壱の話
「「「晃さん!今月いっぱいで辞めるって話、本当ですか?!」」」
「ん? ああ、辞める。」
「なんでぇぇ!!」
「やっと慣れて来たのに………っ!」
「そっかぁ……。 とうとう店長に愛想が尽きた?」
「あ゛ぁ゛ん゛?!」
「違う違う。 前職絡みで迷ってたら、比喩だけど蹴っ飛ばされてさ。 辞めさせて貰う事にしたんだわ。」
常連客達にそう告げれば、やって来たまた別の常連客が辞めるという話を聞いたと慌てたように言って来るので思わず笑ってしまった。
しばらく来なくなっていた元常連客まで俺が辞めるという噂を聞き付けてか、連日多くの客がやって来た。
「はーっ! まさか、最終日まで本当に辞めるのかって聞かれるとはなぁ。」
「アンタはこの店の開店当初から居たからね。」
「長いこと通ってくれる客が居ることは有り難い話だぜ?」
「まあね。」
「………明日からは、晃さんは来ないって思うと寂しいですね。」
「そうだね、俺達はお世話になってたから尚更。」
「まあ、なんかタイミングが合えばまた会えるさ。 今生の別れって訳じゃないしな。 ……どうしてもって時は大悟に言うだな!」
「そうね、アンタの方が二人から信頼されてるもの。」
「拗ねんなよ。」
「拗ねてないわよ。」
「ま、俺が欠けても何とかなんだろ。 常連客も多いしな。」
「……そうね。 募集はしてるから、そのうち増えるかもしれないし。」
「う〜、不安〜!」
「ちゃんと引き継ぎ受けたんなら、あとは慣れるしかないでしょ。」
「そうだけどー!」
「ははっ。 まあ、頑張れ。 俺も無理しない程度に頑張るさ。」
「……はい。」
「晃さん、また。」
「おう。 またな。 お疲れー。」
出勤最終日だろうと、送別会の様なものは無しにいつも通りにしてもらった。
ただ、常連客からは花束を貰ったりはしたし、最後だからと閉店後も少し多めに雑談を交わした。
[通ってたバーの店員さんが今日で退職だったから行ったけど、忙しい時期に行くと目の保養だったから寂しい……]
[忙しくて行けてなかったバーの店員さんが退職って聞いて、今日が最後になるからって慌てて行ったら「久し振りじゃん」って言われて泣いた。イケメン店員さんありがとう、新天地でもお元気で………]
[たまに行ってるバーの顔を覚えてくれるタイプのイケメン店員さんが今日で退職だった。 知らなかったから、ビックリしたぁ……。]
[明日から通ってるバーにはイケメン店員さんが居ないの寂しいなぁ………(今日で退職だった)]
「…………。」
帰ってからSNSで店のタグで検索すれば、退職を惜しむ人の投稿がいくつか見受けられた。
[Re:RIZEオーディション、最終審査まで来てまさか指導担当スタッフ達全員振り付け分かってない系? #Re:RIZEオーディション]
[だいぶ参加者達がイライラしてんな……。 マジで指導担当替えた方が良さそう。 #Re:RIZEオーディション]
[えぇ……指導担当してるの、元劇団員のスタッフだよね?なんでこんなに振り分かってないの? 最終審査に向けた特訓のハズだよね? #Re:RIZEオーディション]
[@Re:RIZEProject公式 今日の配信のあの内容なんすか?]
[@Re:RIZEProject公式 なんですかあのスタッフ。 当初の予定からズレてるの、絶対あの指導担当スタッフ達が原因ですよね?]
[@Re:RIZEProject公式 なんで最終審査になってから重大な問題が露見するんだよ? 指導スタッフ、本当に元劇団員?振り付け知らないっておかしいでしょ。]
そんな中配信されたオーディションの内容に対する批判投稿がSNS上には相次いでいた。
中にはオーディションを含めた企画の公式アカウントにまで批判的な投稿をぶつける者も居た。
[小塚和馬:高校の卒業式でした。 (一緒に居るのは兄、叔父。)]
[@小塚和馬 背ぇたっか!?]
[@小塚和馬 お〜、そんな時期かぁ! 卒業おめでと〜!]
[@小塚和馬 流石双子、身長も一緒か!卒業おめでとう。]
[@小塚和馬 小塚新の甥なだけあってか背が高いな……! 卒業おめでとう!]
