壱の話

[小塚和馬:小塚新に関する週刊誌記事に記載された甥は俺です。 そして、俺は取材を受けた覚えも無ければ、父方の祖父母である親族を祖父母だと思っていませんし今後も思う事は無いです。そもそもトラブルを起こしているのは向こうです。]
[小塚和馬:叔父である小塚新は、養父でもあるので今回の週刊誌記事と親族に対しては親族の実名を出したいぐらいには腹が立っています。]
[小塚和馬:この週刊誌報道については既に叔父にお願いして、弁護士さんに対応して頂く事になっていますが、叔父について公表したのは俺の独断です。]
[小塚和馬:兼ねてから叔父については、親代わりで大好きだし尊敬していると言って来ているように、大好きな叔父であり養父なので、今後俺は叔父自身が望まない限り小塚新については言及しないです。 俺にとっては叔父であり養父≠小塚新なので、今後も叔父と呼び続けます。]
[小塚和馬:俺は役者をしていた事と芸名が小塚新だった事ぐらいしか知らないです、辞めた時点で小学生のガキだったんで活躍ぶりはマジでよく知らない。そんな叔父曰く「役者してた時のスタイルは維持してる」そうなんで、めちゃくちゃスタイル良い高身長イケメンだし、維持するくらいなんだからやりたいんだろうなとは思っているので、本当にもう一度活動するなら応援したい。]
[小塚和馬:親族のとにかく苦しめて手放せよう、または、こっちに来る様に仕向けようという魂胆は心底軽蔑する。 俺は叔父さんの養子が良いし、叔父さんの甥が良い。 来世もその先も、叔父さんの血縁が良い。]

我慢の限界、堪忍袋の緒が切れたらしい和馬がSNSで小塚新との関係を公表し、週刊誌の取材を受けていないと言った事で、週刊誌の編集部にまで火の粉が飛んだ。
SNSでは、親族の特定をしようという人達まで現れる事態になっていた。

「なんで勝手にやった。 弁護士に頼むから安易な行動はするなって、あれだけ言ったよな。」
「………ごめんなさい。」
「事実だろうが、なんだろうが、言ったらこっちが不利になる場合だってあるんだぞ。 お前が俺を思ってくれるのは有り難いが、せめて一言確認するとかあるだろうが。」

そう告げると大きな溜め息を吐き、腕を組んだ。

「………どういうつもりで公表した。 売名じゃないのも、俺を思っての事があるのは分かってる。 そんなに頭に来たか?」
「…………。」
「お前が怒ったってしょうがねえだろうが。」
「………し………。」
「あ? なんて? ちゃんとハッキリ喋ろ。」
「だって……オルティナのせいでずーっと叔父さんが馬鹿にされてんのに、叔父さんなんもしねえし。 病気になった原因が、あんなことだったって事も言わねえし……。」
「はッ! 言う事きかせる為の謂わば脅しの一種で、男から性暴力に遭ったって家族に言えってか? 死んだ親父にだってハッキリ言えなかったのに、未成年のお前ら相手になんて尚更言えるかよ。」
「! ……死んだ爺ちゃんも、知らないのかよ?」
「知らねえよ。 劇団でトラブルに巻き込まれて、そういうのでうんざりして、楽しめなくなって辞めたって事は知ってるけどな。」
「───。」
「………とにかく! 投稿するなら、親族を特定するような真似だけは辞めるように言う事! 分かったか?! 不利になったら、困るのはお前なんだからな!?」
「……分かった。」

反省したのかしょげた様子に軽く溜め息を吐くと、その頭を撫で回し、

「お前が思っている以上に、俺というか小塚新の事情は複雑なんだって事と俺は別にお前らを除け者にしたいって訳じゃない事だけは分かってくれよ。 大事だからこそ、家族だからこそ言えない。 ……教えてやれなくて悪かったな。」

そう告げてから和馬が居た部屋を離れ、そのまま階段を降りて行けば家主である大悟が顔を出した。

「晃。」
「………言わなかったのが余計に裏目に出た感じだな。 全く、面倒な………。」
「………話したの?」
「少なくとも、親父も知らないまま逝ったって事くらいはな。 流石に詳しくは言えねえよ。」
「そう……。」
「とにかく、一番は獅堂の件が片付く事だな。 そうすれば、ひとまずは一番の心配事が片付いて今よりは精神的に余裕が出来る。」
「それも重要だけど、和馬が心配してるのはアンタの事よ。 アンタがそうであるように、和馬も罪悪感に苛まれてるんだと思うわ。 自分達のせいでアンタは役者を辞めたんじゃないかって。」
「違うとは、何回も言ってる。 ただ、いくら理由を言っても納得しない。」
「………ま、そうよね……。 アンタ達ときたら揃いも揃って頑固だもの。」

