2章
「そろそろ社長にアイデアを提出しようと思うんだけど、何か追加でアイデアあった?」
出勤するや否や一歩から声がかかった。
葬儀の仕事が入って話が進んでいなかった。今日は打ち合わせの予定はない。話を進めるには絶好の日だ。
「アイデアというアイデアはないんだけど、メニューをどうするかなって。やっぱり、店には一つか二つ、代表する何かがないといけないと思う。開発は後からするにしても、何を売りにするかというのは決めておきたいかも」
「確かに。それ、大事なことだった」
ボールペンを回しながら考え始めた一歩に、香織里はそういえばとある話題を出した。
「そういえば福原さん、アイコン変わってたね。黒蜜きなこ」
「ちょ、今ここでその話は」
一歩が視線を送った先には、桃色の胡蝶蘭を花瓶に生けていた園子がいた。営業所の入り口には、お客を迎えるための花がいつも置かれていた。その花の管理は生花担当の園子の仕事だ。
「なになに、パフェ? おばちゃんも話に混ぜてよ」
二人から距離はあるのに、パフェという単語を素早くキャッチした園子は、誰も使っていない椅子を引っ張ってきて香織里と一歩の間に入ってくる。
「なんでそんなに耳がいいんだよ園子さんは」
「噂話も口コミも全部仕事で使えるのよ。この地域のことを知らないというのは地域の葬儀屋としてはアウトじゃない? だから聞き耳はいつもピンと立ってるの。で、何、なんでパフェの話しているの?」
一歩は溜息をついて、机の上に広げていたノートを差し出した。
社長から宿題が出されていること、飲食店のアイデアを提出しようとしていることを聞いた園子は目を輝かせた。
「素敵じゃない。いいと思う。ここには料理がめちゃくちゃ上手な香織里ちゃんもいるし。あ、でもそうしたら香織里ちゃんはアシスタント卒業になっちゃう?」
「いえ。アシスタントとして料理を作ろうかなって。ここで打ち合わせもできるようにしたいんです。葬儀に直接参加しなくても、できることはあるなって思ったんで」
「そっかあ〜。でも、香織里ちゃんのお料理でお見送りができるって、いいと思う。一昨日のフレンチもすっごい美味しかったし」
「それだ。お見送り。お見送りコース、お見送りランチ、なんでもいい、お見送りと供養のためのメニューがほしい」
一歩は園子からノートを奪い取り、勢いよくメモを取り始めた。
「香織里さんはその人に合った料理を出すのが得意そうだから。お見送り、供養のための特別な料理を出したらいいと思う。できそう?」
「多分。打ち合わせが必要だけど、作ることはできると思う」
幸恵の場合はレシピが遺っていたから作ることができた。
次の世に旅立てない霊がいれば、故人本人から直接聞いて作ることも可能だ。お見送り、供養のためであれば、今までの経験から可能だと考えられた。
「あと、園子さんで思い出したんだけど、葬儀で使っているお花も置いたらどうかな。まだあいメモリーのショップで花は売っていなかったよね。園子さんの祭壇って洋風の花もたくさん使ってるし、こういう綺麗な花も使ってますよってアピールもできると思う。お店も華やかになりそうだし」
自分は主役にはなれないのよ。園子の言うことはもっともだ。だが、もう少し、出しゃばってみてもいいと香織里は思っていた。
園子のセンスを、香織里はもっと多くの人に知ってもらいたい。
「どう、園子さん。園子さんを巻き込む形になっちゃうけど」
「いいんじゃないかしら。花屋さんも花が売れないって言っていたし、連携取れるともっといいわ。葬式で使う花のイメージを変えてもらうにもいいかも。やれって言われたらやるわよ、私」
決まり、と一歩は『葬儀で使う花を置く』というメモにぐりっと大きく丸をした。
「そうなれば、葬儀をしない人にも来てほしいわね。そういう人には何を食べてもらう? あ、パフェ? パフェにする?」
