10.誘拐犯
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「に、人間?」
『仮の姿だけどね。君が話を聞きそうにないから』
バクォン…いや、誘拐犯は小さく溜め息をついて、ベッドに座っている私を見据えた。
動物だったらかわいくてまったく誘拐犯って感じではなかったけど、人間になると誘拐犯って感じだよね。イケメンでも。
『大人しく聞いてくれる?』
「…今更何しに来たのよ。誘拐犯め」
いくらイケメンでも誘拐犯には興味はない。
『今更…か。そうだね。それは悪かったよ。だから話を聞いてくれる?』
「聞く前に質問。あなたが私を連れてきた誘拐犯なんだよね?」
私が聞くと、誘拐犯はにっこりと笑って頷いた。
『うん。でも誘拐ではないよ。君が望んだんだもの』
なんて理不尽な!私の返事も聞かずに勝手に連れてきたくせに!
『さて、僕の番だ。どうだい?この世界は楽しいかい?』
満面の笑みで聞いてくる誘拐犯。
私は相手を観察しながら答えた。
「楽しいけど…何で私を連れてきたの?」
『言っただろう?君が、ユウキが望んだからさ』
誘拐犯は部屋を歩き回りながら言った。
そして机に置いてある本が気になったのか、手に取りパラパラとページを捲る。
『まぁ楽しんでいるようでよかったよ。何の問題もなく過ごせているみたいだし』
問題なく?禁じられた森に放り出されたり、縄で縛られたり、疑われたり、真実薬飲まされたり…それでも問題ないと?
「問題ありまくりだよ!突然こんなところに放り出されて、なんとかなったのはいいけど、さっきだって真実薬を飲まされたんだよ!?……まったく。で、誘拐犯はそれを確認するためだけに来たの?」
『落ち着いて。突然の環境の変化にストレスが溜まってしまっているんだね。配慮が足りなかったよ。あと、さっきから言ってるけど僕はバクォン。いい加減誘拐犯はやめてくれないかな?』
確かにストレスが溜まっているようだ。
少し落ち着かなきゃ…。
いつまでも誘拐犯と呼ぶ私にムッとした表情を向けてきた。イケメンだからその顔もさまになるな。
「ごめん、ついさ」
『よろしい。で、まだ言うことがあるんだ。重要なことだからよく聞いて』
重要なこと?重要ならそれこそ今更だよね。言うの遅いんじゃ…。
そう思いながら私は頷いた。
『この世界で死んだら元の世界に強制的に帰すことになるから気をつけて。それと、この世界の物語が終わった時も強制的に元の世界に帰す。いつまでもこの世界にいられる訳ではない。そこのところ理解しておいて』
私は眉をひそめた。じゃあヴォルデモートを倒したら、私は元の世界に…?
どこかではなんとなくわかっていたけれど、改めて言われると胸に重いものがズシリと落ちる感覚がした。
「それは絶対?」
『あぁ、絶対だよ。夢から覚めるように、この世界から戻るんだ』
「もう二度と来れないの?」
『そんな都合のいいことはないんじゃないかな』
「じゃあ、ここで出来た友達は…」
『一度元の世界に戻ってしまえば、もう会えないだろうね』
そうだよね。元の世界に戻れば、もうみんなには本の中でしか…本を読むことでしか会えないんだ。
私は唇を強く噛みしめ、服をギュッと握った。
『そう落ち込まないで。今を精一杯楽しんで』
バクォンは悲しそうな顔をして床に膝をつき、私の手をぎゅっと握る。そして笑顔を向けてきた。
バクォンの手はとても冷たかった。
『僕はそのために君をここに連れてきたんだ。元の世界のことは忘れて、今を楽しんで。ユウキにはしたいことがあるんだろう?そのことのために頑張って』
そうだよね。
どうせだったら精一杯楽しまないと…うん。
でも、やっぱりな…。
『よし、少しでも楽しめるようにっていうのと、今まで配慮がなかったお詫びとして僕からプレゼントだ。受け取って』
「え?」
私が首を傾げると、バクォンは突然私の頭をガシッと押さえ、固定した。
『ちょっと痛いよ。我慢してね』
そう言って笑顔でウインクすると、ゴンッという激しい音と共に額に激痛が走った。
なんとバクォンは私に頭突きをしてきたのだ。
額と額が物凄い勢いで衝突した。
痛いに決まってる。
「いったぁ…」
『うん。僕も痛かった』
バクォンの手を逃れ、私は自分の額を押さえた。
凄まじく痛い。
バクォンも涙目になって額を押さえている。
「いきなり何すんの!」
『君に能力をあげたのさ』
「は?能力?」
キッと睨むと、バクォンは人差し指を立ててニッと笑った。
かっこいいのに額が赤くてダサい。
『その本にあったものをね。動物と話せる能力』
「へ?動物と?」
私はきょとんとしてバクォンを見つめた。
バクォンが“その本”を指差した。
さっきパラパラと見ていた本だ。
確かにあの本には動物と話せる少年が出てくるけど…。
『あ、そろそろ行かないと。またそのうち会いにくるよ。この姿でね。じゃあね』
「ちょっ、待って!」
慌てて呼び止めようとしたが、バクォンは手を振りながらフッと消えてしまった。
「まだ何者か聞いてないのに…」
私は痛む額を撫でながらベッドから降り、さっき言っていた本を捲った。
【あるところに動物と話せる少年がいた。少年は森で動物たちと話すのが好きだった。しかし、今はその能力がない。】
「あれ?どうして?少年が動物と話しながら旅をする話しじゃ…」
その先、少年が動物と話せることはなく、とてもつまらない、意味のわからない物語になっていた。
もしかしてバクォンはこの本の少年から能力を奪ってしまったの?
「ごめんよ、少年…」
私は苦笑いを浮かべ、本の少年に謝りながら本を閉じた。