I was...
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「次は…駅」
電車のアナウンスが降りる駅を知らせる。
今日があの木曜日。
花束を持って電車に揺られる。
今日は平日だけど、1日休みをとって午後から家を出た。
少し都心から離れた、静かで自然が残るエリアに祐のお墓はある。
電車を降りて、改札につながる階段を降りる。
まったく縁もゆかりもなかったこの地だけど、今では一人でさくさく行ける。
今日は天気いいし
少し遠いけど歩こう。
いつもならバスで墓地まで向かうけど
天気の良さと心地いい風につられてしまった。
自動改札を出て西出口に向かうと、
ハッと立ち止まった。
「待ってましたよ」
「…に、二宮さん?なんでここに…」
「ワタシも今日休み」
「いや、あの、ここで何してるんですか?」
「たぶん行き先一緒」
そう言って私の持つ花束を指差す。
二宮さんも花束を抱えていた。
そしてスタスタと歩き出し、慌ててその姿を追う。
「えっ、二宮さん、祐のこと知ってたんですか?」
「知ってるも何も、地元が一緒なの」
「そうなんですね…私、祐とは大学が一緒の同期で付き合ってました」
「知ってる」
「小さい頃から知ってるんですか?」
「小学校と中学が一緒。昔は野球もやってたのよ」
「…祐は、サッカーだけかと思ってました」
大学生のときから1年半付き合ってたけど、
まだまだ知らないことあるんだな
「天気よくて眠くなるねこれ」
二宮さんはそう言ってあくびをする。
なんか、今日、機嫌いい…?
「…何?」
「あ、いや、えーとその、なんか仕事のときと雰囲気違うなーって」
「今日はオフ。いつもは仕事モード。
切り替えの天才。」
その、切り替えのうまさに私は毎日振り回されてるんですけどね…
とは言えない。
それからしばらく無言で歩いた。
でも職場での無言の時間とは違う
ほんと天気いい。
そういえば祐と最後にお別れしたお葬式は、雨だったっけ
「…二宮さんが祐に最後に会ったのはいつだったんですか?」
「確か、アイツが事故に遭う3日くらい前だったかと」
「そうなんですね…私、亡くなる1週間前でした」
彼女だったのに。
亡くなる前の1ヶ月はお互い新入社員で忙しくしていて、
会う時間も限られていた。
私は横浜支店だったけど、祐は埼玉支店で
仕事で関わることもなかった。
そして亡くなった日の数日後の週末に、
会う約束をしていた。
大事な話があるから、空けておいてと
約束したまま果たされることはなかった。
そして亡くなった日、私は営業同行研修の出張で福岡にいた。
祐が事故に遭った、と聞いたときは
福岡のホテルに着いてゆっくりしていたときだった。
同期からの電話
祐が事故に遭ったこと
めまぐるしく時間が流れたことを覚えている
病院に運ばれたけど危ないらしい、と聞いてそこから息ができなくなって苦しくなったこと
終電はもう過ぎていて、朝イチでしか東京に戻れなくて
その日の夜は眠れなくて始発の時間までそわそわして
やっと病院に着いたときにはもう息はひきとっていて
車に轢かれた、と聞いていたけど亡骸はいつもの祐のままで
すぐに目が覚めるものだと思えて仕方なかった
そこからの記憶は曖昧で
お通夜もお葬式も断片的にしか覚えていない
たくさん泣きすぎて、ご飯も食べれず
一人暮らしだったけど母に心配されてしばらく実家に戻ったりした。
少しずつ、時間と共に仕事に意識を向けられるようになったのは亡くなって半年が過ぎた頃だったけど
未だに祐のことを1日も忘れたことはない。
もう2度とあんな悲しい思いしたくない。
祐の約束の話、なんだったのかな
分かってるけど、聞いてももう答えてくれない
「なげー坂道。しんどー」
「がんばりましょう、あと少しです」
お墓までの最後の坂を上る。
二宮さんを励ますことなんて職場では一生ないだろうな
最後の坂を上りきって、「あー疲れた」と
二宮さんは両手で伸びながら言う。
こんな自然体なところ、ギャップがありすぎて戸惑う。
「お墓、こっちです」
二宮さんに伝えると、祐のお墓の前で
一人の女の人が手を合わせているところが見えた。
