壱の話

「叔父さん、叔父で養父が小塚新として活動してたって、言いたいんだけど。」

既に我慢の限界そうだった和馬が、寝室部屋の掃除をしていた俺の元に来るなりそう告げて来た。
チャンネルの登録数が百万人に到達したらという約束だったのにだ。

「………チャンネルの登録数が百万人いったらって約束だろ。」
「このまま叔父さんの過去が、嘘のせいで馬鹿にされてるのを黙って見聞きしてろって事かよ?」
「お前は余計なことまで喋りそうだから言ってんだよ。 親族トラブルだとか、俺がどういう人かとか。 絶対俺を自慢しようとする。」
「言うと思った。 もう勝手に公表するからいい。」
「おい、和馬!」
「叔父さんは俺の為に言ってるつもりかも知んねえけど、全然嬉しくねえから!!」

和馬は自分の部屋に入りながらそう言い放って、部屋のドアを閉めると鍵をかけていた。
溜め息を吐くと、頭を掻いた。

[小塚和馬:15時から急遽重大発表生放送をします。 配信開始は50分くらいですが、発表は15時にします。 今冷静じゃないので。]

そんなSNS通知からほどなくしてから、携帯が和馬の配信通知を知らせた。

[どしたどした]
[SNSの投稿を見るにまぁた兄貴と喧嘩でもしたんかね?]
[さてはまた兄貴と喧嘩したか?]
[告知なんだろ]
[重大告知、楽しみ半分不安半分なんだが]
[急な重大発表が色々な意味でドキドキする……]
『先に言っておくけど、今から言う告知は俺にとってはケジメみたいなもので、本当はこの活動を始めるに至って叔父さんとしてた約束を破る事になる。 ので、まあ、もしかしたら配信機材なんかを取り上げられるかも知れない。分かんないけど。』
[は!?]
[え?!]
[ちょっ……!?]
『あくまでも可能性の話ね。 じゃ、15時になるまでしばらくお待ち下さい。』
[小塚和馬チャンネル:許してないからな。]
[管理人さん?!]
[何をやらかしたんや?!]
『言っておくけど、決めたのマジで叔父さんのせいでもあるから。』
「こんの………。」