そう言った大悟に溜め息を吐き、チラッと階段の上を確認した後、外に近いキッチンの方を指し、和馬が居る部屋から離れた場所に移動した。

「ただでさえ、自分達のせいでって思ってるアイツらに、長い間辞めたいとは思ってたが辞める決心が付かなくて、姉貴達が死んだからなんて言ってみろ。 それこそ終わりだ。」
「それは………。」
「今の俺にとって大事なのは小塚新の評判でも何でもない。 兄貴でさえ生前解決出来ないまま死んだ獅堂連中を、俺が元気で、まだ金銭的に余力があるうちに解決出来るかどうかだ。 小塚新云々の事なんて本当にどうだっていいんだよ。」
「…………。」
「蔑ろにしてる様に聞こえるだろうが、実際問題を考慮したって今の俺に小塚新として活動出来るような精神的な要素は無い。 パフォーマンスが満足に出来るとは到底」
「なら、体型を維持する必要があった? 健康の為なら、別に維持する必要なんて無いでしょ?」
「………それ、は……。」
「ねえ、晃。 アタシは二人より事情を知ってるけど、二人はよく知らないのよ? 二人が分かってる事は、アンタが現役時代の体型を維持してるくらいには思い入れがあるって事と、病気や獅堂の事もあるだろうけど何故か自分から小塚新として世間に発信しようとしないって事だけよ。」
「…………。」
「………アンタが小塚新として世間に発信していれば、少なくとも和馬は今回の行動を起こさなかったとアタシは思うわ。 和馬は特に、小塚新というアンタに興味があるみたいだったし、小野塚家を継ぐ気満々なくらいにはアンタの事が昔っから大好きなんだから、アンタの為なら行動しちゃうわよ。」
「…………。」
「小塚新として世間に発信しない事が、本当に翔真と和馬にとって良い事なのか、もう一度考えるべきよ。」
「………言えってか。 小塚新として、何があったのか。」
「最高なのはそうね。 だけど、ある程度権利者が明らかにしてるし、アンタにも守秘義務とかあるでしょ? だから、最低限、最近の事……ここ二〜三年の話くらいはした方が良いと思うわ。」
「………、……分かった。 お前までそう言うんなら、考えておく。」
「怖い?」
「………分かってんなら聞くな。」

そう告げると何度目かの溜め息を吐いて、外を見やった。
すると、近くの公園でヒーローごっこ遊びをする子供が数人見えた。

「………楽しそうだな。」
「? ……ああ、近所の子達ね。 よくやってるわよ、アレ。 昔のアンタだって、なりきるの楽しそうだったわよ。」
「……確かに、楽しい時期はあったな。 色んな役をやらせて貰って、観に来た客まで嬉しそうに、楽しそうに帰って行くのを見た度に、やって良かったって努力が報われた気がしてたな。」
「………過去形なのね、本当に。」
「ああ、過去形だ。 いつからか、何にも感じなくなった。 あんなに嬉しかったはずの客の様子を見るのも、舞台に立って役を演じるのもな。 ………そうして気が付いたら、練習の仕方も舞台での息の仕方も分かんなくなっちまった。」
「!」
「………大悟、本業は楽しいか?」
「……ええ。 嫌になる事もたまにあるけど、楽しいわ。」
「そうか。 俺は、羨ましいとも思えなくなった。 楽しいって何かどうかも、見失っちまった。」
「───。」
「………本当に苦しいを我慢し過ぎたな、俺は。」
「………晃、アンタ………。」
「…………。」
「見失うのなんて、気が付いちまったら一瞬だ。 取り戻したいともがけばもがく程、ドツボにはまって、そっから悪循環だ。 そうして、二度目に気が付いた時にはもう手遅れってな。」

フッと笑って告げると、大悟は言葉を失っていたし、部屋から出て来て降りてきたらしい和馬も何も言わなかった。

「………小塚新本人が見失ってんじゃ、世話ねえってな。」
「…………。」
「………っ……。」
「んじゃ、帰るわ。 翔真もそろそろ帰って来る時間だしな。」
「! っえ?! 食べていかないわけ!?」
「俺だって飯は作って来てんだよ。」