「…先客いらっしゃいますね」
一人の女の人の姿が、祐のお墓の前に見えた。
電車のアナウンスが降りる駅を知らせる。
今日があの木曜日。
花束を持って電車に揺られる。
今日は平日だけど、1日休みをとって午後から家を出た。
少し都心から離れた、静かで自然が残るエリアに祐のお墓はある。
電車を降りて、改札につながる階段を降りる。
まったく縁もゆかりもなかったこの地だけど、今では一人でさくさく行ける。
今日は天気いいし
少し遠いけど歩こう。
いつもならバスで墓地まで向かうけど
天気の良さと心地いい風につられてしまった。
自動改札を出て西出口に向かうと、
ハッと立ち止まった。
「待ってましたよ」
「…に、二宮さん?なんでここに…」
「ワタシも今日休み」
「いや、あの、ここで何してるんですか?」
「たぶん行き先一緒」
そう言って私の持つ花束を指差す。
二宮さんも花束を抱えていた。
そしてスタスタと歩き出し、慌ててその姿を追う。
「えっ、二宮さん、祐のこと知ってたんですか?」
「知ってるも何も、地元が一緒なの」
「そうなんですね…私、祐とは大学が一緒の同期で付き合ってました」
「知ってる」
「小さい頃から知ってるんですか?」
「小学校と中学が一緒。昔は野球もやってたのよ」
「…祐は、サッカーだけかと思ってました」
大学生のときから1年半付き合ってたけど、
まだまだ知らないことあるんだな
「天気よくて眠くなるねこれ」
二宮さんはそう言ってあくびをする。
なんか、今日、機嫌いい…?
「…何?」
「あ、いや、えーとその、なんか仕事のときと雰囲気違うなーって」
「今日はオフ。いつもは仕事モード。
切り替えの天才。」
その、切り替えのうまさに私は毎日振り回されてるんですけどね…
とは言えない。
それからしばらく無言で歩いた。
でも職場での無言の時間とは違う
ほんと天気いい。
そういえば祐と最後にお別れしたお葬式は、雨だったっけ
「…二宮さんが祐に最後に会ったのはいつだったんですか?」
「確か、アイツが事故に遭う3日くらい前だったかと」
「そうなんですね…私、亡くなる1週間前でした」
彼女だったのに。
亡くなる前の1ヶ月はお互い新入社員で忙しくしていて、
会う時間も限られていた。
私は横浜支店だったけど、祐は埼玉支店で
仕事で関わることもなかった。
そして亡くなった日の数日後の週末に、
会う約束をしていた。
大事な話があるから、空けておいてと
約束したまま果たされることはなかった。
そして亡くなった日、私は営業同行研修の出張で福岡にいた。
祐が事故に遭った、と聞いたときは
福岡のホテルに着いてゆっくりしていたときだった。
同期からの電話
祐が事故に遭ったこと
めまぐるしく時間が流れたことを覚えている
病院に運ばれたけど危ないらしい、と聞いてそこから息ができなくなって苦しくなったこと
終電はもう過ぎていて、朝イチでしか東京に戻れなくて
その日の夜は眠れなくて始発の時間までそわそわして
やっと病院に着いたときにはもう息はひきとっていて
車に轢かれた、と聞いていたけど亡骸はいつもの祐のままで
すぐに目が覚めるものだと思えて仕方なかった
そこからの記憶は曖昧で
お通夜もお葬式も断片的にしか覚えていない
たくさん泣きすぎて、ご飯も食べれず
一人暮らしだったけど母に心配されてしばらく実家に戻ったりした。
少しずつ、時間と共に仕事に意識を向けられるようになったのは亡くなって半年が過ぎた頃だったけど
未だに祐のことを1日も忘れたことはない。
もう2度とあんな悲しい思いしたくない。
祐の約束の話、なんだったのかな
分かってるけど、聞いてももう答えてくれない
「なげー坂道。しんどー」
「がんばりましょう、あと少しです」
お墓までの最後の坂を上る。
二宮さんを励ますことなんて職場では一生ないだろうな
最後の坂を上りきって、「あー疲れた」と
二宮さんは両手で伸びながら言う。
こんな自然体なところ、ギャップがありすぎて戸惑う。
「お墓、こっちです」
二宮さんに伝えると、祐のお墓の前で
一人の女の人が手を合わせているところが見えた。
「…先客いらっしゃいますね」
一人の女の人の姿が、祐のお墓の前に見えた。