[小塚和馬:叔父さんの話によれば、父親と祖父は185、母親は170あったらしいですが、小塚家で一番身長が高かったのが叔父(187cm)です。 俺達は183cmね。]
[小塚新:本日より株式会社リージョンミュージックさん所属タレントとして順次活動を再開させて頂きます。 よろしくお願い致します。]
[小塚新:芸能活動を再開するに際しまして、過去についていくつか明言させて頂きますが、まず、俺は劇団RIZEの旧運営幹部らによるパワハラ等の問題と性加害行為の当事者であり被害者という立場である事はお伝えしておきます。]
[小塚新:しかしながら、性被害を警察に訴えた当初、真に受けては貰えず被害届も受理していただけず、パワハラ等の行為に加えての性被害でしたので後に心的外傷後ストレス障害と診断されており、現在も一部におきまして影響がございます。 後に被害届を受理していただき、可能な範囲ではございましたが全面的に協力もさせていただきました。]
[小塚新:また、私が一部劇団員に対して配役を与えなかったという旨の発言がございますが、それは当該劇団員が度重なる規則違反し、反省の色も見受けられなかった事から一時的な劇団員資格停止勧告処分としたものです。 なお、当該劇団員が故意に周囲に対して虚偽や捏造発言、他の劇団員と暴力を伴うトラブル、美品破壊を繰り返していた事は規則違反である事、処分については当該劇団員にも通達しておりますし、当該劇団員のサインがある処分に対する同意書のコピーが残っている事を現在の権力者と確認済みです。]
[小塚新:更に、私が性加害被害者を庇護し、俳優代表権限で退団届を受理した事に腹を立てた旧運営幹部者からの性加害被害とセクハラを、旧運営幹部者と肉体関係にあると吹聴された事に起因して劇団員が内部分裂し、俳優代表としての責務を妨害され、旧運営幹部らからのパワハラが悪化した事も明言させて頂きます。]
[小塚新:退団の二年ほど前から家庭事情での退団の意向を度々伝えておりましたが、退団は認めて頂けず、パワハラだけでも辛かった所に性被害、劇団員の内部分裂、母親代わりだった姉とその夫の急逝が重なり、精神的にも肉体的にも疲弊しきった状態だった為、全ての連絡手段を断ち、沈黙という形になっておりました。 それがあの当時での自分の命と心を守る方法でした。]
[小塚新:また、被害者有志を名乗るアカウントの投稿については概ね事実です。 過去について現在の権利者とは既に話しがついており、権利者との同意の下、劇団RIZE在籍当時の件に関しましては上記の通りに公表致します。 在籍当時の件に関しましては上記以上の公表予定はございません。]
[小塚新:甥である小塚和馬の感想タグを利用し、応援メッセージをくださいましたファンの皆様一人一人に感謝申し上げる事は控えさせては頂きますが、この場で厚く御礼申し上げます。 ありがとうございました。 今後は何卒私の為のご使用はお控え頂き、甥共々応援して下さると嬉しいです。 そうではないファンの皆様も、待ち続けて下さりありがとうございました。引き続き応援よろしくお願い致します。]
[小塚新:追記。 いずれは記事になるだろうし、第三者がまた悪意を持って言うかもしれないという懸念があるので活動再開を機に明言しますが俺は同性愛者です。 この事は甥も所属先も承知していますが、現在は恋人は居ません。]
[小塚新:とまあこんな感じで、このアカウントは個人の見解で緩くやります。 よろしくお願いします。]
[株式会社リージョンミュージック公式:【お知らせ】弊社タレント事業部に本日3月10日より小塚新が所属となりました。 持病である心的外傷後ストレス障害も考慮し、順次活動を再開してまいります。]
和馬が高校卒業を投稿したのに合わせ、俺は小塚新としてのSNSアカウントを作成し、活動再開する旨の投稿をした。
俺の投稿の後に会社のSNSアカウントによる投稿やホームページも反映したようで、ファンからの反応が出始めた。
[うわ、本当にリージョからリリース出てる……! 小塚新リージョ所属かぁ……!]
[えっ、小塚新も性加害の被害者だったの?! 見境無しかよ………。]
[今の権利者と話がついてるって事は、別に険悪だった訳じゃなくてマジで小塚新が余裕無かったんだなって………]
[情報過多……! 頭の整理が追い付いてないが、小塚新が活動再開する事は分かったぞ!やったー!!]
[小塚新が権利者と話が付いてて、過去の話したってことはある程度認識のすり合わせってか確認済んでるって事だよな? 小塚新の認識と権利者の認識一致してるなら、オルティナヤバくね?]
[これ小塚新の認識=権利者の認識なら、オルティナ嘘言ったりしたってことになるんじゃ?]
