壱の話


ーー劇団RIZE。

そこは、劇団であり、芸能事務所でもある場所だ。
初代の総支配人である創始者、前島善次郎が立ち上げて大成功し、多くの俳優を世に出した場所でもある。
故に、人気劇団、人気の芸能事務所でもあった。

少なくとも、七年ほど前までは。


十年前、劇団RIZEには看板俳優が二人居た。
“真嶋二世にして天才"と謳われる、「真嶋大和」。
“天才「真嶋大和」のライバル"とされた、“もう一人の天才"「小塚新」。
二人の人気は特に凄まじく、チケットは即完売。
二人揃う舞台では、チケット販売を委託されていたサイトが落ちる事さえざらだった。

ーーしかし、そんな最中に「真嶋大和」が劇団RIZEを去り、別の芸能事務所に移籍。
舞台俳優から、俳優へと転身。それに、複数の劇団員も続いた。
「真嶋大和」が去った半年後には、「小塚新」も劇団RIZEを去った。


何より注目されたのは、“舞台以外にも、幅広く活動したいから、様々なことをやる"そう言って退団し、事務所を移籍した「真嶋大和」に対し、一切理由を語らなかった「小塚新」の動向だった。

“劇団RIZEの俳優代表"。
他の舞台員をまとめ、意見を舞台員を代表して劇団幹部に伝えるなどの指揮を執る立場であり、長く在籍していた者の“沈黙"。
故に、多くの憶測や波紋が生まれた。
“パワハラをしていた"、“真嶋大和が辞める理由を作った"などなど、様々だった。
しかし、結果は“劇団幹部や友人達の前からも姿を消した"。


二人の看板俳優、二人を筆頭に人気だった舞台俳優が去った劇団RIZEは、必然的に客足が遠退いた。
“縁の下の力持ち"と言われた劇団RIZEの副支配人、「大橋健人」の独立を機にその勢いは加速し、遂には当時の劇団RIZE幹部達に劇団員に対しての“パワハラ"や“セクハラ"などの不祥事が発覚した。


最終的に劇団RIZEは、「真嶋大和」と「小塚新」の退団から二年後には、経営悪化を理由に長い歴史に幕を閉じたーー。
1/2ページ
スキ