リリカル・スピカ
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昼食を食べ終え、飲み物を買いに購買に向かっていたら「おーい、影山」背後から名前を呼ばれた。振り返れば縁下さんがこちらに歩み寄って来ていて、頭を下げて挨拶をする。俺の傍まで来た縁下さんは おつかれ、と軽く挨拶を返して、それから探るようにじっと俺の顔を見た。わざわざ呼び止められたぐらいだから きっと何か俺に用があったのだろうとは想像できるけれど、特に何かの話題が振られはしない。どうかしましたか、と率直に問えば、縁下さんは んー…と 何かを思案するように視線を巡らせる。「言うなって言われたけど、お前には言っとくな」と 口元に手を当てて内緒話でもするかのように声を潜めて言うから、話が読めずに首を傾げながらも その声に耳を傾けた。
「さっき体育の授業でさ、佐倉が倒れた」
「は…?」
「自力で歩けてなかったから、まだ保健室に居ると思うけど」
「…っ、失礼します!」
その話を聞いた瞬間、ほとんど無意識のうちに駆け出そうとした俺の肩を掴んだのは縁下さんに他ならなくて、僅かな苛立ちを感じる。そんな事を聞かされてしまったら もう気が気でなくて、早く様子を見に行きたいというのに。そんな俺の気が急いているのも見透かしているように縁下さんは笑って、まぁ落ち着けって、と そう言った。
「たぶん水分も取ってないはずだから、コレでも持って行ってやってよ」
そう言って差し出されたのは縁下さんが手に持っていたスポーツドリンクのペットボトルで、中身が少し減っているのが分かる。飲みかけのそれを七瀬さんに渡せるわけがないし、絶対に渡したくない。たとえ先輩命令だと言われても、こればかりは従えない。
「…買ってから行くので大丈夫です」
「そっか、じゃあ頼むな」
半ば睨むような視線を向けたと自覚はあったけど、縁下さんは全く気にした素振りもなく笑った。その様子はなんだかすごく楽しそうにも見えたけれど、今はそんな事どうでもいい。失礼しますと改めて頭を下げてから、自動販売機へと向かう。そしてそれから、保健室へと急いだ。
◇
影山の登場に動転していた私が、何か言わなくてはと咄嗟に口から出たのは「座れば?」なんて そんな言葉だった。影山は少し驚いたように瞬きをして、それから「これ、どうぞ」と何かを差し出す。こちらに向けられた物に目を向ければ、それはスポーツドリンクのペットボトルだった。これを、私にくれるというのだろうか。
「え、でも…」
「何も飲んでないですよね?水分ぐらい取ってください」
「……ありがとう。今度、何かお礼するね」
「大袈裟すぎます」
失礼します、と 律儀に一言断りを入れた影山が、ベッドの側に置かれた椅子に座った。こういうところ、影山はちゃんとしてるんだよな。そんな事を改めて思って感心する。「大丈夫なんですか?」「へ?」不意に問われた言葉に 間抜けな声を返せば、体調、とただ短く一言だけで 質問の意味を示してくれた。
「あ、うん、短時間だけど熟睡してたみたいで楽になったよ」
「自力で歩けなかったって聞いたんですけど」
「はは…ね、びっくりした(どこまで喋った縁下…!)」
「ここまでどうやって来たんですか」
「お恥ずかしい話ですが、縁下さんに背負ってもらって」
「…………」
「え、なに、影山どうしたの?」
影山が、すごい顔をしている。彼は感情が顔に出やすいタイプだと思うけれど、だからと言ってこの表情から感情を読み取るのは難易度が高い。なんでもないです、と視線を逸らしながら言う声も普段よりずっと低いような気がして “なんでもない”ようには とても見えない。
「ねえ、なんか怒ってる?」
上体を乗り出すようにして、影山の顔を覗き込む。逃げたくなるほど真っ直ぐな目と視線が絡んでどきりとしたけど、すぐに目を逸らしたのは影山の方だった。あ、拗ねてる。どこか不満そうなその表情は、怒っているというよりも いじけていると言った方が近いのだと察する。妙に落ち着いたところもある影山が急に年下の男の子に見えて、なんだか可愛いな、なんて そんな事を思った。口にしたら怒られそうだから言わないけど。「……ったのに」「ん?」ボソリと小さく呟くように言われた言葉はよく聞き取れなくて、聞き返すように首を傾げる。そうしてこちらに向けられたのは、また刺さるほどに真っ直ぐな視線で 逃げたくなるのに逃げられない。目をそらす事もできずに固まる私の心臓は、きゅっと小さな痛みを宿した。どうしたんだろ、最近この痛みが多い。
