*サ奪還後疲労困憊にも関わらず、何でもかんでも家事をこなし倒れてしまうお話。
*サ奪還後疲労困憊にも関わらず、何でもかんでも家事をこなし倒れてしまうお話。
ふかふかのベッド。同じふかふかでも、大嫌いな城のベッドとは違って、優しくて、暖かい。いや、城のベッドには一瞬たりとも寝ていないけれども。一睡もせずに、いや、できずに動き続けていたから。
それは、船に戻っても同じだった。こちらは自ら進んで行った。多少なり爆発したキッチンは掃除しなければならなかったし、食材のチェックも大変だった。風呂掃除もして、甲板も掃除して、自分の洗濯だってきちんと確認して、仲間が手伝う前にいつも通りこなして、それから、どうなったのだろうか。あとの記憶はなかったーー
「ん」
ゆっくりと瞳を開けて、気づく。保健室のベッドに横たわっていた。体が気だるくて、頭が靄がかかったみたいにふわふわして、体中には、包帯が巻いてあった。油断すればまだとろりと瞼が落ちる程度には、眠い。
「サンジ」
すると布団の上にひょいと乗っかって、ズイッと迫った顔。思わず瞬きした。船長だ。びよんと伸ばした片手はキッチン側の扉を塞ぎ、もう片方の手は逃げられないように布団をきゅっと塞いでいる。ばんばんがんがん扉が喚いているのはきっと船医たちが入りたがっているのだろう。けれど、
「……もう片側から、入られるんじゃねぇか?それ」
「あ」
穏やかなツッコミのあとで、バタバタと忙しい音がした。あちら側の扉に回ったのだろう。船長はむっとした。今度は逆の扉に手を伸ばして塞ぎながら、口を開いた。
「ごまかすなサンジ!どーゆーことだ!寝てねえって!」
「……そりゃそうさ。寝る間なんてなかったんだから」
「あったろ!帰ってきてから!いっぱい!」
バタバタバンバンとまた世話しなく戸の外で音がした。だが、音楽家がこそこそと何か言ったらしい。しん、と扉が静かになる。
「バカ。キッチンあのままにしておけるか。爆発したのお前だろ」
「そーだし、それはごめん!だけど、それなら手伝えっていえよ!疲れたままやるな!」
「ルフィ」
静かに料理人は彼の言葉を制した。どんどん、バンバンがなくなったから、なおさら静かに感じるほど。
「おれはお前を怪我させたにあきたらず、ナミさんに許されないくらいの恐怖を与えて、他のやつらにでかい迷惑かけたんだ」
「……」
「そしたら、償いが必要じゃねぇのか」
「サンジのそれは償いじゃねぇ」
船長はきっぱりと返した。料理人は困った顔をする。また体調がよくないのか、それとも眠いのか、だんだん頭が回らなくなってきたようだ。
「じゃあ、どうしたらいい」
「そんなの、簡単だろ」
きっぱりと、彼の困惑した瞳を見て、船長はいい放つ。
「サンジがーー」
「元気で」
「ちゃんと」
「私たちを頼ること!」
「だよ!」
ぎゃーぎゃーばたばたといって扉が開き、残りの仲間たちとキャロットが入ってきた。船長はバチンと手を戻す。
「なんでもう入ってくるんだ!」
「あんたばっかりずるいのよ!」
「私だってサンジさんを看病したいんですー!!」
「第一なんで塞いだんだ!サンジは寝てなきゃダメなんだぞー!」
「ダメなんだぞー!」
ぎゃーぎゃー、がやがやと騒がしいの大合唱が始まって、料理人は瞬きした。ずるいとずるくない、ダメだ、ダメじゃないの繰り返し。いつもの賑やかさ。料理人の顔が、ふっと緩んだ。
「だっておれがキッチン爆破したんだから謝らねぇとだし船長のおれが怒らなきゃダメだろ!そのあとでみんなに」
「それじゃ遅いの!」
「遅いの!」
「とりあえずここから降りて!」
「いやだ!サンジの目見て言うんだ!」
船長はふぎぎぎと言いながら暴れつつ人型船医に抱っこされてベッドから下ろされる。そして、まだ言葉を付け足そうとしたが、
「それは今は無理そうですね」
「え?」
音楽家の一言に、瞬きする。すう、すうと響く寝息。
「寝ちゃいましたから」
音楽家がそっと優しく布団をかけ直す。航海士と船長は向かい合ったまま瞬きした。
「当たり前だろ!!寝てねぇんだから!もう!」
「じゃあわたしもサンジと寝よー!えーい」
「あー!ダメだぞキャロット!おれが寝て起きたらすぐ気づくようにするんだ!」
「それは私がやるわ、あんたは退場!」
「わぁぁ、乱暴すんなー!」
相変わらず賑やかしい中で、すうすうと寝息をたてる料理人。その表情は、先程よりずっと柔らかかったという。
