*サンジが少しヘマして足を怪我するが、そんな時に限ってクルー達からの手伝いを頼まれる
*サンジが少しヘマして足を怪我するが、そんな時に限ってクルー達からの手伝いを頼まれる
「すいません、本当に、うちの子が」
「あぁ、いいよ。たいしたことねぇし、避けられなかったおれのヘマだから」
「ごめんなざい、おにいぢゃん」
「おれのヘマだっつってんだろ」
ひょこり、ひょこり。料理人は足を引きずりながらも、ひたすらひたすら頭を下げてくる女性とちびっこにため息をついた。
状況は単純だ。足が長い料理人は、目の前に小さな子供が入ってくるのがなかなかわからない。だから、潜り込まれてはっとして退いた途端、びっくりした子供にハンマーを足首に叩き落とされて怪我をすることだって、あり得ると言えばありえるのだ。ただ、偶然すぎてあまりについていない状況だけれども。
「折れてねぇし、平気だよ」
そして、この男は、かなり痛みに強かった。ハンマーが落ちようと、ただ捻っただけですんだという。どれだけ強靭な骨を持っているのだろう。
「おれ以外にはすんなよ、殺されちまうからな」
まだ謝罪をこぼそうとする母子を説き伏せて、料理人は手を振りながらサニー号へと戻っていく。対したことのない怪我だ。捻っただけなど。ならば米二袋抱えて帰ることも、荷物をたくさん持つことも、容易いことなのだ。時折ずきずき足が痛む気もするが、軽傷なのでかまっていられない。早く船に帰り、食事の支度をせねば。彼はいつも通りの速度で船へと戻っていった。
ーーーー
「ただい」
「サンジ君!ちょっと手伝って!」
「え、あ、はい!なみひゃん!」
帰るやいなや、航海士が声をかけてきたので、料理人はキッチンに食材を置いてから慌てて向かう。
「夜には嵐が来そうだからみかんのシートかけるの手伝ってほしいの!片方もって」
「はぁい!」
料理人はひょこひょこ足を引きずりながら航海士の方に向かう。航海士はん?と首をかしげた。
「サンジ君、ケガしたの?」
「ん?」
料理人は端っこをつかみながらシートを揺らした。航海士はゆっくりとシートをおろして、固定する。
「足ヒョコヒョコしてるけど」
「あぁ、これ?大したことないから。はい、できたよー!!」
いつの間にか固定されていたシート。いつもより断然素早く正確だ。そして、終わったあとはまた足をひょこひょこしながらどこかにいってしまう。
「あ、ちょっとサンジくーー」
「アウ、サンジ!ちょっとこっち見てくれ」
船大工が呼んでいるので、そちらの方に向かう。ひょこり、ひょこり。足を引きずりながら。航海士はわたわたとシートを片付けてから、それを追いかけた。
「サンジ君!」
「アウ、どうしたナミ」
「フランキー、お前なぁ」
「んだよ、これだって立派な手伝いだろォ?座り心地をチェックするんだから。ほら、動くなよ」
料理人はむすっと不服そうな顔をした。椅子に座らされた彼。肘掛けつきの、新しい甲板用の椅子。そして、ついでのようにゆっくりと足元が捲られれば、捻って赤く腫れた足元が露になっていた。
「ちょっと、大したことなくないじゃない!」
「だって、ナミさん。折れてないんだよ?ふぎ」
「こんなときだけ減らず口を言うのはこの口かしら」
「ふべべ」
料理人の頬をつねり、ぐりぐりと引っ張る。船大工はそれをあきれた顔で見ながら辺りを見渡した。
「まだチョッパーは帰ってきてねぇんだよなァ」
「私が診てあげるわよ、1000ベリー」
「いいでふ、いたくないでふ」
「なんでこんなときだけメロリンしないのまったく」
航海士はこんなときだけ強情な料理人にあきれていた。頬をつねったままむすっとふくれる。
「まさかおめぇこの期に及んでその足で飯つくろうって腹じゃねぇだろうな」
「たりめぇだ、海パン野郎、大したことねぇんだから、わっ」
「まぁ、そうくるとおもったぜぇ」
想定通りの考えに呆れながら、船大工は料理人を椅子から抱えあげた。何すんだ、放せ、とじたばた暴れているが、いつもより足の方はずっとおとなしい。
「まだウソップもいねぇし、今日はおれが飯の手伝いしてやらぁ」
「あ?」
「さっきの手伝いの礼だ。義理は通させろ」
そう言われると弱い料理人はうっと黙った。航海士はなるほど、と納得した。
「じゃあサンジ君は私に減らず口いった詫びに、足治させてね」
「んなっ」
「義理は、通させてもらうわ。だから無料ね」
料理人はぽりぽりと頭をかいた。そうくると、やっぱり弱い。
「わ、わかりました」
「じゃあまず治療ね」
「そのあとでキッチンだ、今日のメニューは?シェフ」
航海士と船大工がさらりと呻いてくる。料理人は降参とばかりに、船大工の腕の中で手をあげるのだった。
「……目玉焼き、チーズ、ベーコンとレタスにジューシーなパテを挟んだハンバーガーと、絞りたてオレンジジュース」
「あらそれって」
「すぅーぱーだな!」
<end>