太腿を叩いてから告げ、そう言いながら玄関に向かえば慌ただしく大悟が追いかけて来た。

「ち、ちょっと、晃! なによさっきのは!?」
「ん? ああ、あんまり深く考えんな。 感傷に浸ったっつうか、過去を懐かしんだだけだからよ。」
「は……はあッ?! そんな軽いもんな訳が…………!」
「だぁから、深く考えんなって。 ……うっわ、酷え顔。」
「…………。」
「もうしばらく和馬が世話んなるが、礼は改めてで。」
「………ツケでも良いわよ、活動次第の。」
「調子乗んなよ? んじゃ、またな大悟。 和馬!あんまり大悟に迷惑掛けんなよ!」
「………分かってるよ……。」

不満そうな大悟と和馬の声に苦笑いをし、別れを告げると大悟の家を出て、停めていたバイクに跨ってエンジンをかけ、ヘルメットを被ると大悟の家を後にした。

[小塚新:週刊誌報道に関しましては、既に担当していただいている弁護士様に対応をお願いしております。 内容につきましては、親族とトラブルになっている事実はございますと述べるに留めさせて頂きます。]
[小塚新:また、甥で養子である小塚和馬本人が私に無断で公表した事については、先程理由等を聞いた上で叱って参りました。 小塚和馬は紛れもなく、私の甥であり養子です。 今後も私自身が和馬の配信等に出演する事はございません。少なくとも、小塚新として出る事は絶対にありません。]
[小塚新:叔父として養父として、チャンネル及びSNSアカウント、活動内容を把握するに留め、常に監視や視聴している訳では無いので、基本的には和馬の意思かつ自由にさせていますのでせいぜいゲームプレイヤーとして駆り出される事はあっても、演者側に小塚新として出る事は無いです。 ただし、案件を頂いた際など最低限保護者として俺に確認すべき要項は定めており、小塚新との関係の公表も確認すべき要項に含まれておりましたが、あの通りです。(弁護士と話し合いを済ませたら勝手に公表していてこのクソガキどうしてやろうかと思った)]
[小塚新:ひとまず、和馬本人は反省していたのでこれ以上この件で叱る事はありませんが、だいたい見ている時にはチャンネル名でコメントをしているので、居ない時に何か和馬がやらかした場合にはこちらのアカウントにご一報下さい。確認した上で必要な対応を取ります。 ご協力よろしくお願い致します。]
[小塚新:精神的な要因もありますが、契約上言えないという制約もありますので、現役時代(劇団絡みの事案)については基本的に現在の権利者にご確認下さい。 大体の事は権利者が回答するはずです。(むしろそっちに割く余裕が無いんで、把握してるだろう権利者にして欲しい。)]
[小塚新:先日権利者から公表されたように、俺は過去の事案を理由に心的外傷後ストレス障害を発症し、有志を名乗るアカウントで指摘されたのでお気付きになられた方も居るでしょうが………現在においても、ステージや舞台に上がる事は出来ません。むしろ、パフォーマンスをする事自体が難しいかもしれません。]
[小塚新:俳優代表という肩書きは非常に重く、重要な立場です。 それに加えての、過去の事案や当時の状況は俺にとっては不必要に消耗させられ、必要以上に削れていく一方でした。 そうして、その事に気が付いた時、今まで自分はどうやって練習に打ち込んでいたのか、パフォーマンスしていたのか、一切分からなくなりました。 いつの間にか、「自分が楽しい」ではなく「誰かの楽しいのため」で、「全ての活動は義務だ」に変わっていたのです。 マズい、と、おかしい、と気が付いた時には手遅れになっていました。]
[小塚新:非常に、本当に心苦しい限りではありますが、他ならぬ俺自身が小塚新という自分の在り方を見失い、今も見つかっていません。 活動はしたい。でも、どうすれば良いのか、今の俺には分かりません。]
[小塚新:楽しそうだなーとは思いますが、もう羨ましいと思う気持ちさえありません。 もうどのタイミングで失ったか分かっているので、過去の映像等に許可を出せない。出したくない。残念ながら、今の俺には苦痛になってしまうので。 あの頃は良かった、楽しかった。ただ、俺はそんな感傷に浸りたい訳じゃない。]
[小塚新:かつての小塚新はもう死にました。そう表現するしかありません。 変わらない部分は間違いなくありますが、変わった部分を自分が一番受け止めきれないまま、様々な事情で未だにもう一人の自分である小塚新に対して整理を付ける余裕がありません。 本当に、すみません。]
[小塚新:言うべき事、言いたい事は沢山あります。 でも、病気が要因だったり、個人的なプライドの都合上言えなかったりして、甥ですら知らない事が沢山あります。 分かってくれとは言いません。 ただ、覚えておいて下さい。]
[小塚新:小塚新を殺したのは、当時の劇団RIZEであり、運営関係者であり、俺自身です。 現在対応中の事案の解消を前提に俺自身が小塚新を殺した事を許さない限り、光明を見出さない限り、小塚新として活動する事はありません。]

