剣士と料理人が中心のシリアス
*サンジとゾロが中心のシリアス
(共闘&互いが互いを認める)
冷たい氷に、足が蝕まれていく。もし、この足が悪魔にとりつかれていたら。地獄のような業火に包まれていたら。自分は彼女を、船長を、仲間を守ることができただろうか。
「……う」
料理人は、魘されるように瞳を開けた。テーブルに伏せた頬。あんなに冷たかった足はもう、違和感がすっかりなくなっていて、辺りの一味はイビキを大きくかいている。今はまだ3時だった。2時間も早く起きてしまったらしい。あんな夢のせいだ。料理人は頭をかき、起き上がる。
「……」
考古学者と船長が眠る布団を見て、眉を下げる。船長が布団から大きくはみ出していたから、そっと布団をかけ直してやった。考古学者も、よく眠れているようだ。ほうっと安堵する。
「んん……」
正直もう寝付けそうにない。諦めて読書でもしてようか。それとも、気合いをいれた朝ごはんを作るとか。そう男部屋に歩き出そうとすると足に違和感がした。まだ冷たいのだろうか。いや、違う。
「サンジ、まだ早いぞ。寝てて」
船医だ。どうやら足音に目を覚ましたらしい。手のひらで足をつかみ、小さな声で彼に話しかけてくる。
「違和感なくなったかもしれないけど、体の負担はあると思うから」
「寝付きがよくねぇんだよ、ドクター」
「だったらなおさらだ。横になるだけでもいいから」
「……わかった」
料理人は、頷いて船医の側に横になった。
「これでいいか?」
「よろしい」
船医は嬉しそうにくつくつと笑う。料理人はふうっと息をついた。
「実はな、さっきゾロも起きたんだぞ」
「あ?」
「だから、隣に寝てるんだ。おれの」
船医は、そう呻いてから瞳をゆっくりと閉じ直す。料理人は顔をしかめてちらと船医の奥の剣士をみたあと、瞳を閉じ直した。やはり寝付けない。寝息の音、イビキの音、それを聞きながら、静かに息を潜めている。
「……?」
料理人は、首をかしげた。こつり、こつり、そんな足音が甲板からするのが聞こえた気がした。目を開ける。だが、船医は寝たようだ。慌てるようにして、起き出す。
「おい」
「なんだ、起きてたのかよ」
「敵か」
「さぁな」
剣士と短く会話をかわしたあと、互いに競うように外へと向かう。
「……おや、まだ起きてる方が」
そこには一人の男がたっていた。頑丈な体を持ち、サングラスをして口許はくつくつと笑って彼はを見つめている。彼らはそっと、距離を詰めた。包帯を巻かれた足を調え、刀に触れる。
「……何のようだ」
「大将との戦いご苦労さんでした。いやー、あの強さ、ぞくぞくしたね」
「……だから、何のようだって聞いてんだ」
返答次第ならただではおかない。そう言うように、剣士と料理人が苛立つ。
「だから、思い付いちゃったわけですよ。寝込みの今を襲えば、軽く狩れちゃうってね。麦わらの一味」
「そいつは残念だったな」
「おれたちが起きててよ」
「青キジに勝てないあなたたちが」
男はニヤリと笑い、腕を構えた。
「到底おれに勝てるとは思いませんけど」
「んだと」
料理人は苛立ち、駆けようとした。
「どうちがうのか、言ってみろ」
だが、剣士が刀を抜いて、斬りかかっていた。
「こういう、ことですよ」
ぴきぴきと凍っていく船壁。
「な」
「ふふふ」
男は気味悪く笑った。料理人は、じいとそれを見る。
「……同じ能力は、悪魔の実にはありえねぇはずだ」
「ほう、詳しいですね」
「なんか、からくりがあんだろ……」
料理人は、じっと手のひらをみた。刹那、男は駆け出す。ばっと彼を捕まえようとして。
「っ」
彼は一っとびで飛び越え、地に降りた。敵がそれを追っていく、
「おらぁ!」
剣士が刀を振り下ろす。ぴきぴきと凍りつく、刀。そしてそれは、彼の手にまで広がっていく。
「手の下だな」
「そうです、私は」
「ぐ」
続けざまに放った黒足を遮る冷気。ぴきぴき、と足が凍る。あのときのように。だが、彼は宙で回転し、避けた。剣士も振り切る。手が凍りつく前に。
「腕に仕込んでるのですよ、氷の砲を」
男はにたりと笑った。腕の下に何やら細い砲口が覗き、そこから冷気を吐き出しているのだ。
「炎でも出せないと、これは壊せないですよ」