そう呟いた後、溜め息を吐いた。

『15時になりましたので、お知らせします。 俺、小塚和馬は昨今話題になっております小塚新として過去に活動していた人物の甥であり養子です。 ただ、俺が知っているのは叔父がかつて小塚新という芸名で芸能活動というか、劇団RIZEで役者をしていたという事、既に芸能活動を辞めていること、舞台に上がることが困難だという事しか知らないです。 なので、噂の真偽についても人並みの知識しかありません、聞いてもはぐらかされました。 活動開始時から公表する事を実質的に禁止されていましたが、叔父さんがいつまでも黙っているつもりなのとプライベートな事情と合わさって腹が立ったので公表します。』
[え゛]
[はーー!!]
[えっ……じゃあ、管理人=叔父兼養父=小塚新???]
[叔父が小塚新だったんかい!!]
[なんッ………! もっと早くに言え!!]
『開始するにあたっては登録者が百万人、自力でいったら言うっていう約束してた。 けど、ここ最近はマジで小塚新関係が酷い。 親でも殺されたりした?ぐらいにボロクソに言われてて、でも何もすんなって言われて、なのに叔父さんは何も言わない。 だから、さっき、ちょっと前に「もう言うから!」って言ってきて、今に至る。』
[なにをしてんだ??]
[今に至るじゃないが??]
『さっき居たし、まだ絶対聞いてるから改めて言うけどさ、ここまで外野に色々言われてんのにまだ言わないのはどうなの。 言うなって言ったのも、多分、小塚新の甥だっていう事で小塚新に関連付けられて誹謗中傷されるかもしれなくて、誹謗中傷の辛さみたいなのは叔父さんの方が分かってるからだと思うけど、誹謗中傷なんて小塚新関係なくされてるし、最近じゃ小塚だからって勝手に小塚新と紐付けられて中傷言われてんのに気にすんなってのが無理な話で。 小塚新の甥だって言っても言わなくても叩くやつは居るし、言った事で叩くやつは増えるだろうけどそういう環境というか、状況作ってる一端って説明もしない小塚新のせいでもあるでしょ、間違いなく。』
「…………。」
『色々事情があるのは分かってるけど、黙ってても調子乗らせるだけだって叔父さんにも分かってるはずだろ。 暴露した方が色々解決するような気さえするくらいには、長年黙ってるこの状況は最悪だよ。 無関係の小塚さんまで攻撃する人達とか頭おかしいだろ、マジで。 なんなの?マジで叔父さんに親とか親しい人でも殺されたかなんかした? いや、叔父さんが前科者とかじゃないのは百も承知だけど。』
[言い方ァ!]
[言い方が良くない……!大変良くない……!]
[炎上するぞ!]
『良いよ、炎上したって。 俺の叔父兼養父が小塚新って名前で活動してたのは事実で、変わらないし。 名指しはしないけど、その叔父さんの後輩連中の発言もどうなの?人気があれば何を言ったって許されるわけ? どうかしてるよ、起用する側も売り込む側も。 だから叔父さんが活動辞めたんじゃねえの。』
[あわわ]
[そこに触れるのは流石にヤバいって]
[大手事務所のタレントだぞ……!]
『ハッキリ言うけど、なんだっけ、被害者有志のアカウント?あの投稿がほぼ事実なんじゃないかって納得するぐらいには、退団直後の叔父さんは本当はボロボロで、両親亡くしたばっかの俺達が心配しないようにってぶっ倒れるまで無理してたぐらいだったんだよ。 そんな状態だったから説明出来なかったのは理解してるよ、俺だって。 でもここ数年は安定してるんだから、ファン向けに生きてるよくらい言ったっていい訳じゃん。 じゃなきゃ流石にいきなり何も言わずに辞めてるし不誠実で、嫌なはずなんだよ、叔父さんだって。 だけど、それさえ言うのを躊躇わせる要素が色々マジであり過ぎる。 足枷の一つには無関係じゃないからあれだけど。』
「…………。」
『鵜呑にして馬鹿にされてのを見て傷付いてる暇があったら、小塚新ファンは叔父さんSNS見てるから、ちゃんと今も待ってるって、今も応援してるってちゃんと発信して。 説明待ってるじゃなくて、ファン個人の言葉を尽くして今もファンだってアピールしなきゃ意味が無い。 叔父さんはもうファン居ないと思ってる節あるよ。 悪い声の方が目に付くんだから、ファンなら悪い声以上に発信しなきゃ叔父さんの目に入らない。 俺の感想タグでも良いよ、この際。叔父さんも感想タグ見てるから。』
[まじ?]
[甥っ子の配信の感想タグまで見てんのw]
[まさかの甥本人からの感想タグを小塚新宛使用許可]
『念押しするけど、俺は小塚新としての活動知らないから。 小塚新って名前で活動してたって事を知ってるだけ。 あと、小塚新関係の依頼やお問い合わせは無視します。 答えられないし。』
[小塚和馬チャンネル:夕飯作って泊まって行くつもりだったが、このザマなので作らずに帰りまーす。 ちなみに、兄の方は友達と食って来るそうです。]
[あっ]
[あっ]
[あーあ]
『………は?』
[小塚和馬チャンネル:弁当代も置いていかないから自腹でなんとかしろ。 バイト代もそろそろ入るだろうし、兄の方にもしばらく弁当作らないから自分で作るか買うかしろって言ってあるから。]

打ち込み終わると携帯をカバンにしまい、バイクを走らせたし和馬の配信を聴いていたらしい大悟からメッセージが届いた。

『立て続けに悩まされてアンタも大変ねぇ……。』
「お気遣いどーも。」
『でも、和馬の言い分も一理あるわよ。 余裕がある時に、説明とまではいかなくても何かしら言うべきよ。』
「和馬の公表が無ければ余裕があっただろうがもう無いな。 獅堂はこれを機に小塚新相手だって手段を選ばなくなるだろうし、メディアがこの話題を放っておく訳も無い。 和馬は小塚新関係の依頼や問い合わせは無視するっつったが和馬に対する依頼に見せかけて小塚新ネタを得ようとする。」

劇団員だった頃、俺は取材を一切断っていた。
役者としても俳優代表としても忙しく、メディア対応に時間を割くより自己研鑽と後進への育成に時間を割きたかったからだ。
その結果、真嶋大和の方が知名度では勝るが別に有名になりたい訳では無く、断ったからといって諦めるようなメディアはごく一部だ。

