宵月に咲くアルカ
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これから対戦する2組以外は、地下のモニタールームへと移動する。考えてみるんだぞ、というオールマイトの声とともにパッと明かりがついたモニターに映し出されたのは、ヒーロー役の出久と敵役の勝己。
「…始まるね」
誰に言うでもない私の呟きに、隣にいた切島が「だな」と短く返してくれたことが なぜだかとても安心した。
画面の向こうでは勝己が迷いなく出久へ突っ込んでいく。爆発音が響き、思わず肩が震えた。勝己は、出久を傷付けることを厭わない。
「容赦ねぇな……」
瀬呂の苦笑混じりの声に、私はただモニターを見つめる。
幼い頃から何度も見てきた勝己の戦い方だ。誰より真っ直ぐで、誰より激しい。けれど。
(出久も、逃げないんだよね)
無個性だと診断され、それでもヒーローを諦めなかった幼馴染。画面越しでも分かるほど必死に食らいついていく姿に、自然と拳へ力が入る。
「頑張れ……」
溢れた言葉はどちらに対してのものなのか、自分でも分からなかった。
戦いは終始激しいものだった。といっても勝己が一方的に攻め立てているようで。それでも出久は倒れない…いや“当たらない”のだ。出久は、勝己の癖を知り尽くしていた。
爆発音が施設内へ何度も響き渡り、その度にモニターの前は息を呑む空気になる。
心臓が、痛い。私は勝己と出久が歪み合う姿、ぶつかり合う姿を見たいわけじゃないのだ。
永遠のようにも感じられるような時間が過ぎた後、お茶子ちゃんが核に抱きついた瞬間。
「ヒーローチーム WIIIIIN!!!」
オールマイトの宣言に、安堵と驚きが入り混じった声が上がった。けれど私は、モニターに映った勝己の表情が焼き付いて離れない。
あんな勝己の顔を、私は初めて見た気がした。
◇◇◇
続く2試合目は、ヒーロー役の轟が圧倒的な強さを見せて文字通り“完封”。そして、次はいよいよ私たちの出番だ。
Hチーム…常闇、梅雨ちゃんペアがヒーロー役で、私たちJチームは敵役。守ることの方が得意な私としては、願ったり叶ったりの配役だった。
「配置どうする?」
「頭良さそうなペアだもんな」
準備のため先に建物に入った私たち敵役は、今回守るべき“核”の前で作戦を練る。Hチームの2人は、きっと真正面から突っ込んでくるタイプじゃない。意表を突かれることが一番怖いだろう。
「…私、ここにいてもいい?」
「ん?」
「“核”を守るってことか?」
核に手を添えて見上げながらの私の申し出に、切島と瀬呂がこちらに目を向ける。私も彼らの方に視線を向けて、ニィっと得意気に笑ってみせた。
「絶対触れさせないから、安心して」
「…!よし、んじゃ任せたぜ!」
「じゃ、俺らは進行の妨害ってとこか」
瀬呂が私の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、切島はやる気充分といった様子で腕をグルグルと回しながら、訓練が開始すれば攻め入ってくるであろうヒーロー役を阻むためフロアを出て行く。
2人の背中を見送ってから、私は核のすぐ後ろにある窓台に腰掛けた。右手を伸ばせば容易に核に触れられる距離だ。
(…油断禁物、だよね)
核に触れたまま、そっと目を閉じる。ひんやりとした感覚が手のひらから広がっていく。こんなもんか、と思ったところで訓練開始のアナウンスが響き渡った。
支給された小型無線で瀬呂や切島と状況の確認をしながら守りに徹する。けれど、いかんせんクレバーな相手なのだ。
『悪ぃ佐倉!抜かれた!!』
『そっち行くぞ!』
「OK、こっちは任せて」
開始からどれくらいの時間が経っただろう。無線から少し焦ったような切島と瀬呂の声が聞こえた。
ヒーロー役の2人がここに迫って来ている。姿は見えない、けれど確かに気配は感じていた。きっともう近くにいるのだろう。
左手をゆっくり前へ差し出す。
「──雪華結守」
淡い青白い光が足元から広がる。六角形の光が幾重にも重なり、雪の結晶を思わせる結界が音もなく空間を覆った。私と核を取り囲むように。
その周囲を、雪とも夜桜ともつかない光の粒が静かに舞う。
どこかに潜んでいたのだろう、死角から飛び込んできたダークシャドウが結界へと触れ──弾かれた。
「!」
「防いだの……?」
常闇がわずかに目を見開く。梅雨ちゃんも静かに息を呑んだのが分かった。私の個性を初めて見せたのだ。初見としてはよくある反応ではあるけれど。
「みーつけたっ」
わずかに生じたその隙に、2人の居場所を確認できた。場所さえ分かれば。
両手をそれぞれ梅雨ちゃんと常闇の方にかざし、ダークシャドウには視線を向けて。
「疲れるから本当はあんまり使いたくないけど…特別だよ」
サービスだと言わんばかりにウインクをしてから、雪華を展開する。3人(2人と1匹?)を閉じ込めるように。
ヒラリと舞う光に彼らが気付いた時には、もう遅いのだ。
「スッゲェ!!」
「頼りになりすぎるだろ…」
常闇と梅雨ちゃんを追って来たのだろう。このフロアに戻って来た切島と瀬呂が、驚いたような声を出した。
開始前に核も結界で覆っておいたから、私の意識がある限り、核そのものに触れられることはなかったと思うけれど。
そう伝えれば、2人とも「抜かりねぇ」と声を揃えた。
