I was...
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その女性は、長い黒髪で細いラインの人で、
長いこと手を合わせている。
目を開けると、お墓を悲しそうな目で見つめている。
「二宮さん、知ってる人ですか?」
小さな声で二宮さんに聞く
二宮さんを見ると、怖い顔で睨んでいた。
女性はお墓から歩き出し私たちに気付くと、
ハッとした顔をした。
「どーも。」
「…カズ…久しぶり」
二宮さんと女性は、乾いた会話をした。
「来てたんすね」
「うん…私、お世話になったし、せめて命日だけでもって思って」
「ふーん、『お世話に』なったんだ」
その女の人は 少し気まずそうな顔をした
「…じゃ、私はこれで」
女性は私に軽く会釈をして去っていった。
とてもキレイな人
どこかで見たことある
確か、祐のいとこって聞いてたような…
「二宮さんと知り合いの方なんですね」
二宮さんは彼女の後ろ姿をまだ睨んでいる。
そのまま無言で振り返ると、「行くぞ」と歩き出した。
「あ、はい」
二宮さんの背中を慌てて追う。
お葬式のとき、だったような…
祐のいとこって誰に聞いたっけ…?
まぁ、手を合わせてくれる人が多いのはいいことだよね、と変に納得して二宮さんを追いかける。
すでに祐のお母さんたちが来ていたのか、キレイなお花がたくさん活けてある。
簡単にお墓を掃除して、お花を活けて、
お線香に火を着けて、手を合わせて目を閉じる。
祐、元気?
今年は二宮さんが一緒に来てくれたよ。
二宮さんの活躍はすごいよ。
話聞いてほしいし、祐の話もたくさん聞きたい。
あの約束、何だったの?
答えてくれはしないけど、今日は祐に届きそうな気がする。
「二宮さん来てくれて、祐も喜んでるんじゃないですかね」
目を開けて、二宮さんに言う。
「さあね。迷惑がってると思うよ」
二宮さんは「行くぞ」と短く言ってお墓を後にした。
私もその後をおいかける。
去年は松潤が一緒に来てくれたけど、
今日二宮さんと来れたことがとても新鮮で
祐の過去に対しても、これまでとは違う少し気持ちになった気がした。
「腹へったー。朝から何も食べてねえよ」
「そうなんですか?駅前にいろいろありましたよ」
「ハンバーグ」
「ハンバーグですか?えっと、洋食屋があったような…」
「連れてってよ」
「え?私もハンバーグ食べるんですか?」
「いいじゃん付き合えよ。仕事でいっつも世話してあげてるでしょ?」
「そ、それはそうですけど…」
世話してもらってるというか、怒られてるだけというか…
まぁ、仕事上のパートナーだし、断れるわけないか…
しぶしぶ付き合うことにして洋食屋さんに向かった。
洋食屋ではいろんな話をした。
仕事のこと、二宮さんの過去の仕事のこと。
これまでの関係とは思えないくらいフランクに話ができた。
ハンバーグも「うまっ」と言いながらきれいに食べきっていた。
お店を出る頃には夕方になっていて、
二人で駅に向かって歩いていた。
駅に着く頃、二宮さんの携帯が鳴った。
「はい、二宮です。お疲れ様です。
…今からですか?はい、わかりました。
失礼します」
「仕事ですか?」
「櫻井課長から。明日の朝イチの会議の議題が変わったらしい。資料の差し替え頼まれた」
「私も手伝います」
「何時に帰れるかわかんねーぞ?」
「じゃあ尚更手伝わせてください」
「…どーぞ」
今日1日、二宮さんと過ごして
二宮さんの仕事に対する姿勢や厳しさが理解できた。
素直に、力になりたい、と思えた。
そのまま2人で、オフィスに向かう電車に乗り込んだ。