「なんで僕を見るんだよ。香織里さんはどう思う?」
「いいと思う。それとコーヒーを飲んでもらって。花を見て、ゆっくりしてもらって、あいメモリーを覚えて帰ってもらう。パフェにしよう。あと軽食……サンドイッチとかカレーとか、カフェっぽいやつ」
香織里が提案すると、一歩はそれらを全部書き出して、頷いた。
「葬儀屋がするカフェ。じゃあ、これで社長に提案してみる。ところで、香織里さん、そうとなれば香織里さんにはまた研修をしてもらわないといけないんだ」
一歩はブラウザを立ち上げ、検索した画面を香織里に見せた。
「食品衛生責任者の資格が必要になってくる。うちには、この資格を持っている人がいないから、もし案が通れば、この講義を受けてもらう必要があるんだ」
園子がそれだけでいいのかと驚いている。香織里も調理師免許のほうが必要なのかと思っていたが、こちらは絶対ではないらしい。講習自体も一日で終わり、最後にある小テストをクリアすればいいそうだ。費用も一万円と思ったより安かった。
香織里が了解すると、一歩は起案のための書類の作成を始めた。
「店名は?」
園子が思い出したかのように聞いてきて、香織里はうーん、と考えた。
その時、香織里たちの上でおてんとちゃんがふわふわ漂っているのを見て、口から自然に言葉が出てきた。
「cafeおてんと――」
いつもおてんとさまは自分たちを見守っている。母の声が耳の奥で蘇った。
見守ってくれているのは、母のような気もするし、頭上で漂っているおてんとちゃんのような気もする。おてんとちゃんがいることに、悪い気はしなかった。
香織里の提案はすぐに採用され、その翌日には起案書が出来上がっていた。
社長室に入って、一歩がメインとなってコンセプトの説明をした。香織里の料理を一度口にしていること、幸恵のお見送りを見ていること、カフェの方針があいメモリーの方針と同じであることが重なって、高く評価された。
説明をしている間、平次の顔には笑みが浮かんでいた。
「面白いね、やろうよ」
平次のその言葉を皮切りに、すぐに物事は動き始めた。
心配していた食品衛生責任者の講義とテストはあっさりとクリアした。店舗は営業所よりやや大きめ、収容人数は従業品含めて二十人ほどとなっている。
葬儀の仕事が入れば葬儀の仕事をし、なければカフェの準備をする。忙しい日々を送った。
メニュー開発に付き合ってくれたのは、一歩や園子だけでなく、みのりもだった。
みのりにカフェをすることを知らせると、ぜひ試食をさせてほしいと言われたのだ。専門的な知識を持つみのりからアドバイスをもらえるのは心強かった。
看板メニューとなるパフェの試作は山程作った。
メニュー開発をしている間、一歩から何度か他のカフェの様子を見に行こうと誘われ、休日に二人で出かけることがあった。
黒蜜きなこのパフェも、もちろん食べに行った。和風スイーツを看板にしていて、その中でも黒蜜を売りにしていた店だった。
香織里の試作パフェを日頃から食べている一歩は、どこに行っても「香織里さんのこの前作ったパフェのほうが……」と感想を述べる。
「それ、参考にならないよ」
恥ずかしくてたまらないので、香織里はもうちょっと参考になるような感想を言ってほしいと頼むが、一歩は真顔で言うのだ。
「でも本当のことじゃないか。僕は香織里さんの作るものが一番好きなんだ」
「それ、私が作るものならなんでもいいって言ってるのと同じだからね」
「なんでそうなるんだよ、そうとは言ってないだろ。なんだよ、僕よりみのりさんの方がやっぱり参考になるって?」
「まあ、実際、そうかも。一歩くんは甘いのならなんでもいいって感じがするから」
「は? 僕だってな、こだわりはあるよ? こだわりがある上で、香織里さんのは美味しいって言ってるんだよ」