[ねえ、どういうこと……。 小塚新が悪なんじゃなかったの?なんか違うじゃん……]
[オルティナは使えてないのに、小塚新は使えるんだろうな、劇団RIZEの曲。 小塚新贔屓ってそういう所じゃん]
活動再開を喜ぶ者、衝撃を受ける者、オルティナを疑い始める者、本当に反応は様々だった。
『叔父についての裏話をします。 長くなるし、興味ある人だけ聞いて欲しい。 アーカイブ残すから、話すのはこれっきりね。 1月14日は両親の命日です。 叔父さんは、一人で墓参りに行っています。 「一人で行かせて欲しい」って言われたからで、断る理由は無かった。 叔父曰く、今日は「退団届けを叩き付け、一度小塚新が死んだ日」でもあるらしいです。』
『当時、俺は7歳。正直、あの当時の事はよく覚えてない。 多分、ショックだったから忘れた。』
『両親は、一泊二日の近場への旅行帰りに事故に遭って、即死だった。 その旅行は、子育てと仕事と母方の祖父の介護とで多忙だった両親が少しでも休まればと叔父さんが用意したもので、事故に遭ったあの日、叔父さんは劇団であった事全てを両親に打ち明けて退団する意向を伝えるつもりだった、って随分前に教えてくれた。』
『事故に遭った事、その場で死亡が確認された事、念の為本人か確認して欲しいと連絡を受けたのは叔父さんだった。 自宅で叔父さんの友人と居た俺達は分からないまま、叔父さんの友人と警察署に行った。叔父さんの友人曰く、まだ帰れないという連絡を受け、俺達が叔父さんに会いたいと我儘を言ったって聞いた。』
『俺がハッキリ覚えているのは、叔父さんが初めて泣き顔を見せた事と、俺達を抱き締め、泣きながら謝っていた事だけ。 叔父さんは、自分が旅行を用意しなければ俺達から両親を奪う事は無かったって余計な罪悪感に苛まれていたんだと思う。』
『叔父さんが泣く事は、それっきり。 両親の葬式でも、父親である祖父が翌年に亡くなった時も泣いてない。』
『これは叔父さんの友人に聞いた話だけど、両親の葬式の時に俺達はこっそり両親の遺体を見てるらしい。 悲鳴を上げ、悲鳴を聞いて駆け付けた叔父さんを見た俺達に叔父さんは本当に申し訳無さそうにして、また謝ってたって。』
『俺に両親の記憶はもうほとんど残ってなくて、生前の顔さえ朧げで、そういう意味ではもう叔父さんが親みたいなもん。 両親を失っても、叔父さんは俺達に不自由なく生活させてくれた。愛情を目一杯注いでくれた。 これを親だと言わずしてなんて言えばいいのか、俺には分からない。』
『沢山。 沢山、悩んでた。 叔父さんは悪くない。 何度だって伝えました。 でも、叔父さん自身が許せないんだ。 「ずっと辞めようか悩んで、でも好きだから辞めたくなくて、叔父さんの活動を応援してくれていた両親を悲しませたくなくて、ずっと決心がつかなくて、結局心配だけかけて死んだ。俺が、死なせたんだ」って昔、かなり酔っ払った叔父さんは言ってたくらいだから。』
『………今の叔父さんを見て、母さん達がなんて言うかは叔父さんが一番知ってる。 だから、俺はこれ以上は何も言わない。 ただ、叔父さんがもう一番活動してくれたら、俺は嬉しいよ。 そうとだけ伝えた。』
『何度も言うけど、叔父さんは活動再開をかなり、かなり悩んでた。 本当に発表の前日まで悩んでたみたい。 だから、小塚新として、新しい一歩をようやく踏み出してくれた父を今まで以上に応援してくれると息子としても、小塚和馬としても嬉しいです。』
[命日……。 所属発表日なのか、小塚和馬の両親が亡くなったの……。]
[小塚和馬の配信アーカイブを見るに、やっぱ小塚新というよりは叔父でもなく、小塚和馬にとってはもう一人の父親なんだな。 実父が早くに亡くなったからとかじゃなく。]
[いやもう叔父の小塚新がマジで父親なんじゃん、小塚和馬にとっては……。 そりゃあ、長く悪く言われてたら関係バラしたくもなるか……。]
[小塚和馬の両親もだけど、翌年にあった自分の父親の葬式でさえ泣いてないのか小塚新……。]
和馬がわざわざ雑談配信で、裏話というていで昔話までしたのは俺にとって予想外だったが、叱りはしなかった。
もっとも、あまり俺について話し過ぎないようにとは釘は刺したが。
「株式会社リージョンミュージック所属、元劇団RIZE第八十二代目俳優代表の小塚新だ。 今日からお前らの指導及びサポートをする事になった。」
「「「「「!!」」」」」
「………ッ?! は……!?」
「早速だが、最終審査に関して内容の変更点を伝える。 まず、オルフェウスとフェンティウスから課題曲がフェンティウスとREA:RIZEへ変更。ぶっちゃけると、本来REA:RIZEはデビュー曲になる予定だった曲だが当初の予定から大幅に遅れている事で、これ以上の遅延はプロジェクトにとって致命的だと判断された為変更になった。」