作った小塚新のSNSアカウントで一通り投稿し終えると、携帯を布団の上に放り、深呼吸をした。
たったこれだけの事で、身体が強張って、息が少し苦しいのだから、活動出来る自信が無かった。

「叔父さん、聞きたい事があるんだけど………。」
「…………。」
「叔父さん? どうしたの……?」

たまたま部屋に来た翔真が、深呼吸を繰り返す俺に心配そうに近付きながらそう言い、俺が過呼吸気味なのだと気付いた事で更に続けようとした為片手で制して黙らせた。
落ち着いてから手を下ろすと、改めて翔真に向き直った。

「………もし、小塚新っていうSNSアカウントの事なら俺本人だ。 まあ、説明しなきゃならない過程で軽い過呼吸を起こしちまったが。」
「!」
「大丈夫だ。 見たんなら、それで良い。 悪いが、改めて聞かれても口じゃ答えられない。 口で言おうもんなら、発作は避けられない。 発作を起こすと、今みたいにお前らが心配するしな。」
「…………。」
「……ごめんな、こんな叔父で。 俺ももう付き合いが長くなってるし、多少は強くなってると思ってたんだがな。」

俺がそう言うと翔真は唇を噛み締め、今にも泣き出しそうな顔で俺にしがみついて来た。
それに苦笑いをすると、黙って翔真の背中を擦った。

[死んだって表現するほど小塚新、精神?状態悪いんか………。]
[劇団員時代の小塚新ってマジで「これが生き甲斐!」みたいなとこあったから、それ失くすってだいぶ悪かったんだな……。]
[小塚新の投稿見たけど、キッツイ……。 過去の自分とは別人っつうか、もう出来ないって自覚あるのがまた余計にキツイんだろうな………。]
[これ、まだ爆弾というか残弾有りげなのが闇を感じるんだよな。 青柳芸能ってかオルティナともまだなんかあるだろ、小塚新。]
[誰ですか小塚新が諸悪の根源みたいに言ったのは!?諸悪の根源どころか一番闇抱えてる象徴じゃねえか、これ!!]
[小塚新:体調面心配されてるっぽいから言うんだが、基本的には日常生活を送る上ではもう影響は無い。 ただ、今回みたいにちょっと、過去の事に触れると過呼吸気味になったり、記憶のフラッシュバックやらなんやらかんやらあるよ、ってだけで健康体だ。 一番ヤバいのは舞台に上がること、近付くだけだ。 だからまあ、無縁の生活をしている分には大丈夫だ。]
[小塚新:とりあえずなんだが、俺がこうしてアカウント作って言える範囲内で色々言ってる事は前向きに受け取って欲しい。 劇場が解体される時のメッセージ書くのも、正直結構キツかったんでね。 手が震えて震えて。 だからちょっとブレてんだよな、字が。]
[小塚新:サイン自体はこのようにまだ書けるんだが、やっぱり多少は手が震えちまうんだよ。 昔のと違ったらどうしようって怖くてしょうがない。 こればっかりは自分で受け入れていくというか、慣れていくしかなくて、いっそ変えた方が良い気もしてる。 まあ、活動するって決めたらだな。(サインの写真)]
[小塚新:あとは、出来れば甥の配信やアカウントに俺のことを書くのは辞めて欲しい。 和馬は和馬、俺は俺。 和馬にとってのプレッシャーになっても嬉しくないし、嫌だからな。 だから言うなって言ってあったんだけどな、結果はあのザマだ。]
[小塚新:今の俺にとって一番大事なのは、二人の甥とその将来だ。 トラブルになってる親族については、十数年とトラブルになってる以上、二人の甥はあの親族を頼るべきでは無いと俺は思っている。 だから、生きている間、かつ、まだ俺自身や金銭的に余裕がある内に解決出来るならしておきたい。 死んだ姉夫婦の墓前で誓った事だ、小塚新としての活動やらなんやらは二の次三の次で良い。 俺にとっては、もう血縁関係があるのは甥の二人だけだからな。]
[小塚新:それから、Re:RIZEProjectは観てる。 気になるヤツは何人か居るが、あえて言及はしないでおく。不公平だしな。 強いていうなら、誰がデビューしようと新しい劇団RIZEっていうテーマで、どんなパフォーマンスをするのか興味があるし楽しみではある。 ]
[小塚新:さて、寝るか。 おやすみ。]
「………とは投稿したものの、寝れっかな……。」