「やるからには徹底的にね!」
「そういうとこ ちゃんと爆豪の幼馴染だなお前…」
「ま、俺らは助かったけどよ」
そこでタイムアップのアナウンスが響き渡った。
「…始まるね」
誰に言うでもない私の呟きに、隣にいた切島が「だな」と短く返してくれたことが なぜだかとても安心した。
画面の向こうでは勝己が迷いなく出久へ突っ込んでいく。爆発音が響き、思わず肩が震えた。勝己は、出久を傷付けることを厭わない。
「容赦ねぇな……」
瀬呂の苦笑混じりの声に、私はただモニターを見つめる。
幼い頃から何度も見てきた勝己の戦い方だ。誰より真っ直ぐで、誰より激しい。けれど。
(出久も、逃げないんだよね)
無個性だと診断され、それでもヒーローを諦めなかった幼馴染。画面越しでも分かるほど必死に食らいついていく姿に、自然と拳へ力が入る。
「頑張れ……」
溢れた言葉はどちらに対してのものなのか、自分でも分からなかった。
戦いは終始激しいものだった。といっても勝己が一方的に攻め立てているようで。それでも出久は倒れない…いや“当たらない”のだ。出久は、勝己の癖を知り尽くしていた。
爆発音が施設内へ何度も響き渡り、その度にモニターの前は息を呑む空気になる。
心臓が、痛い。私は勝己と出久が歪み合う姿、ぶつかり合う姿を見たいわけじゃないのだ。
永遠のようにも感じられるような時間が過ぎた後、お茶子ちゃんが核に抱きついた瞬間。
「ヒーローチーム WIIIIIN!!!」
オールマイトの宣言に、安堵と驚きが入り混じった声が上がった。けれど私は、モニターに映った勝己の表情が焼き付いて離れない。
あんな勝己の顔を、私は初めて見た気がした。
続く2試合目は、ヒーロー役の轟が圧倒的な強さを見せて文字通り“完封”。そして、次はいよいよ私たちの出番だ。
Hチーム…常闇、梅雨ちゃんペアがヒーロー役で、私たちJチームは敵役。守ることの方が得意な私としては、願ったり叶ったりの配役だった。
「配置どうする?」
「頭良さそうなペアだもんな」
準備のため先に建物に入った私たち敵役は、今回守るべき“核”の前で作戦を練る。Hチームの2人は、きっと真正面から突っ込んでくるタイプじゃない。意表を突かれることが一番怖いだろう。
「…私、ここにいてもいい?」
「ん?」
「“核”を守るってことか?」
核に手を添えて見上げながらの私の申し出に、切島と瀬呂がこちらに目を向ける。私も彼らの方に視線を向けて、ニィっと得意気に笑ってみせた。
「絶対触れさせないから、安心して」
「…!よし、んじゃ任せたぜ!」
「じゃ、俺らは進行の妨害ってとこか」
瀬呂が私の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、切島はやる気充分といった様子で腕をグルグルと回しながら、訓練が開始すれば攻め入ってくるであろうヒーロー役を阻むためフロアを出て行く。
2人の背中を見送ってから、私は核のすぐ後ろにある窓台に腰掛けた。右手を伸ばせば容易に核に触れられる距離だ。
(…油断禁物、だよね)
核に触れたまま、そっと目を閉じる。ひんやりとした感覚が手のひらから広がっていく。こんなもんか、と思ったところで訓練開始のアナウンスが響き渡った。
支給された小型無線で瀬呂や切島と状況の確認をしながら守りに徹する。けれど、いかんせんクレバーな相手なのだ。
『悪ぃ佐倉!抜かれた!!』
『そっち行くぞ!』
「OK、こっちは任せて」
開始からどれくらいの時間が経っただろう。無線から少し焦ったような切島と瀬呂の声が聞こえた。
ヒーロー役の2人がここに迫って来ている。姿は見えない、けれど確かに気配は感じていた。きっともう近くにいるのだろう。
左手をゆっくり前へ差し出す。
「──雪華結守」
淡い青白い光が足元から広がる。六角形の光が幾重にも重なり、雪の結晶を思わせる結界が音もなく空間を覆った。私と核を取り囲むように。
その周囲を、雪とも夜桜ともつかない光の粒が静かに舞う。
どこかに潜んでいたのだろう、死角から飛び込んできたダークシャドウが結界へと触れ──弾かれた。
「!」
「防いだの……?」
常闇がわずかに目を見開く。梅雨ちゃんも静かに息を呑んだのが分かった。私の個性を初めて見せたのだ。初見としてはよくある反応ではあるけれど。
「みーつけたっ」
わずかに生じたその隙に、2人の居場所を確認できた。場所さえ分かれば。
両手をそれぞれ梅雨ちゃんと常闇の方にかざし、ダークシャドウには視線を向けて。
「疲れるから本当はあんまり使いたくないけど…特別だよ」
サービスだと言わんばかりにウインクをしてから、雪華を展開する。3人(2人と1匹?)を閉じ込めるように。
ヒラリと舞う光に彼らが気付いた時には、もう遅いのだ。
「スッゲェ!!」
「頼りになりすぎるだろ…」
常闇と梅雨ちゃんを追って来たのだろう。このフロアに戻って来た切島と瀬呂が、驚いたような声を出した。
開始前に核も結界で覆っておいたから、私の意識がある限り、核そのものに触れられることはなかったと思うけれど。
そう伝えれば、2人とも「抜かりねぇ」と声を揃えた。
「やるからには徹底的にね!」
「そういうとこ ちゃんと爆豪の幼馴染だなお前…」
「ま、俺らは助かったけどよ」
そこでタイムアップのアナウンスが響き渡った。