「「「「………!!」」」」
「ただし、どちらかの曲は必ずチームメンバーで話し合い、アレンジをする事。 劇団RIZEらしいパフォーマンスをする事と、劇団RIZEの曲を用いた全く新しいパフォーマンスをして欲しいんだそうだ。 劇団RIZEパフォーマンスに関してはどちらも俺が指導するが、アレンジについてはお前達が主体で、俺はアドバイスをするに留める。 このプロジェクトのオーディションの本質は全く新しい劇団RIZEをパフォーマンス出来るタレントグループを作ることだからな、最後の俳優代表として託すに相応しいか見極める側の俺が出しゃばる気は無い。」
そう告げながら手にしたバインダーを元に、ホワイトボードに二曲の課題曲と[Aチーム][Bチーム]と書き、チームの下に参加者のネームマグネットを貼った。
「………よし、合ってるな。 二つ目の変更点は、審査方法。 合宿所で生活している時の言動、練習態度による個人を対象にした評価ポイントが追加される事になった。 具体的には、例えば合宿所での生活中、掃除と調理は当番で交代でやる等の義務付けられたルールに違反した場合、チームでの総合点数に加えて、個人での減点数に応じた点数が引かれる。」
「「「「!!」」」」
「例えばだが、最終審査での満点が600点で、三人の減点が合計で20点あった場合、最終結果は580点になるといった具合だ。 一回の減点数の最大はマイナス10点だそうだが、何が減点数マイナス10点なのかは俺も知らない。 つまり、個人の人間性も試されるのがこの最終審査だ。」
そう告げると、参加者の一人が手を挙げた。
それが新藤将樹で、かつて客として会った事のある人物だとすぐに分かった。
「質問をしても良いですか?」
「答えられる保証は出来ないがどうぞ。」
「いつからが審査対象期間なんでしょうか?」
「今日、この説明が終わった瞬間からだから………予定ではこのあと14時過ぎからだ。 仮に14時を過ぎたとしても、説明が終わってから審査開始だ。 逆に早く終われば14時までは審査は開始にならない。 発表日の変更だけはこの先何があろうと無いので、後二週間って所だ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「ああ、もう一個言う事があった。 指導をするとは言ったが、舞台に上がって指導してやる事は出来ない。 現状、舞台に上がれない身体になってるんでな。」
「「「「「……?!」」」」」
「なっ……!? 劇団RIZEの看板役者だったほどの人が、どうして………!」
「劇団RIZEの運営幹部の件を含め、様々な要因が重なった結果としか言いようが無いな。 ま、舞台にさえ上がらなきゃ問題無く指導は出来るし、客目線で指導する方が劇団RIZEを意識するなら重要になる。 指導に差し支えるような事は無いが、あらかじめ伝えておく。」
指導を引き受けるのにあたり、舞台に上がれるかを再確認したが、上がれはするがパニック症状に襲われてしまいパフォーマンスなど出来なかった。
………舞台に上がれはするだけまだマシだった、とは口が裂けても言えなかったが。
「………山崎、久我山、柊。 練習だからって適当にやってる? 常に本番だと思ってやれって言わなかったっけ?」
「すみません。」
「すいません……。」
「……すいません。」
「不満なら練習参加しなくていい。 教えてやっても無駄にするだろ、その感じだと。 良いよ、出て行って。 いや、むしろやる気無いなら他の奴らにとっても邪魔なだけだから出てけ。」
「「「!!」」」
「お前ら三人のせいで練習止められて、チームにとってはお前らというマイナスペナルティー付いてんだって分かってる? 分かってないよな?分かってたら何度も注意される訳無いもんな。」
「「「…………。」」」
「三人共退出しろ。 今日これ以上練習に参加する事は認めない。 当たり前だけど、個人指導も引き受けないから。」
練習が始まって分かったのは、これまで複数のアーティストのバックダンサー経験がある三人が練習だからとやる気を出さず、振りさえ合っていれば良いという態度を隠さない事だ。
実力に胡座をかいている、とも受け取れる態度はSNSでも指摘があったほどだ。
何より、俺自身も常時彼ら参加者に時間が割ける訳では無く、やる気が無い者に指導を続けても良い影響は受けない。
「………小塚さんって、やっぱり変わりましたね。」
「別に変わった感覚?自覚は無いけどな。」
「勿論、変わってない部分はありますよ。 まあ、小塚さんは辞めるまでに色々ありましたし、変わらないってのは難しい話しだったのかもしれませんね。」