そう呟いてから頭を搔き、溜め息を吐いてからベッドから降りてキッチンへ向かうとウォーターサーバーの水をコップに注ぎ、一杯飲んでから部屋に戻り、ベッドに入ると携帯が通知音を鳴らした。

「…………。」

携帯を手に取り、通知を確認すると目を伏せ、溜め息を吐いてから携帯の通知を切ってから横たわり、目を閉じた。

[週刊芸能特盛!最前線編集部:10月5日に発行⚫掲載致しました小塚新さんに関する記事につきまして、小塚新さんの代理人弁護士からの一報を受け、編集部で調査を行ったところ記者が買収され、捏造記事を執筆する等の重大な契約違反が発覚いたしました。]
[週刊芸能特盛!最前線編集部:掲載した記事の差し止めを小塚新さんの代理人弁護士からご連絡を受けた時点で行なっておりましたが、小塚新さんからの求めに応じ、このまま記事は掲載を終了とし、店頭在庫分は回収し、謝罪文を掲載の上で適切な記事に差し替えたものを改めて発行する事と致しました。]
[週刊芸能特盛!最前線編集部:小塚新さん、また、小塚新さんのご家族には心よりお詫び致します。 編集部の管理不足、事実確認の不手際等により虚偽記事によってご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。]
[週刊芸能特盛!最前線編集部:また、当該記者は契約違反により解雇、週刊誌の新規発行は当面の間自粛し、管理体制を強化し、再発防止に務めます。 この度は、申し訳ありませんでした。]
[小塚新:本日、弁護士を通じて週刊誌の出版社からご連絡を受けました。 こちらが求めた記事の公開差し止めと謝罪文の掲載に応じるとの事です。 この件につきましては本お知らせを持ちまして対応を終了と致します。]
[小塚新:なお、親族側に関しましては先方の代理人弁護士も週刊誌報道で親族の行動を把握された、という事のみ確認が取れております。(先方の代理人弁護士からはこの件の公表については了承済みです)]
[小塚和馬:週刊誌報道は解決しました。 詳しくは、叔父である小塚新のアカウントの投稿を確認して下さい。]
「はー……。 後は、本当に獅堂だけだな………。」

二週間ほど経ち、週刊誌の件が片付いた事を告知する和馬のSNSの投稿を見てそう言うと、SNSを閉じ、返事の無い翔真とのメッセージ履歴を確認した。
既読は付いているにも関わらず返事が無い事に溜め息を吐き、しばらく指先でテーブルを叩きながら思案を巡らせてからパソコンでしていた作業を再開させた。

「叔父さん。」
「ん〜?」
「………今、大丈夫?」
「ながらでも良いなら大丈夫だぞ。 どうした。」
「………獅堂のじいちゃんばあちゃんの事、なんだけど………。」

パソコンで家計簿作業をしているとやって来た翔真がそう言った。
思わず作業の手を止め、保存をすると翔真に椅子ごと向き直り、腕を組んだ。

「……仮に僕が向こうに行っても、治らないんだよね?獅堂のじいちゃんばあちゃんの、あの言動。」
「お前がどちらを選んだとしても、治らないどころか悪化させる可能性の方が高い。」
「…………。」
「週刊誌に書かせるために小塚新の名を出され、和馬がキレたのもあって、流石に説明せざるを得ないからSNSに小塚新アカウントを作った事で昔の知り合いが連絡を寄越してる。 いずれも俺を心配しているし、トラブルになってる親族に心当たりがあるってしっかり獅堂の名前を出してまで怒ってるような奴は一人や二人じゃない。 今は保留してるが、小塚新として活動を再開する為に契約する必要が現実味を帯びて来てる。」
「…………。」
「俺はお前らの意志を尊重したい。 どうする?翔真。」

そう告げると、翔真は泣き出してしまった。
しかし、泣きながら「許されるなら今まで通りが良い」と言ったので、「分かった」とだけ返して泣き疲れて眠るまで宥めつつ、その背中を撫でた。
翔真にとっても、かなり苦しい決断だっただろう事はその姿を見れば明らかだった。
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