口をへの字に曲げながらも、一歩は素直に美味しいと言ってくれるのが、香織里は嬉しかった。一方、一歩が好きなのは料理の方だったのかとがっかりしている自分もいた。
園子からは食用花の存在を教えてもらった。葬儀ではバラを使うこともあり、食用のバラを添えて見栄えをよくする。フルーツは近辺でとれるものを選んだ。いちご、桃、ぶどうなどである。これは季節によって変化する。
クリームの甘さは、フルーツの甘さを生かすように控えめにした。
看板のパフェができ、小さな店舗ができ、香織里の手伝いをしてくれるパートも決まっていく。このスピードの速さは、あいメモリーが長年培ってきた各業者との関わりあってのものだった。
そうしているうちに春が近づいていた。だんだんと暖かくなっていき、世の中は新生活を迎えるムードになっている。
愛翔は第一志望の大学に受かった。春からは県外で一人暮らしだ。
「彼氏とうまくやれよな。またこっちに帰ってきたら、香織里の店行くわ」
「だからさあ、上司だってば。一人暮らし頑張って」
愛翔は、手を軽く上げて、父の車に乗り込んだ。愛翔には充実した四年間を過ごしてもらいたい。
愛翔を見送ったあと、香織里は一歩から連絡が来ていることに気付いた。
『開店前に一度、準備お疲れ様会がしたい。暇な時間ある? てか今日の夜、暇?』
夜、という言葉に、香織里はどきっとした。
『一歩くんって今日、出勤日だけどいいの? 園子さんは? みのりさんは?』
『今日は定時で上がる予定だから。来てほしいなら連絡取るけど。都合が合いそうなら、みんな呼ぶよ』
『じゃあ、お願い。たくさん協力してもらったから』
こういう時こそ、愛翔に茶化してほしかった。愛翔がいれば、違うよ、と言いながらも、一歩と二人で夜に会う約束ができたはずだ。
情けないな、と思う。スマホをベッドに投げて、自分も布団の上に倒れ込んだ。
出勤するや否や一歩から声がかかった。
葬儀の仕事が入って話が進んでいなかった。今日は打ち合わせの予定はない。話を進めるには絶好の日だ。
「アイデアというアイデアはないんだけど、メニューをどうするかなって。やっぱり、店には一つか二つ、代表する何かがないといけないと思う。開発は後からするにしても、何を売りにするかというのは決めておきたいかも」
「確かに。それ、大事なことだった」
ボールペンを回しながら考え始めた一歩に、香織里はそういえばとある話題を出した。
「そういえば福原さん、アイコン変わってたね。黒蜜きなこ」
「ちょ、今ここでその話は」
一歩が視線を送った先には、桃色の胡蝶蘭を花瓶に生けていた園子がいた。営業所の入り口には、お客を迎えるための花がいつも置かれていた。その花の管理は生花担当の園子の仕事だ。
「なになに、パフェ? おばちゃんも話に混ぜてよ」
二人から距離はあるのに、パフェという単語を素早くキャッチした園子は、誰も使っていない椅子を引っ張ってきて香織里と一歩の間に入ってくる。
「なんでそんなに耳がいいんだよ園子さんは」
「噂話も口コミも全部仕事で使えるのよ。この地域のことを知らないというのは地域の葬儀屋としてはアウトじゃない? だから聞き耳はいつもピンと立ってるの。で、何、なんでパフェの話しているの?」
一歩は溜息をついて、机の上に広げていたノートを差し出した。
社長から宿題が出されていること、飲食店のアイデアを提出しようとしていることを聞いた園子は目を輝かせた。
「素敵じゃない。いいと思う。ここには料理がめちゃくちゃ上手な香織里ちゃんもいるし。あ、でもそうしたら香織里ちゃんはアシスタント卒業になっちゃう?」
「いえ。アシスタントとして料理を作ろうかなって。ここで打ち合わせもできるようにしたいんです。葬儀に直接参加しなくても、できることはあるなって思ったんで」