「………お前もそうだけど、他の先に辞めた連中が罪悪感を感じるのは何か違うとは思うけどな。 辞めるのは当然の権利だったんだから。 ただ、俺の場合は俳優代表って肩書きがあったから、届けなきゃいけない連中がクソみたいな上司だったってだけで。」
俺自身は先に辞めた連中に対して、恨んだり妬ましくなったり、特に感じていない。
だが、残っていた俺を取り巻く環境がどれほど劣悪だったのか露顕した事で、多少なりとも知っていた奴もそうでは無い連中も、罪悪感を抱いてしまったらしく先に辞めた事を謝られた。
俺に言わせれば、謝る事では無かったというのに。
「ん? ああ、辞める。」
「なんでぇぇ!!」
「やっと慣れて来たのに………っ!」
「そっかぁ……。 とうとう店長に愛想が尽きた?」
「あ゛ぁ゛ん゛?!」
「違う違う。 前職絡みで迷ってたら、比喩だけど蹴っ飛ばされてさ。 辞めさせて貰う事にしたんだわ。」
常連客達にそう告げれば、やって来たまた別の常連客が辞めるという話を聞いたと慌てたように言って来るので思わず笑ってしまった。
しばらく来なくなっていた元常連客まで俺が辞めるという噂を聞き付けてか、連日多くの客がやって来た。
「はーっ! まさか、最終日まで本当に辞めるのかって聞かれるとはなぁ。」
「アンタはこの店の開店当初から居たからね。」
「長いこと通ってくれる客が居ることは有り難い話だぜ?」
「まあね。」
「………明日からは、晃さんは来ないって思うと寂しいですね。」
「そうだね、俺達はお世話になってたから尚更。」
「まあ、なんかタイミングが合えばまた会えるさ。 今生の別れって訳じゃないしな。 ……どうしてもって時は大悟に言うだな!」
「そうね、アンタの方が二人から信頼されてるもの。」
「拗ねんなよ。」
「拗ねてないわよ。」
「ま、俺が欠けても何とかなんだろ。 常連客も多いしな。」
「……そうね。 募集はしてるから、そのうち増えるかもしれないし。」
「う〜、不安〜!」
「ちゃんと引き継ぎ受けたんなら、あとは慣れるしかないでしょ。」
「そうだけどー!」
「ははっ。 まあ、頑張れ。 俺も無理しない程度に頑張るさ。」
「……はい。」
「晃さん、また。」
「おう。 またな。 お疲れー。」
出勤最終日だろうと、送別会の様なものは無しにいつも通りにしてもらった。
ただ、常連客からは花束を貰ったりはしたし、最後だからと閉店後も少し多めに雑談を交わした。
[通ってたバーの店員さんが今日で退職だったから行ったけど、忙しい時期に行くと目の保養だったから寂しい……]
[忙しくて行けてなかったバーの店員さんが退職って聞いて、今日が最後になるからって慌てて行ったら「久し振りじゃん」って言われて泣いた。イケメン店員さんありがとう、新天地でもお元気で………]
[たまに行ってるバーの顔を覚えてくれるタイプのイケメン店員さんが今日で退職だった。 知らなかったから、ビックリしたぁ……。]
[明日から通ってるバーにはイケメン店員さんが居ないの寂しいなぁ………(今日で退職だった)]
「…………。」
帰ってからSNSで店のタグで検索すれば、退職を惜しむ人の投稿がいくつか見受けられた。
[Re:RIZEオーディション、最終審査まで来てまさか指導担当スタッフ達全員振り付け分かってない系? #Re:RIZEオーディション]
[だいぶ参加者達がイライラしてんな……。 マジで指導担当替えた方が良さそう。 #Re:RIZEオーディション]
[えぇ……指導担当してるの、元劇団員のスタッフだよね?なんでこんなに振り分かってないの? 最終審査に向けた特訓のハズだよね? #Re:RIZEオーディション]
[@Re:RIZEProject公式 今日の配信のあの内容なんすか?]
[@Re:RIZEProject公式 なんですかあのスタッフ。 当初の予定からズレてるの、絶対あの指導担当スタッフ達が原因ですよね?]
[@Re:RIZEProject公式 なんで最終審査になってから重大な問題が露見するんだよ? 指導スタッフ、本当に元劇団員?振り付け知らないっておかしいでしょ。]
そんな中配信されたオーディションの内容に対する批判投稿がSNS上には相次いでいた。
中にはオーディションを含めた企画の公式アカウントにまで批判的な投稿をぶつける者も居た。
[小塚和馬:高校の卒業式でした。 (一緒に居るのは兄、叔父。)]
[@小塚和馬 背ぇたっか!?]
[@小塚和馬 お〜、そんな時期かぁ! 卒業おめでと〜!]
[@小塚和馬 流石双子、身長も一緒か!卒業おめでとう。]
[@小塚和馬 小塚新の甥なだけあってか背が高いな……! 卒業おめでとう!]
