がする
リフレッシュルームでコーヒーを2本買って
自販機からふと目線を壁に移したとき、
社内ポスターが目に入った。
あれ…この人、今日の人だ
コンプライアンス徹底を謳う社内ポスターに、今日祐のお墓で会った女の人が載っていた。
同じ会社の人だったんだ…
やっぱり美人
祐の…いとこ…?
いろいろ疑問に思いながら、コーヒーを持って戻る。
「お疲れ様でした」
コーヒーを1本二宮さんに差し出す。
「ども」
二宮さんはコーヒーを開けると、飲みながらスマホを見ている。
「…あの、さっきリフレッシュルームに貼ってあった社内ポスターに今日祐のお墓で会った人が載ってました」
私の言葉に顔を上げた二宮さんは、
鋭い視線をぶつけてきた。
「あの女の人なんですけど、知ってました?」
「まーね」
「私、祐のいとこって聞いてたんですけど、いとこも同じ会社って珍しいですよね」
「いとこ、ね…」
「いとこ、なんですかね」
「さあ」
「…二宮さんは、あの女の人と一緒に仕事されてたんですか?」
二宮さんはコーヒーを一口飲んで、
真っ直ぐ私を見ている。
そして一度遠くを見てため息をついて
もう一度私を見る
「…アナタ、真実を知りたい?」
「何の真実ですか?」
「祐の過去」
「祐の過去ですか?私が知らない過去ですか?」
「傷ついてでも、知りたい?」
「傷つくような話ですか…?」
どんな話が飛び出すのか、怖くなった
静寂が空気を張り詰めたものにする
「…どんな話ですか?」
「…座れ」
二宮さんの隣のイスに座ると、お互い向き合った。
怖い。なんの話だろう
「あいつ、あの女は祐の女だったのよ」
「え…?どういうことですか?」
「つまり簡単に言うと、祐は他に女がいたってわけ」
「え?冗談ですよね?」
そのあとの言葉がでない
頭が混乱していくのがわかる。
祐に、他に女の人が?
「…浮気、ってことですか?」
「浮気なのか、本気なのかは知らね」
「本気…」
そこから頭が真っ白になって
言葉が出なくなった
「そっか…そうだったんですね…」
「…」
必死で理解しようとする
私がずっと好きで、忘れられなかった祐には
他に女の人がいて?
だったら、私は、何だったの?
私は4年間、何を抱えていたの?
「…井川」
気が付くと、涙が溢れていた。
気持ちはもうめちゃくちゃで
よく理解できないまま
誰を、何を責めたらいいのかわからない
本当に本当の話?
本当の話なら
気付かなかった私がバカだった?
祐を好きになった私がバカだった?
でも祐を好きだったことは、紛れもない過去だ
一度冷静になりたくて、ふぅ、と息を吸って吐き出した
「…二宮さん、教えてくれてありがとうございます」
「…」
無言のまま、二宮さんは私を見つめる
「帰りましょう」
ハンカチで涙を拭いて、席を立った。
これ以上ここで涙は流せない。
でも、私物を鞄に詰めている間も、涙が止まらなくて
めちゃくちゃになった感情が、落ち着いてくれない。
「…もう蓋しなくていーんじゃねえの?」
二宮さんが静かな口調で言う
「その蓋外せ。お前の感情抑えてるやつ」
その一言に、心の何かが外れたように
嗚咽が止まらなくなった。
「…っぐ…祐が、私は祐がとても好きだったのに、いまでも忘れたことなんて1度もないのに、っぐ」
自分でも何を言っているのかわからないくらい
頭の中は混乱したまま言葉が出てきた
信じられない
信じたくない
二宮さんは無言のままだ
「その話が本当なら、なんで私を裏切ったのか、私の何がダメだったのか、祐に聞きたいっ…っく…でも答えてくれないっ…」
ハンカチで顔を覆って声を押し殺して泣こうとしても、押し殺せない。
ゴロゴロゴロ、とオフィスチェアの音が聞こえて、止まったと思ったら手を引かれて座らされた。
そして温かい手が私の頭をポンポンと触れる。
「俺が、受け止める」
「…っく」
「アナタの感情ぜんぶ受け止めますから」
いつも厳しくて怖いはずの二宮さんが、
想像もつかないくらいの優しい声をかけてくれる。
この、ボロボロになった感情を優しく受け止めてもらえるなら、甘えたくなってしまう。
涙が止まらない私の頭を、優しくずっと撫でてくれる。
「っく…」
「今は好きなだけ泣きなさい」
私の頭を二宮さんは自分の肩のあたりに引き寄せ、後頭部を優しく包んでくれる。
職場でこんなこと、っていつもの私なら冷静に思えるのに、いまは止まらない涙とめちゃくちゃな感情でなにもできない。
「大丈夫」
「っく…うう…っく」
祐のバカ。
私のバカ。
なんでいなくなっちゃったの
どういうことなの
今日ほどいてほしい、と思ったことはない。
櫻井課長に頼まれた資料の差し替えはなんとか無事に終わった。
「お疲れ。助かりましたわ」
「お力になれたならよかったです。
あ、ちょっとコーヒー買ってきますね」
二宮さんははいよー、と答えてスマホを眺め始めた。
今日1日今まで仕事の二宮さんしか知らなかったけど
仕事以外でゆっくり話したせいか、
二宮さんの私への態度が穏やかになった気がする
リフレッシュルームでコーヒーを2本買って
自販機からふと目線を壁に移したとき、
社内ポスターが目に入った。
あれ…この人、今日の人だ
コンプライアンス徹底を謳う社内ポスターに、今日祐のお墓で会った女の人が載っていた。
同じ会社の人だったんだ…
やっぱり美人
祐の…いとこ…?
