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*ゾロさんがなんだかんだサンジさんを信用信頼しているお話

*ゾロさんがなんだかんだサンジさんを信用信頼しているお話

「ぐがー」

メリー号の見張り台でいびきをかきながら昼寝をしている剣士。今日の船番は狙撃手、剣士、料理人の3人だ。船医、航海士、考古学者、船長は島に出て買い物なり情報収集なりを楽しんでいるらしい。だからか、料理人もふててキッチンにいるらしいし、狙撃手も発明に奔走しているから実に船は静かだった。

「ぞ、ゾロー!」

だがそこに声をひっくり返しながら狙撃手が飛び込んできた。あ?と剣士が声を翻すも、その表情は真剣に変わる。狙撃手の顔が、今にも泣きそうで大慌てしていたからだ。

「どうした」

「サンジがねづだじだぁ」

「あァ?!」

思わず翻した声を出す。でもはやく来てくれ、とぐいと慌てたように腕を引かれたものだから、それを宥めるように従ってやる。

「ほら」

キッチンにつくと、料理人はテーブルに伏せ込んでいた。ただ寝ているだけでは、と思ったが状況は違ったようだ。吐き出す息がふうふうと荒く、金髪の下から見えている顔はあからさまに赤い。慌ててかけた狙撃手の毛布が、揺れている。

「なぁ、ゾロ運んでぐれよ、たのむよぉ、おでじゃ力がだりねぇんだよぉ……」

「どこに運ぶんだ」

「え」

狙撃手はぐすりと涙をぬぐいながら顔をあげた。剣士は軽々と料理人を肩に抱え上げる。

「こいつに死なれたら寝覚めわりぃだろうが」

「ぞ、ゾロぉ」

「はやく運ぶ場所をいえ」

普段仲が悪いから断られるかもしれないと一抹思っていたらしい。そんな顔をした狙撃手の頭をぐしゃりとしてやってから、肩に抱えた彼を導かれるままに男部屋へと運んでいくのだった。

ーーーー

「おきねーな……」

「チョッパーは」

「もうすぐ帰ってくるはずだ」

料理人を剣士が抱えている間に床に布団を敷いて、そこに寝かせた狙撃手。熱を出したことはないが幼馴染みの看護経験に従い厚い氷のうを手早く作ってやり、分厚い布団を肩までかけてやったのだった。けれど彼の顔色はなかなかよくならない。ついつい心配を露にしてしまう。

「ほんと助かったよ、ゾロ」

「別に、運んだだけだろ。それよりこいつはなんで熱出したんだ」

「わかんねぇけど、大分前から我慢してたんだろうな……辛そうだし」

魘されるように布団の中で転がる彼を宥めてやりながら、狙撃手は寂しそうにいう。

「言ってくれりゃ、いいのに」

「迷惑かけると思ったんだろ、このアホは」

剣士は苦々しそうに言った。狙撃手は、はっと顔を上げる。

「それに、あいつらが買い物にいくのを止めたくねぇ筈だ」

「そうか、拗ねてたのはフリだったんだな……」

わかりづらい真似を、と剣士は呆れた。結局仲間ばかりを気遣って自分を気遣わない。面倒な野郎だと言わんばかり。

「……ゾロはサンジのことわかってるんだな」

「あ???」

狙撃手がポツリと言った言葉に何でそうなるとがなるように声を翻す。だが、彼の顔は本心で、どこかしょんぼりとしていたから、やりづらそうに頭をかいた。

「なんでそんなこと言うんだ」

「だってよぉ、おで、気づいてやれなかったから」

「……そりゃ、お前がこいつを信頼してるからだろ」

剣士がポリポリと頭をかきながら言うと、狙撃手はへ?と声を翻す。

「何かあったら言ってくるって、ちゃんと思ってたからだろ」

「う、うん」

「だったら、アホなのはこいつだ。お前がうじうじする必要はねぇ」

どかり、と椅子に座りきっぱりと言い放つ。彼なりの考えを、通していく。

「それでも気にするなら、教えてやれ」

「教える?」

「もっと頼れとかどうとかだ。それがわからねぇほど、アホじゃねぇだろ」

剣士はぽりぼりと頭をかきながらそう呻いた。狙撃手は、顔を明るくする。

「そ、そうだな!そうする!」

「そうしろ」

「ゾロは本当にサンジのことわかってるな」

「……それは余計だ」

ちゃんと信頼しているのは、剣士の方もではないか。狙撃手はぶすっと膨れっ面の剣士を見てくつくつと笑うと、料理人に伝える言葉を頭のなかで練り始めるのだった。

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