[小塚和馬:叔父さんの話によれば、父親と祖父は185、母親は170あったらしいですが、小塚家で一番身長が高かったのが叔父(187cm)です。 俺達は183cmね。]
[小塚新:本日より株式会社リージョンミュージックさん所属タレントとして順次活動を再開させて頂きます。 よろしくお願い致します。]
[小塚新:芸能活動を再開するに際しまして、過去についていくつか明言させて頂きますが、まず、俺は劇団RIZEの旧運営幹部らによるパワハラ等の問題と性加害行為の当事者であり被害者という立場である事はお伝えしておきます。]
[小塚新:しかしながら、性被害を警察に訴えた当初、真に受けては貰えず被害届も受理していただけず、パワハラ等の行為に加えての性被害でしたので後に心的外傷後ストレス障害と診断されており、現在も一部におきまして影響がございます。 後に被害届を受理していただき、可能な範囲ではございましたが全面的に協力もさせていただきました。]
[小塚新:また、私が一部劇団員に対して配役を与えなかったという旨の発言がございますが、それは当該劇団員が度重なる規則違反し、反省の色も見受けられなかった事から一時的な劇団員資格停止勧告処分としたものです。 なお、当該劇団員が故意に周囲に対して虚偽や捏造発言、他の劇団員と暴力を伴うトラブル、美品破壊を繰り返していた事は規則違反である事、処分については当該劇団員にも通達しておりますし、当該劇団員のサインがある処分に対する同意書のコピーが残っている事を現在の権力者と確認済みです。]
[小塚新:更に、私が性加害被害者を庇護し、俳優代表権限で退団届を受理した事に腹を立てた旧運営幹部者からの性加害被害とセクハラを、旧運営幹部者と肉体関係にあると吹聴された事に起因して劇団員が内部分裂し、俳優代表としての責務を妨害され、旧運営幹部らからのパワハラが悪化した事も明言させて頂きます。]
[小塚新:退団の二年ほど前から家庭事情での退団の意向を度々伝えておりましたが、退団は認めて頂けず、パワハラだけでも辛かった所に性被害、劇団員の内部分裂、母親代わりだった姉とその夫の急逝が重なり、精神的にも肉体的にも疲弊しきった状態だった為、全ての連絡手段を断ち、沈黙という形になっておりました。 それがあの当時での自分の命と心を守る方法でした。]
[小塚新:また、被害者有志を名乗るアカウントの投稿については概ね事実です。 過去について現在の権利者とは既に話しがついており、権利者との同意の下、劇団RIZE在籍当時の件に関しましては上記の通りに公表致します。 在籍当時の件に関しましては上記以上の公表予定はございません。]
[小塚新:甥である小塚和馬の感想タグを利用し、応援メッセージをくださいましたファンの皆様一人一人に感謝申し上げる事は控えさせては頂きますが、この場で厚く御礼申し上げます。 ありがとうございました。 今後は何卒私の為のご使用はお控え頂き、甥共々応援して下さると嬉しいです。 そうではないファンの皆様も、待ち続けて下さりありがとうございました。引き続き応援よろしくお願い致します。]
[小塚新:追記。 いずれは記事になるだろうし、第三者がまた悪意を持って言うかもしれないという懸念があるので活動再開を機に明言しますが俺は同性愛者です。 この事は甥も所属先も承知していますが、現在は恋人は居ません。]
[小塚新:とまあこんな感じで、このアカウントは個人の見解で緩くやります。 よろしくお願いします。]
[株式会社リージョンミュージック公式:【お知らせ】弊社タレント事業部に本日3月10日より小塚新が所属となりました。 持病である心的外傷後ストレス障害も考慮し、順次活動を再開してまいります。]
和馬が高校卒業を投稿したのに合わせ、俺は小塚新としてのSNSアカウントを作成し、活動再開する旨の投稿をした。
俺の投稿の後に会社のSNSアカウントによる投稿やホームページも反映したようで、ファンからの反応が出始めた。
[うわ、本当にリージョからリリース出てる……! 小塚新リージョ所属かぁ……!]
[えっ、小塚新も性加害の被害者だったの?! 見境無しかよ………。]
[今の権利者と話がついてるって事は、別に険悪だった訳じゃなくてマジで小塚新が余裕無かったんだなって………]
[情報過多……! 頭の整理が追い付いてないが、小塚新が活動再開する事は分かったぞ!やったー!!]
[小塚新が権利者と話が付いてて、過去の話したってことはある程度認識のすり合わせってか確認済んでるって事だよな? 小塚新の認識と権利者の認識一致してるなら、オルティナヤバくね?]
[これ小塚新の認識=権利者の認識なら、オルティナ嘘言ったりしたってことになるんじゃ?]