《配信者の小塚和馬が叔父であり養父が小塚新である事を公表! なお、小塚新関係の依頼や問い合わせには対応しない事も表明!》
《配信者として活動している小塚和馬が自身の生放送にて、養父でもある叔父が小塚新として活動していた人物である事を公表。 小塚和馬自身は、「叔父が小塚新という芸名で活動していた事しか知らない」とのこと。小塚新に関する依頼や問い合わせには対応しないとも明言。》
[えっ!小塚新のガチの甥っ子?!配信者なんてやってんの!?]
[小塚新の甥っ子が配信者とか血筋ィ〜]
[小塚新の甥っ子の配信アーカイブ見たけど、口止めされてたのに公表したんか……]
[小塚新の甥っ子、小塚和馬だっけ?の配信アーカイブ見たら感想タグを小塚新も見てるから小塚新ファンは今も応援してるとか書けって言ってたな]
[小塚新の活動お待ちしてます〜!! #見聞きしたよ和馬]
[小塚新も見てると聞いて。 活動待ってます #見聞きしたよ和馬]
[説明しなくて大丈夫です。 また小塚新の活動を見たいです。 #見聞きしたよ和馬]
[小塚新のまた歌と演技見たいよ〜! #見聞きしたよ和馬]
[小塚和馬:百件以上の問い合わせや依頼が殺到し、(公表を強行した事で普段やってくれていた叔父からはノータッチ宣言されたので)とても対応し切れないので、遅くなりますが順次返すのでお待ち下さい……。]
「…………。」

和馬が小塚新の甥だと公表した事の反響はやはり大きく、和馬の自業自得ではあるが対応し切れないほどの問い合わせや依頼が来ていた。

だが、存外悪い事ばかりでは無かったらしく、獅堂夫妻が経営している会社の社員や取引先からも獅堂夫妻によるパワハラ等の内部告発や告発がされた。
しかも、その告発内容の中に亡くなった義兄……息子の葬儀で大暴れした事、その葬儀の喪主を務めたのが小塚新だったとまで暴露された事で大々的に報道されてしまった事で逃げ道が失われた獅堂夫妻は会見を開いたが最後まで非を認めなかった事で、取締役会により失職する事があっという間に確実になった。

「結局、翔真が行く必要は無くなったし葬儀の時の賠償金は獅堂夫妻の兄弟連中が払うらしいし、こっちが訴えてた損害賠償金も彼らが和解金を支払ってくれるって弁護士さんからは連絡が来てる。 やっとなんとか終息しそうだ。」
「和馬が公表したのも影響したのかしらねえ……。」
「さあ?そこまでは聞いちゃいないし、言われてもないから知りようが無いな。 ただまあ、多少は影響したのかもな。」
「………どうするの?小塚新。」
「決めてない。」
「翔真と和馬はなんて?」
「見たいとさ。 見ても楽しいもんじゃないだろうによ。」

大悟にそう告げながら試作だというスイーツを口にし、顔を顰めたタイミングで店のドアが開き、鈴が鳴った。

「営業時間外に申し訳ありません。 こちらに小野塚晃が居ると伺ったものですから。」
「!」
「………大悟、お前これ味見した?」
「え?」
「マッズイぞ。」

そう告げながら大悟の口にフォークで切り分けたスイーツを突っ込みつつ、コーヒーで口直しをし、後ろを振り返った。
スイーツを食って悶絶している大悟には、見て見ぬ振りをした。

「社長自らお越しとはね。 暇人って訳じゃないだろうに。」
「………私が自ら話しをしなければ、君を相手にするならば不誠実だ。」
「不誠実、ね。 まあ、御足労頂いた事に敬意を払って話ぐらいなら聞いてやるよ。」

現れたのは劇団RIZEの権利者であり、株式会社リージョンミュージックの社長である堂島雅信だったが面識はあったのでそう告げれば、そんな事を知らない大悟が無言で睨んで来たが気付かなかった事にした。

「用件は簡単だ。 Re:RIZEProjectオーディションに参加して貰いたい。」
「………理由は。」
「元劇団員の職員が全力を尽くして教えてくれてはいるが、どうしても“何かが足りない"。 自足りない“何か"が分かっているのか、彼らからも「小塚新または大橋健人から助力を」と求められてしまった。」
「……大橋さんの方は。」
「断られた。 解散に至った責任のある自分がもう劇団RIZEに関わるべきでは無いし、劇団RIZEパフォーマンスをする資格は無いとね。」
「(責任に、資格は無いね………。)」
「勿論、断ってくれて構わない。 強制する権利はこちらには無い。 連絡を待つと言いながら、お願いをする以上は直接、私から話さなければ分からない事もあるだろう。」
「………なら、いくつか聞くが俺の指導が厳しいって事を承知の上での打診か?」
「ああ。」
「大橋さんが断わったのに俺が頷く訳も」
「お前が大橋健人が断わったからといって、前の権利者や運営幹部がした事はチャラにはならない。」
「!」
「私は断ってくれて構わないと言ったんだ。 全て承知の上で、それでも頼まれた以上はダメ元でもチャレンジしなければ、掴めるものも掴めない。」
「………なるほど。」

