このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

真夏

蝉のけたたましい鳴き声で目が覚める。

あ、絶対に寝過ごしてる……

人間とはすごいもので、朝の空気や雰囲気だけで、時間がわかってしまうものだ。直感で、寝過ごしたことを悟った早苗は、やばっ!っとまぁまぁ大きな独り言で呟くと、一人暮らしを始めた三年前から愛用しているローベッドから、文字通り飛び起きた。

レースカーテンの隙間からもれる光が、ベッドに投げ出された枕を焦がしている。あー、もう一度あのお日様の香りのする枕に顔を埋めたい。そう思いながら、歯磨きと着替えを同時進行で器用にこなしていく。ベッドの横に置かれたサイドテーブルの上にある目覚まし時計は、午前7時をさしている。遅くてもあと五分で家を出なければ、いつもの電車に乗れず、仕事に遅刻してしまう。

新宿駅から徒歩十五分のこのアパートで、一人暮らしを始めたのは三年前。高校を卒業後、東京の大学に通い、四年間の就学の後に、夢だった教師になった早苗は、初任の学校を三年経験し、今年の春から、新しい学校に赴任した。幸い、新宿区内の学校であったため、アパートから引っ越す必要はなかった。

1LDKで月八万円のアパート暮らしにも慣れたはずだが、朝はいつになっても弱いままだ。

1/1ページ
    スキ