[ねえ、どういうこと……。 小塚新が悪なんじゃなかったの?なんか違うじゃん……]
[オルティナは使えてないのに、小塚新は使えるんだろうな、劇団RIZEの曲。 小塚新贔屓ってそういう所じゃん]
活動再開を喜ぶ者、衝撃を受ける者、オルティナを疑い始める者、本当に反応は様々だった。
『叔父についての裏話をします。 長くなるし、興味ある人だけ聞いて欲しい。 アーカイブ残すから、話すのはこれっきりね。 1月14日は両親の命日です。 叔父さんは、一人で墓参りに行っています。 「一人で行かせて欲しい」って言われたからで、断る理由は無かった。 叔父曰く、今日は「退団届けを叩き付け、一度小塚新が死んだ日」でもあるらしいです。』
『当時、俺は7歳。正直、あの当時の事はよく覚えてない。 多分、ショックだったから忘れた。』
『両親は、一泊二日の近場への旅行帰りに事故に遭って、即死だった。 その旅行は、子育てと仕事と母方の祖父の介護とで多忙だった両親が少しでも休まればと叔父さんが用意したもので、事故に遭ったあの日、叔父さんは劇団であった事全てを両親に打ち明けて退団する意向を伝えるつもりだった、って随分前に教えてくれた。』
『事故に遭った事、その場で死亡が確認された事、念の為本人か確認して欲しいと連絡を受けたのは叔父さんだった。 自宅で叔父さんの友人と居た俺達は分からないまま、叔父さんの友人と警察署に行った。叔父さんの友人曰く、まだ帰れないという連絡を受け、俺達が叔父さんに会いたいと我儘を言ったって聞いた。』
『俺がハッキリ覚えているのは、叔父さんが初めて泣き顔を見せた事と、俺達を抱き締め、泣きながら謝っていた事だけ。 叔父さんは、自分が旅行を用意しなければ俺達から両親を奪う事は無かったって余計な罪悪感に苛まれていたんだと思う。』
『叔父さんが泣く事は、それっきり。 両親の葬式でも、父親である祖父が翌年に亡くなった時も泣いてない。』
『これは叔父さんの友人に聞いた話だけど、両親の葬式の時に俺達はこっそり両親の遺体を見てるらしい。 悲鳴を上げ、悲鳴を聞いて駆け付けた叔父さんを見た俺達に叔父さんは本当に申し訳無さそうにして、また謝ってたって。』
『俺に両親の記憶はもうほとんど残ってなくて、生前の顔さえ朧げで、そういう意味ではもう叔父さんが親みたいなもん。 両親を失っても、叔父さんは俺達に不自由なく生活させてくれた。愛情を目一杯注いでくれた。 これを親だと言わずしてなんて言えばいいのか、俺には分からない。』
『沢山。 沢山、悩んでた。 叔父さんは悪くない。 何度だって伝えました。 でも、叔父さん自身が許せないんだ。 「ずっと辞めようか悩んで、でも好きだから辞めたくなくて、叔父さんの活動を応援してくれていた両親を悲しませたくなくて、ずっと決心がつかなくて、結局心配だけかけて死んだ。俺が、死なせたんだ」って昔、かなり酔っ払った叔父さんは言ってたくらいだから。』
『………今の叔父さんを見て、母さん達がなんて言うかは叔父さんが一番知ってる。 だから、俺はこれ以上は何も言わない。 ただ、叔父さんがもう一番活動してくれたら、俺は嬉しいよ。 そうとだけ伝えた。』
『何度も言うけど、叔父さんは活動再開をかなり、かなり悩んでた。 本当に発表の前日まで悩んでたみたい。 だから、小塚新として、新しい一歩をようやく踏み出してくれた父を今まで以上に応援してくれると息子としても、小塚和馬としても嬉しいです。』
[命日……。 所属発表日なのか、小塚和馬の両親が亡くなったの……。]
[小塚和馬の配信アーカイブを見るに、やっぱ小塚新というよりは叔父でもなく、小塚和馬にとってはもう一人の父親なんだな。 実父が早くに亡くなったからとかじゃなく。]
[いやもう叔父の小塚新がマジで父親なんじゃん、小塚和馬にとっては……。 そりゃあ、長く悪く言われてたら関係バラしたくもなるか……。]
[小塚和馬の両親もだけど、翌年にあった自分の父親の葬式でさえ泣いてないのか小塚新……。]
和馬がわざわざ雑談配信で、裏話というていで昔話までしたのは俺にとって予想外だったが、叱りはしなかった。
もっとも、あまり俺について話し過ぎないようにとは釘は刺したが。
「株式会社リージョンミュージック所属、元劇団RIZE第八十二代目俳優代表の小塚新だ。 今日からお前らの指導及びサポートをする事になった。」
「「「「「!!」」」」」
「………ッ?! は……!?」
「早速だが、最終審査に関して内容の変更点を伝える。 まず、オルフェウスとフェンティウスから課題曲がフェンティウスとREA:RIZEへ変更。ぶっちゃけると、本来REA:RIZEはデビュー曲になる予定だった曲だが当初の予定から大幅に遅れている事で、これ以上の遅延はプロジェクトにとって致命的だと判断された為変更になった。」
「「「「………!!」」」」