「そっかあ〜。でも、香織里ちゃんのお料理でお見送りができるって、いいと思う。一昨日のフレンチもすっごい美味しかったし」
「それだ。お見送り。お見送りコース、お見送りランチ、なんでもいい、お見送りと供養のためのメニューがほしい」
一歩は園子からノートを奪い取り、勢いよくメモを取り始めた。
「香織里さんはその人に合った料理を出すのが得意そうだから。お見送り、供養のための特別な料理を出したらいいと思う。できそう?」
「多分。打ち合わせが必要だけど、作ることはできると思う」
幸恵の場合はレシピが遺っていたから作ることができた。
次の世に旅立てない霊がいれば、故人本人から直接聞いて作ることも可能だ。お見送り、供養のためであれば、今までの経験から可能だと考えられた。
「あと、園子さんで思い出したんだけど、葬儀で使っているお花も置いたらどうかな。まだあいメモリーのショップで花は売っていなかったよね。園子さんの祭壇って洋風の花もたくさん使ってるし、こういう綺麗な花も使ってますよってアピールもできると思う。お店も華やかになりそうだし」
自分は主役にはなれないのよ。園子の言うことはもっともだ。だが、もう少し、出しゃばってみてもいいと香織里は思っていた。
園子のセンスを、香織里はもっと多くの人に知ってもらいたい。
「どう、園子さん。園子さんを巻き込む形になっちゃうけど」
「いいんじゃないかしら。花屋さんも花が売れないって言っていたし、連携取れるともっといいわ。葬式で使う花のイメージを変えてもらうにもいいかも。やれって言われたらやるわよ、私」
決まり、と一歩は『葬儀で使う花を置く』というメモにぐりっと大きく丸をした。
「そうなれば、葬儀をしない人にも来てほしいわね。そういう人には何を食べてもらう? あ、パフェ? パフェにする?」
「なんで僕を見るんだよ。香織里さんはどう思う?」
「いいと思う。それとコーヒーを飲んでもらって。花を見て、ゆっくりしてもらって、あいメモリーを覚えて帰ってもらう。パフェにしよう。あと軽食……サンドイッチとかカレーとか、カフェっぽいやつ」
香織里が提案すると、一歩はそれらを全部書き出して、頷いた。
「葬儀屋がするカフェ。じゃあ、これで社長に提案してみる。ところで、香織里さん、そうとなれば香織里さんにはまた研修をしてもらわないといけないんだ」
一歩はブラウザを立ち上げ、検索した画面を香織里に見せた。
「食品衛生責任者の資格が必要になってくる。うちには、この資格を持っている人がいないから、もし案が通れば、この講義を受けてもらう必要があるんだ」
園子がそれだけでいいのかと驚いている。香織里も調理師免許のほうが必要なのかと思っていたが、こちらは絶対ではないらしい。講習自体も一日で終わり、最後にある小テストをクリアすればいいそうだ。費用も一万円と思ったより安かった。
香織里が了解すると、一歩は起案のための書類の作成を始めた。
「店名は?」
園子が思い出したかのように聞いてきて、香織里はうーん、と考えた。
その時、香織里たちの上でおてんとちゃんがふわふわ漂っているのを見て、口から自然に言葉が出てきた。
「cafeおてんと――」
いつもおてんとさまは自分たちを見守っている。母の声が耳の奥で蘇った。
見守ってくれているのは、母のような気もするし、頭上で漂っているおてんとちゃんのような気もする。おてんとちゃんがいることに、悪い気はしなかった。
香織里の提案はすぐに採用され、その翌日には起案書が出来上がっていた。
社長室に入って、一歩がメインとなってコンセプトの説明をした。香織里の料理を一度口にしていること、幸恵のお見送りを見ていること、カフェの方針があいメモリーの方針と同じであることが重なって、高く評価された。