そんな私の心中など知らず、影山は相変わらず私の目を捉えたまま口を開く。
「俺が七瀬さんと同級だったら良かったのに、って 言ったんです」
「…?どうして?私は影山が後輩で良かったよ?」
「どういう意味ですか、それ」
「そのままだけど」
影山は、単純だけど素直じゃなくて、けれど私に対しては優しく比較的素直であると思っている。それはきっと私と影山が先輩後輩という、体育会系においての上下関係にあたるからだと自覚している。私たちが同級生だったとして、果たして影山は私に対して今のように素直な面を見せて接してくれるのだろうかと考えたら、答えはきっと否だ。それなら、彼のこの優しく可愛い一面を知らずに過ごすなんて絶対に嫌だと思う。
「影山は少し捻くれてるとこもあるけど、私には素直でしょ?」
「……」
「私、素直な影山好きだし、同級生だと こう素直に接してくれない気がして」
「……ほんと、勘弁してください」
口元を隠すように手で覆って、影山が顔を背ける。その行動の意図が読めずに私は首を傾げた。「なに、どうしたの?」先ほどと同じように上体を乗り出してその顔を覗き込めば、目元がわずかに赤く染まっているように見える。…うん?何か照れてる?一体何に―――そこまで考えて、サァッと血の気が引くような感覚がした。私は、無意識のうちにとんでもないことを口走ったのではないだろうか。大した考えもなければ深い意味のない言葉だったとして、好き、だ なんて。
「え!あ、あの、変な意味じゃなくてね!? その、普通に後輩として…!」
あたふたと 両手を振って弁明をする私の左手首を 影山が掴む。たったそれだけのことで、全身の自由を奪われてしまった。体は凍り付いたように動かなくて、1メートル程しか離れない位置に見える影山の顔から視線を逸らせない。うまく息ができているのかも、もう分からない。ただ、触れられている手首だけが燃えるように熱くて、暴れるように脈打つ心臓が壊れてしまうのではないかと心配になる。
「後輩として、とかじゃなくていいです」
酸素が、全然足りない。真っ直ぐすぎる視線に酔わされて、くらりと視界が揺れた気がした。
「さっき体育の授業でさ、佐倉が倒れた」
「は…?」
「自力で歩けてなかったから、まだ保健室に居ると思うけど」
「…っ、失礼します!」
その話を聞いた瞬間、ほとんど無意識のうちに駆け出そうとした俺の肩を掴んだのは縁下さんに他ならなくて、僅かな苛立ちを感じる。そんな事を聞かされてしまったら もう気が気でなくて、早く様子を見に行きたいというのに。そんな俺の気が急いているのも見透かしているように縁下さんは笑って、まぁ落ち着けって、と そう言った。
「たぶん水分も取ってないはずだから、コレでも持って行ってやってよ」
そう言って差し出されたのは縁下さんが手に持っていたスポーツドリンクのペットボトルで、中身が少し減っているのが分かる。飲みかけのそれを七瀬さんに渡せるわけがないし、絶対に渡したくない。たとえ先輩命令だと言われても、こればかりは従えない。
「…買ってから行くので大丈夫です」
「そっか、じゃあ頼むな」
半ば睨むような視線を向けたと自覚はあったけど、縁下さんは全く気にした素振りもなく笑った。その様子はなんだかすごく楽しそうにも見えたけれど、今はそんな事どうでもいい。失礼しますと改めて頭を下げてから、自動販売機へと向かう。そしてそれから、保健室へと急いだ。
◇
影山の登場に動転していた私が、何か言わなくてはと咄嗟に口から出たのは「座れば?」なんて そんな言葉だった。影山は少し驚いたように瞬きをして、それから「これ、どうぞ」と何かを差し出す。こちらに向けられた物に目を向ければ、それはスポーツドリンクのペットボトルだった。これを、私にくれるというのだろうか。