そう告げると、ソファー席の背もたれに寄りかかった。
概ねの事情は分かっているのだろう。
俺が舞台に立てなくなっている事も、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断を受けているという事も。

「………俺は、今でも最後の俳優代表のつもりだ。 求められるなら応えるのもやぶさかじゃない。」
「……?!」
「…………。」
「だが、どうしても理解出来ないんだよな。 どうしてオルティナに許可を出さない。 関わらせないのか。」
「……理由か。 簡単だ、お前も本当は理解をしていることだ。 彼等に資格は無い。 あれだけ小塚新を悪人に仕立て上げようとしているのならば尚更だ。 彼らは確かに元劇団員と呼べるだろう。だが、彼らとお前達では扱いが違う。 言わばコネで劇団員という立場を手に入れた彼等と、公表されていた手段に則って劇団員になったお前達。 基準に当て嵌めるならば、彼らは非正規劇団員と呼ばざるを得ない。そして、非正規劇団員に正規劇団員と同等の資格は無い。」
「………だったら、何故それを公表しない。」
「そろそろ発表されている頃のはずだ。 彼等は、未だに分かっていないようだからな。」

時計を見てそう告げた堂島さんの言葉を聞き、大悟が店のテレビを付けた。

『先程、株式会社リージョンミュージックから公表された文面によりますと、オルティナに対し劇団RIZEの作品及び楽曲使用について、弊社にも多くの問い合わせを頂いている事から権利者と合意の上で発表すると前置きした上で、「オルティナを含めた一部の元劇団員は、本来であれば書類選考などの手続きを経て合格した者だけが劇団員として入団出来るはずの手続きを大幅に割愛し、入団となっております。 この場合、オルティナを含めた一部の元劇団員は非正規劇団員として扱うのが規則になっております。 劇団RIZEの作品及び楽曲使用に関しては、非正規劇団員に使用を求める権利が無いと契約書にも記載されている事から使用許可を出す事は不可能であり、弊社からは一貫してその旨を所属事務所側に通告しており、許可を出す以前の問題である」としました。』
「「!!」」
「…………。」
『また、「また、弊社が確認している範囲で既に俳優代表であった小塚新より真嶋大和ら非正規劇団員に対し、「現状非正規劇団員という扱いなので改めて手続きをさせてくれるのであれば、正規劇団員という扱いにする事が出来るがどうか?」という提案が複数回なされたものの、彼等がいずれも拒否した事により非正規劇団員のまま退団されております。 同時に元正規劇団員達から非正規劇団員による小塚新個人に対する誹謗中傷行為等を理由に、彼等が非正規劇団員である事を公表するよう求める嘆願書も複数届いた事、権利者も非正規劇団員では無かったとしても、小塚新個人に対する誹謗中傷行為を理由に使用許可を出す事は出来ないとの意向である事も本公表に至った理由です」としました。』
「……!」
「小塚新を知る者も、小塚新を知らない多くの者達も、真嶋大和を筆頭にした非正規劇団員達も、小塚新が何故沈黙したのかも小塚新が劇団RIZEで何をしていたのかも理解していない。 知っている者は、大橋健人とごく一部の劇団RIZE関係者だけだからだが………もう良いだろう。 君は充分によくやった。 私としては、これ以上君に犠牲になって貰いたいとは思わない。」
「…………。」
「小野塚晃、君が小塚新として何も言わないのであれば現在の劇団RIZEの権利者として全てを公表する覚悟と意志がある。」
「………そんな事をして、何になる? 劇団RIZEのブランドに傷が付くだけだ。」
「劇団RIZEの名など、十年以上前に汚泥に落ちている。 それでも、小塚新は何度も引き上げようとし、結果として小塚新までもが汚泥に落とされた。 ならば、次は私が小塚新を引き上げようとしなければならない。 ………最もまだ、君に立ち上がる気があるのなら、だが。」
「………、……今の仕事の都合や諸般の事情もある。 考えさせてくれ。」

握っていた手を握り締めてから、なんとかそう絞り出した。
堂島さんはそれに頷き、改めて「決まったら連絡をしてくれ」と告げると帰っていった。

「………あんた、劇団RIZEで何をしたの?」
「大したことは何も。 ただの自己満足で足掻いてただけだよ。」
「………権利者のあの口振りじゃそんな訳無いわ。」
「らしいな。 俺にとっては本当にそうだったんだよ。 結局、全部無駄になったけどな。」
「…………。」