<end>
[newpage]
ふかふかのベッド。同じふかふかでも、大嫌いな城のベッドとは違って、優しくて、暖かい。いや、城のベッドには一瞬たりとも寝ていないけれども。一睡もせずに、いや、できずに動き続けていたから。
それは、船に戻っても同じだった。こちらは自ら進んで行った。多少なり爆発したキッチンは掃除しなければならなかったし、食材のチェックも大変だった。風呂掃除もして、甲板も掃除して、自分の洗濯だってきちんと確認して、仲間が手伝う前にいつも通りこなして、それから、どうなったのだろうか。あとの記憶はなかったーー
「ん」
ゆっくりと瞳を開けて、気づく。保健室のベッドに横たわっていた。体が気だるくて、頭が靄がかかったみたいにふわふわして、体中には、包帯が巻いてあった。油断すればまだとろりと瞼が落ちる程度には、眠い。
「サンジ」
すると布団の上にひょいと乗っかって、ズイッと迫った顔。思わず瞬きした。船長だ。びよんと伸ばした片手はキッチン側の扉を塞ぎ、もう片方の手は逃げられないように布団をきゅっと塞いでいる。ばんばんがんがん扉が喚いているのはきっと船医たちが入りたがっているのだろう。けれど、
「……もう片側から、入られるんじゃねぇか?それ」
「あ」
穏やかなツッコミのあとで、バタバタと忙しい音がした。あちら側の扉に回ったのだろう。船長はむっとした。今度は逆の扉に手を伸ばして塞ぎながら、口を開いた。
「ごまかすなサンジ!どーゆーことだ!寝てねえって!」
「……そりゃそうさ。寝る間なんてなかったんだから」
「あったろ!帰ってきてから!いっぱい!」
バタバタバンバンとまた世話しなく戸の外で音がした。だが、音楽家がこそこそと何か言ったらしい。しん、と扉が静かになる。
「バカ。キッチンあのままにしておけるか。爆発したのお前だろ」
「そーだし、それはごめん!だけど、それなら手伝えっていえよ!疲れたままやるな!」
「ルフィ」
静かに料理人は彼の言葉を制した。どんどん、バンバンがなくなったから、なおさら静かに感じるほど。
「おれはお前を怪我させたにあきたらず、ナミさんに許されないくらいの恐怖を与えて、他のやつらにでかい迷惑かけたんだ」
「……」
「そしたら、償いが必要じゃねぇのか」
「サンジのそれは償いじゃねぇ」
船長はきっぱりと返した。料理人は困った顔をする。また体調がよくないのか、それとも眠いのか、だんだん頭が回らなくなってきたようだ。
「じゃあ、どうしたらいい」
「そんなの、簡単だろ」
きっぱりと、彼の困惑した瞳を見て、船長はいい放つ。
「サンジがーー」
「元気で」
「ちゃんと」
「私たちを頼ること!」
「だよ!」
ぎゃーぎゃーばたばたといって扉が開き、残りの仲間たちとキャロットが入ってきた。船長はバチンと手を戻す。
「なんでもう入ってくるんだ!」
「あんたばっかりずるいのよ!」
「私だってサンジさんを看病したいんですー!!」
「第一なんで塞いだんだ!サンジは寝てなきゃダメなんだぞー!」
「ダメなんだぞー!」
ぎゃーぎゃー、がやがやと騒がしいの大合唱が始まって、料理人は瞬きした。ずるいとずるくない、ダメだ、ダメじゃないの繰り返し。いつもの賑やかさ。料理人の顔が、ふっと緩んだ。
「だっておれがキッチン爆破したんだから謝らねぇとだし船長のおれが怒らなきゃダメだろ!そのあとでみんなに」
「それじゃ遅いの!」
「遅いの!」
「とりあえずここから降りて!」
「いやだ!サンジの目見て言うんだ!」
船長はふぎぎぎと言いながら暴れつつ人型船医に抱っこされてベッドから下ろされる。そして、まだ言葉を付け足そうとしたが、
「それは今は無理そうですね」
「え?」
音楽家の一言に、瞬きする。すう、すうと響く寝息。
「寝ちゃいましたから」
音楽家がそっと優しく布団をかけ直す。航海士と船長は向かい合ったまま瞬きした。
「当たり前だろ!!寝てねぇんだから!もう!」
「じゃあわたしもサンジと寝よー!えーい」
「あー!ダメだぞキャロット!おれが寝て起きたらすぐ気づくようにするんだ!」
「それは私がやるわ、あんたは退場!」
「わぁぁ、乱暴すんなー!」
相変わらず賑やかしい中で、すうすうと寝息をたてる料理人。その表情は、先程よりずっと柔らかかったという。
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