「え、でも…」
「何も飲んでないですよね?水分ぐらい取ってください」
「……ありがとう。今度、何かお礼するね」
「大袈裟すぎます」
失礼します、と 律儀に一言断りを入れた影山が、ベッドの側に置かれた椅子に座った。こういうところ、影山はちゃんとしてるんだよな。そんな事を改めて思って感心する。「大丈夫なんですか?」「へ?」不意に問われた言葉に 間抜けな声を返せば、体調、とただ短く一言だけで 質問の意味を示してくれた。
「あ、うん、短時間だけど熟睡してたみたいで楽になったよ」
「自力で歩けなかったって聞いたんですけど」
「はは…ね、びっくりした(どこまで喋った縁下…!)」
「ここまでどうやって来たんですか」
「お恥ずかしい話ですが、縁下さんに背負ってもらって」
「…………」
「え、なに、影山どうしたの?」
影山が、すごい顔をしている。彼は感情が顔に出やすいタイプだと思うけれど、だからと言ってこの表情から感情を読み取るのは難易度が高い。なんでもないです、と視線を逸らしながら言う声も普段よりずっと低いような気がして “なんでもない”ようには とても見えない。
「ねえ、なんか怒ってる?」
上体を乗り出すようにして、影山の顔を覗き込む。逃げたくなるほど真っ直ぐな目と視線が絡んでどきりとしたけど、すぐに目を逸らしたのは影山の方だった。あ、拗ねてる。どこか不満そうなその表情は、怒っているというよりも いじけていると言った方が近いのだと察する。妙に落ち着いたところもある影山が急に年下の男の子に見えて、なんだか可愛いな、なんて そんな事を思った。口にしたら怒られそうだから言わないけど。「……ったのに」「ん?」ボソリと小さく呟くように言われた言葉はよく聞き取れなくて、聞き返すように首を傾げる。そうしてこちらに向けられたのは、また刺さるほどに真っ直ぐな視線で 逃げたくなるのに逃げられない。目をそらす事もできずに固まる私の心臓は、きゅっと小さな痛みを宿した。どうしたんだろ、最近この痛みが多い。
そんな私の心中など知らず、影山は相変わらず私の目を捉えたまま口を開く。
「俺が七瀬さんと同級だったら良かったのに、って 言ったんです」
「…?どうして?私は影山が後輩で良かったよ?」
「どういう意味ですか、それ」
「そのままだけど」
影山は、単純だけど素直じゃなくて、けれど私に対しては優しく比較的素直であると思っている。それはきっと私と影山が先輩後輩という、体育会系においての上下関係にあたるからだと自覚している。私たちが同級生だったとして、果たして影山は私に対して今のように素直な面を見せて接してくれるのだろうかと考えたら、答えはきっと否だ。それなら、彼のこの優しく可愛い一面を知らずに過ごすなんて絶対に嫌だと思う。
「影山は少し捻くれてるとこもあるけど、私には素直でしょ?」
「……」
「私、素直な影山好きだし、同級生だと こう素直に接してくれない気がして」
「……ほんと、勘弁してください」
口元を隠すように手で覆って、影山が顔を背ける。その行動の意図が読めずに私は首を傾げた。「なに、どうしたの?」先ほどと同じように上体を乗り出してその顔を覗き込めば、目元がわずかに赤く染まっているように見える。…うん?何か照れてる?一体何に―――そこまで考えて、サァッと血の気が引くような感覚がした。私は、無意識のうちにとんでもないことを口走ったのではないだろうか。大した考えもなければ深い意味のない言葉だったとして、好き、だ なんて。
「え!あ、あの、変な意味じゃなくてね!? その、普通に後輩として…!」
あたふたと 両手を振って弁明をする私の左手首を 影山が掴む。たったそれだけのことで、全身の自由を奪われてしまった。体は凍り付いたように動かなくて、1メートル程しか離れない位置に見える影山の顔から視線を逸らせない。うまく息ができているのかも、もう分からない。ただ、触れられている手首だけが燃えるように熱くて、暴れるように脈打つ心臓が壊れてしまうのではないかと心配になる。
「後輩として、とかじゃなくていいです」
酸素が、全然足りない。真っ直ぐすぎる視線に酔わされて、くらりと視界が揺れた気がした。