宵月に咲くアルカ
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高校生2日目。昨日と同じ道を歩き、同じ駅に着き、同じ時間の電車を待つ。違う点があるとすれば、駅のホームでもう1人の幼馴染と一緒になったこと。
「あ、出久だ。おはよ」
「七瀬、かっちゃん…おはよう」
「……チッ」
おはようの返しが舌打ちというのはどうなんだ。ジトリと勝己を見上げるけれど、そっぽをむいていて目は合わない。勝己の一方的なものだから、この2人は犬猿の仲というには少し違う気がするけれど、なんとかならないものかと息を吐いた。
程なくしてやってきた車両に、昨日同様に押し込まれる。ガタンと発車の瞬間の揺れに身体が傾きかけ、その瞬間 勝己に肩を抱き寄せられた。そしてそのまま、昨日と同じようにドア側へと避難させられる。
「ごめん、ありがと勝己」
「おー」
(かっちゃん、七瀬にはこういうこと普通にできるのになぁ…)
「…?出久どうかした?」
「え!?あ、いや、今日も混んでるなと思って」
「この時間は仕方ないよね」
「そ、そうだよね…」
何か言いたそうにこちらを見ていた出久に首を傾げれば、少し慌てたような声が返ってきたけれど、それ以上は何も言わなかった。
◇◇◇
登校してからは、一言で言うなら“普通”だった。午前中は一般的な高校生と同じように各教科の授業を受け、食堂で昼食をとる。
そして午後からは、ヒーロー科がヒーロー科たる所以である、お待ちかねのヒーロー基礎学の時間だ。
この授業の担当教師であるオールマイトの登場に、クラスメイトたちが歓声をあげる。ドアから教室に入ってきただけなのに、圧倒的な存在感、カリスマ性。これがNo.1ヒーローかと心臓が震えるような感覚がした。
「早速だが今日はこれ!! 戦闘訓練!!」
オールマイトが高らかに宣言した後、着替えたらグラウンドβに集まるようにという指示とともに各々に戦闘服 が支給される。
ワイワイと盛り上がるクラスメイトたちと、コスチュームを大切に抱えながら更衣室へと移動し、いざ箱を開けてみると綺麗に畳まれたヒーロースーツが入っていた。
黒とダークネイビーを基調としたデザイン。首元まで覆うハイネックに、腰丈のショートジャケット。左腰に刀を携えるためのホルダーが備え付けられた機動性重視のショートパンツと、素足を晒さないためのコンプレッションタイツ、そして動きやすそうなミドルブーツ。前腕を覆うガントレットには細かな六角形の紋様が刻まれている。
全体的に装飾は少なく、華やかというより実戦向きだ。
(……すごく好きかも)
見た目の良し悪しではなく、動きやすさ、個性の使いやすさを追求したようなデザインではあるけれど、決して地味すぎない。
この衣装なら、きっと守ることができる。
「え、佐倉、刀使うの!?」
「あんまり使う機会はないと思うんだけど、個性との相性良さそうで」
「なんか剣士って感じだ!」
「七瀬ちゃんカッコいい!」
コスチュームに着替え、装備として同梱されていた刀を腰に収めていると、三奈ちゃんに声をかけられた。
中学時代に勝己との訓練で、私の個性で攻撃するなら相性の良い武器は刀だろうという結論が出てからは、独学で剣術を身につけてきた。敵とはいえ誰かを傷付ける行為になりかねない“攻撃”は使わないに越したことはないけれど、ヒーローとしてやっていくならそうも言ってられない。“攻撃は最大の防御”という言葉もあるぐらいなのだから。
お茶子ちゃんと透ちゃんからの歓声が上がり、少し恥ずかしいような、嬉しいようなそんな感覚がした。
着替えてグラウンドβに移動すれば、そこにはそれぞれのコスチューを身に纏ったクラスメイトたち。みんながそれぞれ本物のヒーローのように見えて気分が高揚する。
「いいじゃないか皆、カッコイイぜ!!」
グラウンドに揃った生徒たちを見て、オールマイトが声を上げる。全くもって同意見だ。
そしてこれから行われる訓練の説明が始まる。室内での対人戦闘訓練ということらしい。うちのクラスは21人なので1チームだけ3人になるが、基本的には2対2で、チーム分け及び対戦相手はくじによる完全無作為だと言うのも面白い。
「お、佐倉もか」
「てことは3人か」
「よろしくね」
くじの結果、私は瀬呂と切島と同じJチームで唯一の3人組となった。相手チームより1人多いというのが、有利なのかどうかも定かではないけれど。
「佐倉の個性って俺らまだ知らねーよな」
「昨日は使ってなかったもんなぁ?」
「そこ蒸し返さないで…」
単純な疑問という感じで口にした切島の言葉に、瀬呂がニヤニヤと続く。昨日、私が呼び出しに凹んでいたのを知っていてわざと言っているのだ。
ゲンナリと答えた私に、瀬呂は悪い悪いと笑う。全く悪いと思っていないだろう。けれど瀬呂範太というクラスメイトは、とても気さくで接しやすい人なのだと知った。
「攻撃よりも、守りの方が得意かな」
そう言った私に2人が「なるほどなー」と相槌を打ったところで、オールマイトが最初の対戦相手のくじを引く。
発表されたのは、ヒーロー役Aチーム、敵役Dチーム。
「……っ」
