きみの明星にふれる
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
部活終わり、すっかり暗くなった街灯の少ない道を歩く。チームメイト達とは先ほど別れたから、私の隣には月島だけ。こういう時に何も言わず そっと月島から離れてくれる山口は本当にいい子だと思う。夜道に響くのは足音だけで、私たちの間に会話はない。けれどそれで良いと思う。月島との間に流れる無言の時間を気不味いと思ったことはなくて、ただ心地よい瞬間だとも思う。それを月島本人に伝えたことはないから、彼がどう思っているかは私の知るところではないけれど。
私の半歩前を行く月島の横顔を見上げる。背が高くて いつでも落ち着いている月島は、本当に私より年下なのかと不思議になることも多いけれど、年下だろうが年上だろうが、月島は月島だからどっちでもいいことだ。
「七瀬さんは」
私の家へと向かう途中にある二十段ほどの階段。そこに差し掛かろうというところで、不意に月島が振り向きもせずに私の名前を呼んだ。佐倉先輩という呼び方が、付き合うようになってから七瀬さんに変わった。その数少ない変化は、私と彼が付き合っているという証のようにも思えて愛おしい。もっと呼んでほしいと思う。月島の声で、私の名前を。
「うん?」
「七瀬さんは、僕といて楽しいですか」
その言葉は疑問形のような形をとってはいたけれど、私の答えは彼の中で決められているのではないかと思った。そのことにハッとして、思わず足を止める。聡い彼に甘えていたのだと気付いたのは今更すぎるだろうか。きっと私のことなど月島にはお見通しなのかもしれないけれど、私が思っていることを寸分違わず彼に知ってもらうためには、私自身が私の言葉で伝える他ないのだと。
「蛍」
「! ちょ、あぶな…!」
足を止めた間に数段先に下りていた蛍の頭は ちょうど私と同じぐらいの高さになっていた。私より大きな背中、だけど大地さんや旭さんと比べれば 逞しさは少ない愛しい背中に乗りかかるように、何の躊躇いもなく その首に腕を回して後ろから抱きついた。予告なしの行動に驚きながらも、蛍は階段から転げ落ちるようなことはせず、ちゃんと私を支えてれる。背は高くても華奢だと言われる年下の彼も、やっぱり男の子なのだ。
文句を言いたげにこちらに顔を向けた蛍の口元に、掠め取るように自分のそれで触れた。
「…!」
「私、幸せだよ」
少しでも伝わればいいと思った。私が感じる幸せと、私が抱く愛しさが。驚いたように目を見開いていた蛍は、僅かに頬を染めて視線を逸らす。その表情はどこか不満そうで笑ってしまう。
「そういうのは、僕がしたい」
背中に回された蛍の右腕が 私の身体を引き寄せて、仕切り直しと言わんばかりに唇を塞がれる。愛しい人から伝わる熱を甘んじて受け入れ、私は全てを委ねるのだ。
私の半歩前を行く月島の横顔を見上げる。背が高くて いつでも落ち着いている月島は、本当に私より年下なのかと不思議になることも多いけれど、年下だろうが年上だろうが、月島は月島だからどっちでもいいことだ。
「七瀬さんは」
私の家へと向かう途中にある二十段ほどの階段。そこに差し掛かろうというところで、不意に月島が振り向きもせずに私の名前を呼んだ。佐倉先輩という呼び方が、付き合うようになってから七瀬さんに変わった。その数少ない変化は、私と彼が付き合っているという証のようにも思えて愛おしい。もっと呼んでほしいと思う。月島の声で、私の名前を。
「うん?」
「七瀬さんは、僕といて楽しいですか」
その言葉は疑問形のような形をとってはいたけれど、私の答えは彼の中で決められているのではないかと思った。そのことにハッとして、思わず足を止める。聡い彼に甘えていたのだと気付いたのは今更すぎるだろうか。きっと私のことなど月島にはお見通しなのかもしれないけれど、私が思っていることを寸分違わず彼に知ってもらうためには、私自身が私の言葉で伝える他ないのだと。
「蛍」
「! ちょ、あぶな…!」
足を止めた間に数段先に下りていた蛍の頭は ちょうど私と同じぐらいの高さになっていた。私より大きな背中、だけど大地さんや旭さんと比べれば 逞しさは少ない愛しい背中に乗りかかるように、何の躊躇いもなく その首に腕を回して後ろから抱きついた。予告なしの行動に驚きながらも、蛍は階段から転げ落ちるようなことはせず、ちゃんと私を支えてれる。背は高くても華奢だと言われる年下の彼も、やっぱり男の子なのだ。
文句を言いたげにこちらに顔を向けた蛍の口元に、掠め取るように自分のそれで触れた。
「…!」
「私、幸せだよ」
少しでも伝わればいいと思った。私が感じる幸せと、私が抱く愛しさが。驚いたように目を見開いていた蛍は、僅かに頬を染めて視線を逸らす。その表情はどこか不満そうで笑ってしまう。
「そういうのは、僕がしたい」
背中に回された蛍の右腕が 私の身体を引き寄せて、仕切り直しと言わんばかりに唇を塞がれる。愛しい人から伝わる熱を甘んじて受け入れ、私は全てを委ねるのだ。
1/1ページ