そう、無駄になった。
少なくとも俺の認識ではそうだった。
だが、どうやらそうでは無かったらしい。

「とりあえず……今は、帰ったら頭の中を整理してえかな………。」

そう告げる、天井を見上げると溜め息を吐いた。

[オルティナは劇団RIZEに入団する時に非正規手続きしてなかったったこと?]
[あの発表を見るにオルティナと一部の元劇団員なんかは、小塚新の提案突っぱねたから今後も劇団RIZEの楽曲や作品使えないってこと? え?]
[権利者が非正規劇団員じゃなかったとしても、小塚新に対する言動を理由に許可しないって言う辺り、もしかして小塚新って劇団RIZEでかなり重要人物だったのか……?]
[被害者有志のアカウントの投稿といい、劇団RIZEの権利者と管理元の発表といい、なんか小塚新重要視されすぎじゃね?]
[本当になんで小塚新は説明してくれないんだろうな………。]
[堂島雅信:本日発表した件(以下、本件)について補足を致します。 大前提として、権利者としてこのアーティストに使わせてあげてくださいと言ったご要望には沿いかねます。 それは、作品や楽曲の使用には一定の規則に則って判断しているからです。 本件に関しましては、対象アーティスト(またはタレント)が劇団RIZEの劇団員であったという前提の上、更に規則上の正規劇団員では無いという条件から使用許可対象外であった事は告知の通りです。]
[堂島雅信:劇団RIZEの元劇団員であるか非元劇団員であるかで、使用について基準が明確に異なるのは明言させて頂きます。 また、非元劇団員である場合の方が基準のハードルは低いですし、申請自体はどなたでも専用フォームから申請可能です。(ただし、使用許可を約束するものではありません)]
[堂島雅信:さて、ここからは私見を述べます。 劇団RIZEにおいて、「個人を敬えない者に作品を愛する資格無し」という言葉がございます。 創設者の言葉であり、歴代の権利者が重視すべき心構えとして伝わっているものです。 事実として、前任の権利者代理人及び総支配人は個人を蔑ろにし、作品に対する愛情も無かった。]
[堂島雅信:作品やコンテンツを自身の名声を高める為、あるいは、私利私欲の為に使った事が劇団RIZEを終わりに導いたというのが私の判断です。 あえて名指ししますが、青柳芸能事務所様及びオルティナの申請書からは愛が感じられず、私利私欲の為に劇団RIZEを利用しようとしているとしか思えないような文面であった事、小塚新に対する発言を鑑み、使用を求めるのであればせめて後者について改めて頂くようにとの旨も全ての回答に記載しておりました。]
[堂島雅信:しかしながら、改めて頂く事は無く、先月末に頂きました申請書に対する回答にて「申請対象者(オルティナ)が非正規劇団員である事、こちらの要求である発言の是正に応じて頂けない事から今後もご期待に添える事はありません。」と返答致しました。]
[堂島雅信:小塚新本人が沈黙しているから、活動していないから何を言っても良い。 所属事務所はそれを容認するというスタンスであるとこの数年でよく分かりました。 発言を改めたとしても、使用を認めることはもう無いでししょう。]
[堂島雅信:権利者による特定個人の優遇と言われるでしょうが、彼等と小塚新にはそれだけの差と違いがあります。(非正規劇団員と正規劇団員の違いではありません) 何故なのかはいずれ話すつもりですが、今ではありません。]
「………また荒れそうな事を。」

自宅に帰ってからSNSを見、そう呟くと溜め息を吐いた。
覚悟があると言っていたが、その言葉に嘘は無かったのだろう。
権利者でありながら一人を優遇していると見られてでも、個人の意見を投稿をしたのだから。

「晃。」
「んー?」
「……観てるって聞いたわよ、例のオーディション番組。 気になるんでしょ、色々と。 事実として、アンタが限界になってまで居ようとした所に、本音みたいなのがあるでしょ。 こっちは三人でも何とかなるわ。」
「……あの話を引き受けるべきだって言いたいのか?お前は。」
「引き受けて、再開すべきだって言いたいのよアタシは。 説明しろとまでは言わないけどね。」
「………俺は、そんなに犠牲になってるように見えるのか?」
「犠牲になってるように見えるかどうかは分からないけど、やってた時よりも遥かにつまらそうではあるわね。」
「………お前ですらそう見えるんなら、権利者にも痛々しく見えたから犠牲って言葉を使ったのかもな。」

病院にも行かず、疑心暗鬼になり、不信になり、限界に限界を重ねた結果、更に苦しむ羽目になって、もう昔の感覚に戻るのは困難だ。
だが、そんな風に……つまらなそうに見えるのが痛々しいと思うくらいには、今の生活は良くないように見えてしまっているのだろう。
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