思わず息を呑む。それはつまり――出久と勝己が戦うということ。ぎゅうっと 心臓が締め付けられるような感覚がした。
「あ、出久だ。おはよ」
「七瀬、かっちゃん…おはよう」
「……チッ」
おはようの返しが舌打ちというのはどうなんだ。ジトリと勝己を見上げるけれど、そっぽをむいていて目は合わない。勝己の一方的なものだから、この2人は犬猿の仲というには少し違う気がするけれど、なんとかならないものかと息を吐いた。
程なくしてやってきた車両に、昨日同様に押し込まれる。ガタンと発車の瞬間の揺れに身体が傾きかけ、その瞬間 勝己に肩を抱き寄せられた。そしてそのまま、昨日と同じようにドア側へと避難させられる。
「ごめん、ありがと勝己」
「おー」
(かっちゃん、七瀬にはこういうこと普通にできるのになぁ…)
「…?出久どうかした?」
「え!?あ、いや、今日も混んでるなと思って」
「この時間は仕方ないよね」
「そ、そうだよね…」
何か言いたそうにこちらを見ていた出久に首を傾げれば、少し慌てたような声が返ってきたけれど、それ以上は何も言わなかった。
登校してからは、一言で言うなら“普通”だった。午前中は一般的な高校生と同じように各教科の授業を受け、食堂で昼食をとる。
そして午後からは、ヒーロー科がヒーロー科たる所以である、お待ちかねのヒーロー基礎学の時間だ。
この授業の担当教師であるオールマイトの登場に、クラスメイトたちが歓声をあげる。ドアから教室に入ってきただけなのに、圧倒的な存在感、カリスマ性。これがNo.1ヒーローかと心臓が震えるような感覚がした。
「早速だが今日はこれ!! 戦闘訓練!!」
オールマイトが高らかに宣言した後、着替えたらグラウンドβに集まるようにという指示とともに各々に
ワイワイと盛り上がるクラスメイトたちと、コスチュームを大切に抱えながら更衣室へと移動し、いざ箱を開けてみると綺麗に畳まれたヒーロースーツが入っていた。
黒とダークネイビーを基調としたデザイン。首元まで覆うハイネックに、腰丈のショートジャケット。左腰に刀を携えるためのホルダーが備え付けられた機動性重視のショートパンツと、素足を晒さないためのコンプレッションタイツ、そして動きやすそうなミドルブーツ。前腕を覆うガントレットには細かな六角形の紋様が刻まれている。
全体的に装飾は少なく、華やかというより実戦向きだ。
(……すごく好きかも)
見た目の良し悪しではなく、動きやすさ、個性の使いやすさを追求したようなデザインではあるけれど、決して地味すぎない。
この衣装なら、きっと守ることができる。
「え、佐倉、刀使うの!?」
「あんまり使う機会はないと思うんだけど、個性との相性良さそうで」
「なんか剣士って感じだ!」
「七瀬ちゃんカッコいい!」
コスチュームに着替え、装備として同梱されていた刀を腰に収めていると、三奈ちゃんに声をかけられた。
中学時代に勝己との訓練で、私の個性で攻撃するなら相性の良い武器は刀だろうという結論が出てからは、独学で剣術を身につけてきた。敵とはいえ誰かを傷付ける行為になりかねない“攻撃”は使わないに越したことはないけれど、ヒーローとしてやっていくならそうも言ってられない。“攻撃は最大の防御”という言葉もあるぐらいなのだから。
お茶子ちゃんと透ちゃんからの歓声が上がり、少し恥ずかしいような、嬉しいようなそんな感覚がした。
着替えてグラウンドβに移動すれば、そこにはそれぞれのコスチューを身に纏ったクラスメイトたち。みんながそれぞれ本物のヒーローのように見えて気分が高揚する。
「いいじゃないか皆、カッコイイぜ!!」
グラウンドに揃った生徒たちを見て、オールマイトが声を上げる。全くもって同意見だ。
そしてこれから行われる訓練の説明が始まる。室内での対人戦闘訓練ということらしい。うちのクラスは21人なので1チームだけ3人になるが、基本的には2対2で、チーム分け及び対戦相手はくじによる完全無作為だと言うのも面白い。
「お、佐倉もか」
「てことは3人か」
「よろしくね」
くじの結果、私は瀬呂と切島と同じJチームで唯一の3人組となった。相手チームより1人多いというのが、有利なのかどうかも定かではないけれど。
「佐倉の個性って俺らまだ知らねーよな」
「昨日は使ってなかったもんなぁ?」
「そこ蒸し返さないで…」
単純な疑問という感じで口にした切島の言葉に、瀬呂がニヤニヤと続く。昨日、私が呼び出しに凹んでいたのを知っていてわざと言っているのだ。
ゲンナリと答えた私に、瀬呂は悪い悪いと笑う。全く悪いと思っていないだろう。けれど瀬呂範太というクラスメイトは、とても気さくで接しやすい人なのだと知った。
「攻撃よりも、守りの方が得意かな」
そう言った私に2人が「なるほどなー」と相槌を打ったところで、オールマイトが最初の対戦相手のくじを引く。
発表されたのは、ヒーロー役Aチーム、敵役Dチーム。
「……っ」
思わず息を呑む。それはつまり――出久と勝己が戦うということ。ぎゅうっと 心臓が締め付けられるような感覚がした。
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