「ただし、どちらかの曲は必ずチームメンバーで話し合い、アレンジをする事。 劇団RIZEらしいパフォーマンスをする事と、劇団RIZEの曲を用いた全く新しいパフォーマンスをして欲しいんだそうだ。 劇団RIZEパフォーマンスに関してはどちらも俺が指導するが、アレンジについてはお前達が主体で、俺はアドバイスをするに留める。 このプロジェクトのオーディションの本質は全く新しい劇団RIZEをパフォーマンス出来るタレントグループを作ることだからな、最後の俳優代表として託すに相応しいか見極める側の俺が出しゃばる気は無い。」
そう告げながら手にしたバインダーを元に、ホワイトボードに二曲の課題曲と[Aチーム][Bチーム]と書き、チームの下に参加者のネームマグネットを貼った。
「………よし、合ってるな。 二つ目の変更点は、審査方法。 合宿所で生活している時の言動、練習態度による個人を対象にした評価ポイントが追加される事になった。 具体的には、例えば合宿所での生活中、掃除と調理は当番で交代でやる等の義務付けられたルールに違反した場合、チームでの総合点数に加えて、個人での減点数に応じた点数が引かれる。」
「「「「!!」」」」
「例えばだが、最終審査での満点が600点で、三人の減点が合計で20点あった場合、最終結果は580点になるといった具合だ。 一回の減点数の最大はマイナス10点だそうだが、何が減点数マイナス10点なのかは俺も知らない。 つまり、個人の人間性も試されるのがこの最終審査だ。」
そう告げると、参加者の一人が手を挙げた。
それが新藤将樹で、かつて客として会った事のある人物だとすぐに分かった。
「質問をしても良いですか?」
「答えられる保証は出来ないがどうぞ。」
「いつからが審査対象期間なんでしょうか?」
「今日、この説明が終わった瞬間からだから………予定ではこのあと14時過ぎからだ。 仮に14時を過ぎたとしても、説明が終わってから審査開始だ。 逆に早く終われば14時までは審査は開始にならない。 発表日の変更だけはこの先何があろうと無いので、後二週間って所だ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「ああ、もう一個言う事があった。 指導をするとは言ったが、舞台に上がって指導してやる事は出来ない。 現状、舞台に上がれない身体になってるんでな。」
「「「「「……?!」」」」」
「なっ……!? 劇団RIZEの看板役者だったほどの人が、どうして………!」
「劇団RIZEの運営幹部の件を含め、様々な要因が重なった結果としか言いようが無いな。 ま、舞台にさえ上がらなきゃ問題無く指導は出来るし、客目線で指導する方が劇団RIZEを意識するなら重要になる。 指導に差し支えるような事は無いが、あらかじめ伝えておく。」
指導を引き受けるのにあたり、舞台に上がれるかを再確認したが、上がれはするがパニック症状に襲われてしまいパフォーマンスなど出来なかった。
………舞台に上がれはするだけまだマシだった、とは口が裂けても言えなかったが。
「………山崎、久我山、柊。 練習だからって適当にやってる? 常に本番だと思ってやれって言わなかったっけ?」
「すみません。」
「すいません……。」
「……すいません。」
「不満なら練習参加しなくていい。 教えてやっても無駄にするだろ、その感じだと。 良いよ、出て行って。 いや、むしろやる気無いなら他の奴らにとっても邪魔なだけだから出てけ。」
「「「!!」」」
「お前ら三人のせいで練習止められて、チームにとってはお前らというマイナスペナルティー付いてんだって分かってる? 分かってないよな?分かってたら何度も注意される訳無いもんな。」
「「「…………。」」」
「三人共退出しろ。 今日これ以上練習に参加する事は認めない。 当たり前だけど、個人指導も引き受けないから。」
練習が始まって分かったのは、これまで複数のアーティストのバックダンサー経験がある三人が練習だからとやる気を出さず、振りさえ合っていれば良いという態度を隠さない事だ。
実力に胡座をかいている、とも受け取れる態度はSNSでも指摘があったほどだ。
何より、俺自身も常時彼ら参加者に時間が割ける訳では無く、やる気が無い者に指導を続けても良い影響は受けない。
「………小塚さんって、やっぱり変わりましたね。」
「別に変わった感覚?自覚は無いけどな。」
「勿論、変わってない部分はありますよ。 まあ、小塚さんは辞めるまでに色々ありましたし、変わらないってのは難しい話しだったのかもしれませんね。」
「………お前もそうだけど、他の先に辞めた連中が罪悪感を感じるのは何か違うとは思うけどな。 辞めるのは当然の権利だったんだから。 ただ、俺の場合は俳優代表って肩書きがあったから、届けなきゃいけない連中がクソみたいな上司だったってだけで。」
俺自身は先に辞めた連中に対して、恨んだり妬ましくなったり、特に感じていない。
だが、残っていた俺を取り巻く環境がどれほど劣悪だったのか露顕した事で、多少なりとも知っていた奴もそうでは無い連中も、罪悪感を抱いてしまったらしく先に辞めた事を謝られた。
俺に言わせれば、謝る事では無かったというのに。