「すいません、本当に、うちの子が」
「あぁ、いいよ。たいしたことねぇし、避けられなかったおれのヘマだから」
「ごめんなざい、おにいぢゃん」
「おれのヘマだっつってんだろ」
ひょこり、ひょこり。料理人は足を引きずりながらも、ひたすらひたすら頭を下げてくる女性とちびっこにため息をついた。
状況は単純だ。足が長い料理人は、目の前に小さな子供が入ってくるのがなかなかわからない。だから、潜り込まれてはっとして退いた途端、びっくりした子供にハンマーを足首に叩き落とされて怪我をすることだって、あり得ると言えばありえるのだ。ただ、偶然すぎてあまりについていない状況だけれども。
「折れてねぇし、平気だよ」
そして、この男は、かなり痛みに強かった。ハンマーが落ちようと、ただ捻っただけですんだという。どれだけ強靭な骨を持っているのだろう。
「おれ以外にはすんなよ、殺されちまうからな」
まだ謝罪をこぼそうとする母子を説き伏せて、料理人は手を振りながらサニー号へと戻っていく。対したことのない怪我だ。捻っただけなど。ならば米二袋抱えて帰ることも、荷物をたくさん持つことも、容易いことなのだ。時折ずきずき足が痛む気もするが、軽傷なのでかまっていられない。早く船に帰り、食事の支度をせねば。彼はいつも通りの速度で船へと戻っていった。
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「ただい」
「サンジ君!ちょっと手伝って!」
「え、あ、はい!なみひゃん!」
帰るやいなや、航海士が声をかけてきたので、料理人はキッチンに食材を置いてから慌てて向かう。
「夜には嵐が来そうだからみかんのシートかけるの手伝ってほしいの!片方もって」
「はぁい!」
料理人はひょこひょこ足を引きずりながら航海士の方に向かう。航海士はん?と首をかしげた。
「サンジ君、ケガしたの?」
「ん?」
料理人は端っこをつかみながらシートを揺らした。航海士はゆっくりとシートをおろして、固定する。
「足ヒョコヒョコしてるけど」
「あぁ、これ?大したことないから。はい、できたよー!!」
いつの間にか固定されていたシート。いつもより断然素早く正確だ。そして、終わったあとはまた足をひょこひょこしながらどこかにいってしまう。
「あ、ちょっとサンジくーー」
「アウ、サンジ!ちょっとこっち見てくれ」
船大工が呼んでいるので、そちらの方に向かう。ひょこり、ひょこり。足を引きずりながら。航海士はわたわたとシートを片付けてから、それを追いかけた。
「サンジ君!」
「アウ、どうしたナミ」
「フランキー、お前なぁ」
「んだよ、これだって立派な手伝いだろォ?座り心地をチェックするんだから。ほら、動くなよ」
料理人はむすっと不服そうな顔をした。椅子に座らされた彼。肘掛けつきの、新しい甲板用の椅子。そして、ついでのようにゆっくりと足元が捲られれば、捻って赤く腫れた足元が露になっていた。
「ちょっと、大したことなくないじゃない!」
「だって、ナミさん。折れてないんだよ?ふぎ」
「こんなときだけ減らず口を言うのはこの口かしら」
「ふべべ」
料理人の頬をつねり、ぐりぐりと引っ張る。船大工はそれをあきれた顔で見ながら辺りを見渡した。
「まだチョッパーは帰ってきてねぇんだよなァ」
「私が診てあげるわよ、1000ベリー」
「いいでふ、いたくないでふ」
「なんでこんなときだけメロリンしないのまったく」
航海士はこんなときだけ強情な料理人にあきれていた。頬をつねったままむすっとふくれる。
「まさかおめぇこの期に及んでその足で飯つくろうって腹じゃねぇだろうな」
「たりめぇだ、海パン野郎、大したことねぇんだから、わっ」
「まぁ、そうくるとおもったぜぇ」
想定通りの考えに呆れながら、船大工は料理人を椅子から抱えあげた。何すんだ、放せ、とじたばた暴れているが、いつもより足の方はずっとおとなしい。
「まだウソップもいねぇし、今日はおれが飯の手伝いしてやらぁ」
「あ?」
「さっきの手伝いの礼だ。義理は通させろ」
そう言われると弱い料理人はうっと黙った。航海士はなるほど、と納得した。
「じゃあサンジ君は私に減らず口いった詫びに、足治させてね」
「んなっ」
「義理は、通させてもらうわ。だから無料ね」
料理人はぽりぽりと頭をかいた。そうくると、やっぱり弱い。
「わ、わかりました」
「じゃあまず治療ね」
「そのあとでキッチンだ、今日のメニューは?シェフ」
航海士と船大工がさらりと呻いてくる。料理人は降参とばかりに、船大工の腕の中で手をあげるのだった。
「……目玉焼き、チーズ、ベーコンとレタスにジューシーなパテを挟んだハンバーガーと、絞りたてオレンジジュース」
「あらそれって」
「すぅーぱーだな!」
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