説明をしている間、平次の顔には笑みが浮かんでいた。
「面白いね、やろうよ」
平次のその言葉を皮切りに、すぐに物事は動き始めた。
心配していた食品衛生責任者の講義とテストはあっさりとクリアした。店舗は営業所よりやや大きめ、収容人数は従業品含めて二十人ほどとなっている。
葬儀の仕事が入れば葬儀の仕事をし、なければカフェの準備をする。忙しい日々を送った。
メニュー開発に付き合ってくれたのは、一歩や園子だけでなく、みのりもだった。
みのりにカフェをすることを知らせると、ぜひ試食をさせてほしいと言われたのだ。専門的な知識を持つみのりからアドバイスをもらえるのは心強かった。
看板メニューとなるパフェの試作は山程作った。
メニュー開発をしている間、一歩から何度か他のカフェの様子を見に行こうと誘われ、休日に二人で出かけることがあった。
黒蜜きなこのパフェも、もちろん食べに行った。和風スイーツを看板にしていて、その中でも黒蜜を売りにしていた店だった。
香織里の試作パフェを日頃から食べている一歩は、どこに行っても「香織里さんのこの前作ったパフェのほうが……」と感想を述べる。
「それ、参考にならないよ」
恥ずかしくてたまらないので、香織里はもうちょっと参考になるような感想を言ってほしいと頼むが、一歩は真顔で言うのだ。
「でも本当のことじゃないか。僕は香織里さんの作るものが一番好きなんだ」
「それ、私が作るものならなんでもいいって言ってるのと同じだからね」
「なんでそうなるんだよ、そうとは言ってないだろ。なんだよ、僕よりみのりさんの方がやっぱり参考になるって?」
「まあ、実際、そうかも。一歩くんは甘いのならなんでもいいって感じがするから」
「は? 僕だってな、こだわりはあるよ? こだわりがある上で、香織里さんのは美味しいって言ってるんだよ」
口をへの字に曲げながらも、一歩は素直に美味しいと言ってくれるのが、香織里は嬉しかった。一方、一歩が好きなのは料理の方だったのかとがっかりしている自分もいた。
園子からは食用花の存在を教えてもらった。葬儀ではバラを使うこともあり、食用のバラを添えて見栄えをよくする。フルーツは近辺でとれるものを選んだ。いちご、桃、ぶどうなどである。これは季節によって変化する。
クリームの甘さは、フルーツの甘さを生かすように控えめにした。
看板のパフェができ、小さな店舗ができ、香織里の手伝いをしてくれるパートも決まっていく。このスピードの速さは、あいメモリーが長年培ってきた各業者との関わりあってのものだった。
そうしているうちに春が近づいていた。だんだんと暖かくなっていき、世の中は新生活を迎えるムードになっている。
愛翔は第一志望の大学に受かった。春からは県外で一人暮らしだ。
「彼氏とうまくやれよな。またこっちに帰ってきたら、香織里の店行くわ」
「だからさあ、上司だってば。一人暮らし頑張って」
愛翔は、手を軽く上げて、父の車に乗り込んだ。愛翔には充実した四年間を過ごしてもらいたい。
愛翔を見送ったあと、香織里は一歩から連絡が来ていることに気付いた。
『開店前に一度、準備お疲れ様会がしたい。暇な時間ある? てか今日の夜、暇?』
夜、という言葉に、香織里はどきっとした。
『一歩くんって今日、出勤日だけどいいの? 園子さんは? みのりさんは?』
『今日は定時で上がる予定だから。来てほしいなら連絡取るけど。都合が合いそうなら、みんな呼ぶよ』
『じゃあ、お願い。たくさん協力してもらったから』
こういう時こそ、愛翔に茶化してほしかった。愛翔がいれば、違うよ、と言いながらも、一歩と二人で夜に会う約束ができたはずだ。
情けないな、と思う。スマホをベッドに投げて、自分も布団の上に倒れ込んだ。