ハッピーエンドが始まった
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私の好きな人が、私のことを好きだと言った。真っ直ぐ曇りなく 私の目を見据えて。果たしてそれは、一体どれほどの奇跡なのだろうかと考える。そんな事を考えたせいで反応することが遅れてしまっていた私に「七瀬さん?」と彼は不思議そうに、或いは少し不安そうに私の名前を呼んだ。
躍り狂いたくなるようなこの喜びを、表現できる言葉を私は知らない。けれどそんな態度を僅かにだって見せていないのは、私がこの人に真に求めているのは、その先だから。それを伝えたら、彼は私から離れてしまうだろうかと考えれば どうしようもなく怖い。隠したまま始めてしまいたいとも思うけれど、それ以上に私は彼に対して真摯に誠実でありたいとも思う。
「ねぇ赤葦」
「はい」
「私、結婚願望が強いの」
「…はい?」
脈絡のない私の告白に、赤葦は怪訝そうな表情をした。きっと意味が分からないと思っているのだろう。けれどそんな様子は顔には出さず、私の発言の真意を探ろうと真っ直ぐに私の瞳を覗き込む。慎重で義理堅い、真面目な貴方を愛おしいと思う。私の、大好きな赤葦。
「昔から、初めての彼氏と結婚したいと思ってるの」
「…それは」
「それを聞いても、私の“初めての彼氏”になる覚悟が赤葦にはある?」
重たいでしょ、と嘲笑に近い苦笑いを浮かべた私を見て、赤葦は何かを考えているようだった。当然、だと思う。いくら私のことが好きだと言ってくれた人だとしても、私たちはまだ高校生なのだ。卒業後すぐを望んでいるわけではないとしても、結婚だなんて未来を縛るものでしか無いワードが重たくないわけがない。
「七瀬さんは、その大事な“初めての彼氏”が俺でもいいんですか?」
「……赤葦が、いい」
初めて問われた私の意思に、ポツリと小さく、だけどハッキリと口にした。私は、赤葦がいい。受け入れてもらえるのなら、きっと私は死ぬまで赤葦に恋してる。だからこそ、独り善がりなこの願望を伝えるのが怖いと思いながら、私の重たい夢を知って上で受け入れてほしいとも思う。
縛り付けたくない、離れないでほしい、苦しめたくない、受け入れてほしい。矛盾と葛藤でぐちゃぐちゃの頭の中に、赤葦の落ち着いた声が届く。私の好きな声だ。
「それは、七瀬さんは俺から離れる気が無いという意味ですよね」
「…うん。私は、ね」
「だったら愚問です。俺は貴女を放す気なんて毛頭ありません」
「…!」
なんて事のないように、表情ひとつ変えずに、ただ次の練習メニューを告げるだけかのように。淡々と、未来という重たいものを、彼は軽々と抱えてしまうというのだろうか。
驚いて視線をあげれば赤葦は穏やかに、わずかに口元を緩めていた。あまり表情を変えない彼が滅多に見せる事のない、優しい表情だと思う。
「俺は七瀬さんが好きです。……七瀬さんは?」
私の好きな人が、私のことを好きだと言った。真っ直ぐ曇りなく 私の目を見据えて、私と同じ熱量で。果たしてそれは一体どれほどの奇跡なのだろうかと考えて、じんわりと浮かんだ涙で滲んだ視界で目の前の人の顔を見上げた。
躍り狂いたくなるようなこの喜びを、表現できる言葉を私は知らない。だから何か言葉を発するその代わりに、彼の胸に飛び込むように抱きついた。驚いたようにしながらも、赤葦はちゃんと受け止めてくれる。
「すき。大好きだよ、赤葦」
私を抱きとめた腕が、私の髪を撫でる手が、わずかに震えた気がした。
躍り狂いたくなるようなこの喜びを、表現できる言葉を私は知らない。けれどそんな態度を僅かにだって見せていないのは、私がこの人に真に求めているのは、その先だから。それを伝えたら、彼は私から離れてしまうだろうかと考えれば どうしようもなく怖い。隠したまま始めてしまいたいとも思うけれど、それ以上に私は彼に対して真摯に誠実でありたいとも思う。
「ねぇ赤葦」
「はい」
「私、結婚願望が強いの」
「…はい?」
脈絡のない私の告白に、赤葦は怪訝そうな表情をした。きっと意味が分からないと思っているのだろう。けれどそんな様子は顔には出さず、私の発言の真意を探ろうと真っ直ぐに私の瞳を覗き込む。慎重で義理堅い、真面目な貴方を愛おしいと思う。私の、大好きな赤葦。
「昔から、初めての彼氏と結婚したいと思ってるの」
「…それは」
「それを聞いても、私の“初めての彼氏”になる覚悟が赤葦にはある?」
重たいでしょ、と嘲笑に近い苦笑いを浮かべた私を見て、赤葦は何かを考えているようだった。当然、だと思う。いくら私のことが好きだと言ってくれた人だとしても、私たちはまだ高校生なのだ。卒業後すぐを望んでいるわけではないとしても、結婚だなんて未来を縛るものでしか無いワードが重たくないわけがない。
「七瀬さんは、その大事な“初めての彼氏”が俺でもいいんですか?」
「……赤葦が、いい」
初めて問われた私の意思に、ポツリと小さく、だけどハッキリと口にした。私は、赤葦がいい。受け入れてもらえるのなら、きっと私は死ぬまで赤葦に恋してる。だからこそ、独り善がりなこの願望を伝えるのが怖いと思いながら、私の重たい夢を知って上で受け入れてほしいとも思う。
縛り付けたくない、離れないでほしい、苦しめたくない、受け入れてほしい。矛盾と葛藤でぐちゃぐちゃの頭の中に、赤葦の落ち着いた声が届く。私の好きな声だ。
「それは、七瀬さんは俺から離れる気が無いという意味ですよね」
「…うん。私は、ね」
「だったら愚問です。俺は貴女を放す気なんて毛頭ありません」
「…!」
なんて事のないように、表情ひとつ変えずに、ただ次の練習メニューを告げるだけかのように。淡々と、未来という重たいものを、彼は軽々と抱えてしまうというのだろうか。
驚いて視線をあげれば赤葦は穏やかに、わずかに口元を緩めていた。あまり表情を変えない彼が滅多に見せる事のない、優しい表情だと思う。
「俺は七瀬さんが好きです。……七瀬さんは?」
私の好きな人が、私のことを好きだと言った。真っ直ぐ曇りなく 私の目を見据えて、私と同じ熱量で。果たしてそれは一体どれほどの奇跡なのだろうかと考えて、じんわりと浮かんだ涙で滲んだ視界で目の前の人の顔を見上げた。
躍り狂いたくなるようなこの喜びを、表現できる言葉を私は知らない。だから何か言葉を発するその代わりに、彼の胸に飛び込むように抱きついた。驚いたようにしながらも、赤葦はちゃんと受け止めてくれる。
「すき。大好きだよ、赤葦」
私を抱きとめた腕が、私の髪を撫でる手が、わずかに震えた気がした。
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