ぶわりと男の手からさらに冷気が吐き出される。
「もっとも、足と腕を青キジにやられたんでしょう」
同じ目に合わされたトラウマを抉りながら、にたりと笑う。
「今度は全身に、してあげますよ」
勝ち誇り、確信したように、笑う。
「……炎」
「なるほど、いいヒントだな」
だが、予想に反して、二人はニヤリと笑っていた。
「おい、真似すんなよ」
「こっちの台詞だバカ」
何が起こったのか、男にはわからなかった。黒足が地に叩きつけられる。刀が、岩肌に擦り付けられる。
「ずっと、考えてた」
「おれたちも」
ぐるぐると回りながら、料理人は呻く。刀を素早く一度擦り付けながら、剣士は駆け出す。
「強くなる」
「仲間を守る」
「方法をな!」
「バカな」
摩擦で、炎を起こす。そんな考えが同時に、仲の悪いはずなのに、言葉すらもなく剣士と料理人に起こったのだ。
「悪魔風、脚」
料理人は、それを悪魔の足と名付けた。辛味を効かせた、悪魔の業火のごとき料理を思わせて。
「飛竜」
剣士はそれを、飛竜の刀と名付けた。飛んでいる竜ですらも丸焦げになるほどの、強き力を帯びた刀として。
「画竜点睛……ショットォ!!」
「火焔!!!」
男は、氷を吐き出したが、所詮は機械仕掛けの偽物。強き炎が、打ち破る。両の手を、打ち破る。
ーーーーー
「新しい技、思い付いた?」
「あぁ」
「氷野郎には二度と負けねぇし、おれは他にも思い付いた」
「んだと?おれは思い付いたやつをいくらでも派生させるからおれの勝ちだ」
「なにを!?」
剣士と料理人は漫才のように寝床の船長に呻きながら自慢した。となると負けていられない。
「よーし!おれも何か思い付く!」
「あっ、ルフィはまだだめだぞねてなきゃ」
「えーっ」
船医にそう制されながらも、ぎゃーぎゃーと未だに喧嘩して航海士にぶん殴られた二人。船長はじっとまだ目を覚ましていない考古学者をみて笑った。
「強くなって、守るからな!!」
「あー」
「おう」
彼らは改めて覚悟を決めた。
エニエスロビーの事件が起こる前の話である。
<end>
(共闘&互いが互いを認める)
冷たい氷に、足が蝕まれていく。もし、この足が悪魔にとりつかれていたら。地獄のような業火に包まれていたら。自分は彼女を、船長を、仲間を守ることができただろうか。
「……う」
料理人は、魘されるように瞳を開けた。テーブルに伏せた頬。あんなに冷たかった足はもう、違和感がすっかりなくなっていて、辺りの一味はイビキを大きくかいている。今はまだ3時だった。2時間も早く起きてしまったらしい。あんな夢のせいだ。料理人は頭をかき、起き上がる。
「……」
考古学者と船長が眠る布団を見て、眉を下げる。船長が布団から大きくはみ出していたから、そっと布団をかけ直してやった。考古学者も、よく眠れているようだ。ほうっと安堵する。
「んん……」
正直もう寝付けそうにない。諦めて読書でもしてようか。それとも、気合いをいれた朝ごはんを作るとか。そう男部屋に歩き出そうとすると足に違和感がした。まだ冷たいのだろうか。いや、違う。
「サンジ、まだ早いぞ。寝てて」
船医だ。どうやら足音に目を覚ましたらしい。手のひらで足をつかみ、小さな声で彼に話しかけてくる。
「違和感なくなったかもしれないけど、体の負担はあると思うから」
「寝付きがよくねぇんだよ、ドクター」
「だったらなおさらだ。横になるだけでもいいから」
「……わかった」
料理人は、頷いて船医の側に横になった。
「これでいいか?」
「よろしい」
船医は嬉しそうにくつくつと笑う。料理人はふうっと息をついた。
「実はな、さっきゾロも起きたんだぞ」
「あ?」
「だから、隣に寝てるんだ。おれの」
船医は、そう呻いてから瞳をゆっくりと閉じ直す。料理人は顔をしかめてちらと船医の奥の剣士をみたあと、瞳を閉じ直した。やはり寝付けない。寝息の音、イビキの音、それを聞きながら、静かに息を潜めている。
「……?」
料理人は、首をかしげた。こつり、こつり、そんな足音が甲板からするのが聞こえた気がした。目を開ける。だが、船医は寝たようだ。慌てるようにして、起き出す。
「おい」
「なんだ、起きてたのかよ」
「敵か」
「さぁな」
