このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

剣士と料理人が中心のシリアス

*サンジとゾロが中心のシリアス
(共闘&互いが互いを認める)

冷たい氷に、足が蝕まれていく。もし、この足が悪魔にとりつかれていたら。地獄のような業火に包まれていたら。自分は彼女を、船長を、仲間を守ることができただろうか。

「……う」

料理人は、魘されるように瞳を開けた。テーブルに伏せた頬。あんなに冷たかった足はもう、違和感がすっかりなくなっていて、辺りの一味はイビキを大きくかいている。今はまだ3時だった。2時間も早く起きてしまったらしい。あんな夢のせいだ。料理人は頭をかき、起き上がる。

「……」

考古学者と船長が眠る布団を見て、眉を下げる。船長が布団から大きくはみ出していたから、そっと布団をかけ直してやった。考古学者も、よく眠れているようだ。ほうっと安堵する。

「んん……」

正直もう寝付けそうにない。諦めて読書でもしてようか。それとも、気合いをいれた朝ごはんを作るとか。そう男部屋に歩き出そうとすると足に違和感がした。まだ冷たいのだろうか。いや、違う。

「サンジ、まだ早いぞ。寝てて」

船医だ。どうやら足音に目を覚ましたらしい。手のひらで足をつかみ、小さな声で彼に話しかけてくる。

「違和感なくなったかもしれないけど、体の負担はあると思うから」

「寝付きがよくねぇんだよ、ドクター」

「だったらなおさらだ。横になるだけでもいいから」

「……わかった」

料理人は、頷いて船医の側に横になった。

「これでいいか?」

「よろしい」

船医は嬉しそうにくつくつと笑う。料理人はふうっと息をついた。

「実はな、さっきゾロも起きたんだぞ」

「あ?」

「だから、隣に寝てるんだ。おれの」

船医は、そう呻いてから瞳をゆっくりと閉じ直す。料理人は顔をしかめてちらと船医の奥の剣士をみたあと、瞳を閉じ直した。やはり寝付けない。寝息の音、イビキの音、それを聞きながら、静かに息を潜めている。

「……?」

料理人は、首をかしげた。こつり、こつり、そんな足音が甲板からするのが聞こえた気がした。目を開ける。だが、船医は寝たようだ。慌てるようにして、起き出す。

「おい」

「なんだ、起きてたのかよ」

「敵か」

「さぁな」

剣士と短く会話をかわしたあと、互いに競うように外へと向かう。

「……おや、まだ起きてる方が」

そこには一人の男がたっていた。頑丈な体を持ち、サングラスをして口許はくつくつと笑って彼はを見つめている。彼らはそっと、距離を詰めた。包帯を巻かれた足を調え、刀に触れる。

「……何のようだ」

「大将との戦いご苦労さんでした。いやー、あの強さ、ぞくぞくしたね」

「……だから、何のようだって聞いてんだ」

返答次第ならただではおかない。そう言うように、剣士と料理人が苛立つ。

「だから、思い付いちゃったわけですよ。寝込みの今を襲えば、軽く狩れちゃうってね。麦わらの一味」

「そいつは残念だったな」

「おれたちが起きててよ」

「青キジに勝てないあなたたちが」

男はニヤリと笑い、腕を構えた。

「到底おれに勝てるとは思いませんけど」

「んだと」

料理人は苛立ち、駆けようとした。

「どうちがうのか、言ってみろ」

だが、剣士が刀を抜いて、斬りかかっていた。

「こういう、ことですよ」

ぴきぴきと凍っていく船壁。

「な」

「ふふふ」

男は気味悪く笑った。料理人は、じいとそれを見る。

「……同じ能力は、悪魔の実にはありえねぇはずだ」

「ほう、詳しいですね」

「なんか、からくりがあんだろ……」

料理人は、じっと手のひらをみた。刹那、男は駆け出す。ばっと彼を捕まえようとして。

「っ」

彼は一っとびで飛び越え、地に降りた。敵がそれを追っていく、

「おらぁ!」

剣士が刀を振り下ろす。ぴきぴきと凍りつく、刀。そしてそれは、彼の手にまで広がっていく。

「手の下だな」

「そうです、私は」

「ぐ」

続けざまに放った黒足を遮る冷気。ぴきぴき、と足が凍る。あのときのように。だが、彼は宙で回転し、避けた。剣士も振り切る。手が凍りつく前に。

「腕に仕込んでるのですよ、氷の砲を」

男はにたりと笑った。腕の下に何やら細い砲口が覗き、そこから冷気を吐き出しているのだ。

「炎でも出せないと、これは壊せないですよ」

ぶわりと男の手からさらに冷気が吐き出される。

「もっとも、足と腕を青キジにやられたんでしょう」

同じ目に合わされたトラウマを抉りながら、にたりと笑う。

「今度は全身に、してあげますよ」

勝ち誇り、確信したように、笑う。

「……炎」

「なるほど、いいヒントだな」

だが、予想に反して、二人はニヤリと笑っていた。

「おい、真似すんなよ」

「こっちの台詞だバカ」

何が起こったのか、男にはわからなかった。黒足が地に叩きつけられる。刀が、岩肌に擦り付けられる。

「ずっと、考えてた」

「おれたちも」

ぐるぐると回りながら、料理人は呻く。刀を素早く一度擦り付けながら、剣士は駆け出す。

「強くなる」

「仲間を守る」

「方法をな!」

「バカな」

摩擦で、炎を起こす。そんな考えが同時に、仲の悪いはずなのに、言葉すらもなく剣士と料理人に起こったのだ。

「悪魔風、脚」

料理人は、それを悪魔の足と名付けた。辛味を効かせた、悪魔の業火のごとき料理を思わせて。

「飛竜」

剣士はそれを、飛竜の刀と名付けた。飛んでいる竜ですらも丸焦げになるほどの、強き力を帯びた刀として。

「画竜点睛……ショットォ!!」

「火焔!!!」

男は、氷を吐き出したが、所詮は機械仕掛けの偽物。強き炎が、打ち破る。両の手を、打ち破る。

ーーーーー

「新しい技、思い付いた?」

「あぁ」

「氷野郎には二度と負けねぇし、おれは他にも思い付いた」

「んだと?おれは思い付いたやつをいくらでも派生させるからおれの勝ちだ」

「なにを!?」

剣士と料理人は漫才のように寝床の船長に呻きながら自慢した。となると負けていられない。

「よーし!おれも何か思い付く!」

「あっ、ルフィはまだだめだぞねてなきゃ」

「えーっ」

船医にそう制されながらも、ぎゃーぎゃーと未だに喧嘩して航海士にぶん殴られた二人。船長はじっとまだ目を覚ましていない考古学者をみて笑った。

「強くなって、守るからな!!」

「あー」

「おう」

彼らは改めて覚悟を決めた。
エニエスロビーの事件が起こる前の話である。

<end>
1/1ページ
スキ