いろいろ疑問に思いながら、コーヒーを持って戻る。
「お疲れ様でした」
コーヒーを1本二宮さんに差し出す。
「ども」
二宮さんはコーヒーを開けると、飲みながらスマホを見ている。
「…あの、さっきリフレッシュルームに貼ってあった社内ポスターに今日祐のお墓で会った人が載ってました」
私の言葉に顔を上げた二宮さんは、
鋭い視線をぶつけてきた。
「あの女の人なんですけど、知ってました?」
「まーね」
「私、祐のいとこって聞いてたんですけど、いとこも同じ会社って珍しいですよね」
「いとこ、ね…」
「いとこ、なんですかね」
「さあ」
「…二宮さんは、あの女の人と一緒に仕事されてたんですか?」
二宮さんはコーヒーを一口飲んで、
真っ直ぐ私を見ている。
そして一度遠くを見てため息をついて
もう一度私を見る
「…アナタ、真実を知りたい?」
「何の真実ですか?」
「祐の過去」
「祐の過去ですか?私が知らない過去ですか?」
「傷ついてでも、知りたい?」
「傷つくような話ですか…?」
どんな話が飛び出すのか、怖くなった
静寂が空気を張り詰めたものにする
「…どんな話ですか?」
「…座れ」
二宮さんの隣のイスに座ると、お互い向き合った。
怖い。なんの話だろう
「あいつ、あの女は祐の女だったのよ」
「え…?どういうことですか?」
「つまり簡単に言うと、祐は他に女がいたってわけ」
「え?冗談ですよね?」
そのあとの言葉がでない
頭が混乱していくのがわかる。
祐に、他に女の人が?
「…浮気、ってことですか?」
「浮気なのか、本気なのかは知らね」
「本気…」
そこから頭が真っ白になって
言葉が出なくなった
「そっか…そうだったんですね…」
「…」
必死で理解しようとする
私がずっと好きで、忘れられなかった祐には
他に女の人がいて?
だったら、私は、何だったの?
私は4年間、何を抱えていたの?
「…井川」
気が付くと、涙が溢れていた。
気持ちはもうめちゃくちゃで
よく理解できないまま
誰を、何を責めたらいいのかわからない
本当に本当の話?
本当の話なら
気付かなかった私がバカだった?
祐を好きになった私がバカだった?
でも祐を好きだったことは、紛れもない過去だ
一度冷静になりたくて、ふぅ、と息を吸って吐き出した
「…二宮さん、教えてくれてありがとうございます」
「…」
無言のまま、二宮さんは私を見つめる
「帰りましょう」
ハンカチで涙を拭いて、席を立った。
これ以上ここで涙は流せない。
でも、私物を鞄に詰めている間も、涙が止まらなくて
めちゃくちゃになった感情が、落ち着いてくれない。
「…もう蓋しなくていーんじゃねえの?」
二宮さんが静かな口調で言う
「その蓋外せ。お前の感情抑えてるやつ」
その一言に、心の何かが外れたように
嗚咽が止まらなくなった。
「…っぐ…祐が、私は祐がとても好きだったのに、いまでも忘れたことなんて1度もないのに、っぐ」
自分でも何を言っているのかわからないくらい
頭の中は混乱したまま言葉が出てきた
信じられない
信じたくない
二宮さんは無言のままだ
「その話が本当なら、なんで私を裏切ったのか、私の何がダメだったのか、祐に聞きたいっ…っく…でも答えてくれないっ…」
ハンカチで顔を覆って声を押し殺して泣こうとしても、押し殺せない。
ゴロゴロゴロ、とオフィスチェアの音が聞こえて、止まったと思ったら手を引かれて座らされた。
そして温かい手が私の頭をポンポンと触れる。
「俺が、受け止める」
「…っく」
「アナタの感情ぜんぶ受け止めますから」
いつも厳しくて怖いはずの二宮さんが、
想像もつかないくらいの優しい声をかけてくれる。
この、ボロボロになった感情を優しく受け止めてもらえるなら、甘えたくなってしまう。
涙が止まらない私の頭を、優しくずっと撫でてくれる。
「っく…」
「今は好きなだけ泣きなさい」
私の頭を二宮さんは自分の肩のあたりに引き寄せ、後頭部を優しく包んでくれる。
職場でこんなこと、っていつもの私なら冷静に思えるのに、いまは止まらない涙とめちゃくちゃな感情でなにもできない。
「大丈夫」
「っく…うう…っく」
祐のバカ。
私のバカ。
なんでいなくなっちゃったの
どういうことなの
今日ほどいてほしい、と思ったことはない。