剣士と短く会話をかわしたあと、互いに競うように外へと向かう。
「……おや、まだ起きてる方が」
そこには一人の男がたっていた。頑丈な体を持ち、サングラスをして口許はくつくつと笑って彼はを見つめている。彼らはそっと、距離を詰めた。包帯を巻かれた足を調え、刀に触れる。
「……何のようだ」
「大将との戦いご苦労さんでした。いやー、あの強さ、ぞくぞくしたね」
「……だから、何のようだって聞いてんだ」
返答次第ならただではおかない。そう言うように、剣士と料理人が苛立つ。
「だから、思い付いちゃったわけですよ。寝込みの今を襲えば、軽く狩れちゃうってね。麦わらの一味」
「そいつは残念だったな」
「おれたちが起きててよ」
「青キジに勝てないあなたたちが」
男はニヤリと笑い、腕を構えた。
「到底おれに勝てるとは思いませんけど」
「んだと」
料理人は苛立ち、駆けようとした。
「どうちがうのか、言ってみろ」
だが、剣士が刀を抜いて、斬りかかっていた。
「こういう、ことですよ」
ぴきぴきと凍っていく船壁。
「な」
「ふふふ」
男は気味悪く笑った。料理人は、じいとそれを見る。
「……同じ能力は、悪魔の実にはありえねぇはずだ」
「ほう、詳しいですね」
「なんか、からくりがあんだろ……」
料理人は、じっと手のひらをみた。刹那、男は駆け出す。ばっと彼を捕まえようとして。
「っ」
彼は一っとびで飛び越え、地に降りた。敵がそれを追っていく、
「おらぁ!」
剣士が刀を振り下ろす。ぴきぴきと凍りつく、刀。そしてそれは、彼の手にまで広がっていく。
「手の下だな」
「そうです、私は」
「ぐ」
続けざまに放った黒足を遮る冷気。ぴきぴき、と足が凍る。あのときのように。だが、彼は宙で回転し、避けた。剣士も振り切る。手が凍りつく前に。
「腕に仕込んでるのですよ、氷の砲を」
男はにたりと笑った。腕の下に何やら細い砲口が覗き、そこから冷気を吐き出しているのだ。
「炎でも出せないと、これは壊せないですよ」
ぶわりと男の手からさらに冷気が吐き出される。
「もっとも、足と腕を青キジにやられたんでしょう」
同じ目に合わされたトラウマを抉りながら、にたりと笑う。
「今度は全身に、してあげますよ」
勝ち誇り、確信したように、笑う。
「……炎」
「なるほど、いいヒントだな」
だが、予想に反して、二人はニヤリと笑っていた。
「おい、真似すんなよ」
「こっちの台詞だバカ」
何が起こったのか、男にはわからなかった。黒足が地に叩きつけられる。刀が、岩肌に擦り付けられる。
「ずっと、考えてた」
「おれたちも」
ぐるぐると回りながら、料理人は呻く。刀を素早く一度擦り付けながら、剣士は駆け出す。
「強くなる」
「仲間を守る」
「方法をな!」
「バカな」
摩擦で、炎を起こす。そんな考えが同時に、仲の悪いはずなのに、言葉すらもなく剣士と料理人に起こったのだ。
「悪魔風、脚」
料理人は、それを悪魔の足と名付けた。辛味を効かせた、悪魔の業火のごとき料理を思わせて。
「飛竜」
剣士はそれを、飛竜の刀と名付けた。飛んでいる竜ですらも丸焦げになるほどの、強き力を帯びた刀として。
「画竜点睛……ショットォ!!」
「火焔!!!」
男は、氷を吐き出したが、所詮は機械仕掛けの偽物。強き炎が、打ち破る。両の手を、打ち破る。
ーーーーー
「新しい技、思い付いた?」
「あぁ」
「氷野郎には二度と負けねぇし、おれは他にも思い付いた」
「んだと?おれは思い付いたやつをいくらでも派生させるからおれの勝ちだ」
「なにを!?」
剣士と料理人は漫才のように寝床の船長に呻きながら自慢した。となると負けていられない。
「よーし!おれも何か思い付く!」
「あっ、ルフィはまだだめだぞねてなきゃ」
「えーっ」
船医にそう制されながらも、ぎゃーぎゃーと未だに喧嘩して航海士にぶん殴られた二人。船長はじっとまだ目を覚ましていない考古学者をみて笑った。
「強くなって、守るからな!!」
「あー」
「おう」
彼らは改めて覚悟を決めた。
エニエスロビーの事件が起こる前の話である。
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