約束
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここは、中国のとある村。私と彼が出会ったのは、村の近所で行われている子供向けの武闘大会、その武闘大会の決勝で私は彼と出会った。
結果は、大人相手でも勝てるくらいに強かった私の勝ちだった。本当なら大会が終われば彼ともう会うことはなかっただろう。
しかし彼は私と一緒に修行をしたいと言い、私の村に住んで一緒に修行をすることとなった。
そして、私は時にはライバルとして、時には共闘する仲間として彼と一緒に育ってきた。
そんな風に過ごしていくうちに、私の中には彼への特別な想いが生まれていた。
「風!!」
「おや、春蘭。どうしました?」
私が呼びかけると、風は稽古を止めて長い三つ編みを揺らしながらこちらを向いた。
「今日こそ、昔のように勝たせてもらうわ!勝負よ!」
「いいですよ」
私が、憲法の構えをしながらいうと、風は優しい微笑みをしながら答えた。
「準備はいいですか?いきますよ?」
「どこからでもかかって来て!」
「では、遠慮なく……ふっ!!」
私の言葉を合図に、私たちの勝負は始まった。
私が風にこうして毎日のように勝負を挑むのは、負けるのが悔しいからではない。
もちろん、悔しいと思う気持ちはあるけれど、それ以上にライバルとしてでいいから、少しでも風の側にいたいと思う気持ちの方が強い。
本当は、恋人として側にいたい。だけど、それを口に出してしまうと、今の関係が壊れてしまう気がしてならない。
だから私は、彼のよきライバルであり続けるために、こうして毎日のように勝負を挑んでいるのだ。
「やぁっ!!」
「おっとっ!!やりますね。では、これでどうですか!」
「くっ!!……負けるもんですかっ!!」
私は風の攻撃を少し受けながらも反撃をした。
昔は、私の方が強かったのに、気が付けば風の方が強くなっていて、いつの間にかどんなに闘っても勝てなくなっていた。
私が風のことを好きになったのは、風に勝てなくなり始めてからだと思う。
……いや、もしかしたら初めて会った時からすでに惚れていたのかもしれないけど。
なんて事を考えながら闘っていると、風の攻撃をまともに受けてしまった。
「痛っ!!」
「春蘭、大丈夫ですか!?」
「うん、平気。心配かけてごめんね」
風は、心配して私の方に駆け寄ってきて手を差し伸べた。私は、そんな風の手を取って立ち上がった。
「それにしても、悔しいな~……3年ほど前までは私の方が勝ってたのに、いつの間にか風の方が強くなってるんだもん」
「そんなことないですよ。ですが、どうして私が強くなったのか知りたいですか?」
私が服に着いたほこりを払いながら言うと、風は少し、いじわるそうな顔をしながら聞いてきた。
「うん、知りたい。風がどうしてそんなに強くなろうとしたのか聞かせて」
「では、少し長くなってしまうので家の中に入りましょう。お茶でも飲みながらお話しします」
「わかった」
私が頷くと、風は微笑みながら玄関のドアを開けてくれたので、私は先に家に入った。
さっきの手を差し伸べてくれたことといい、ドアを開けてくれたことといい、風のこういう紳士的な態度も好きだ。
私は、家の中に入りながら、そう思った。
「どうぞ」
「ありがとう」
風の家の中心にあるテーブル横の椅子に座っていると、風が烏龍茶を出してくれた。
「美味しい」
「普通の烏龍茶と変わりませんよ」
「そんなことない!風が入れてくれたからだよ」
私がちょっと強めに言うと、風は笑顔で”ありがとうございます”と言った。
その笑顔に、私は思わずドキッ!としてしまった。
このままじゃ、ドキドキが止まらなくなりそう……何か、話題を……そうだ!!
「それで、話の続きなんだけど……」
私は、自分の気持ちを切り替えるために、さっきまで外で話していた話題に戻した。
「わかってますよ。ですが、その前に春蘭。あなたは3年前に村の青年から告白をされていたことを憶えていますか?」
「え……?」
風の口から思わない言葉が出てきたため、私は驚いて固まった。
「……憶えているけど、何で風は私が告白されたことを知っているの?」
「偶然、見てしまったのですよ。申し訳ないとは思ったんですけどね」
私が問いかけると、風は苦笑いをしながら答えた。その顔に一瞬、黒い影が見えた気がしたが、気のせいだろう。
「その時、あなたは何と言って告白を断ったか憶えていますか?」
「えっと……確か……」
私に問いかけてきた風はいつもの笑顔に戻っていた。やっぱり、さっきのは気のせいだったのだろう。
それよりも私は、必死に3年前の記憶を呼び起こして自分が何と断ったのかを思い出していた。
あの時は確か……稽古後で疲れているときに呼び出されて告白をされて……。
『あの、春蘭さんっ!あなたのことが好きです!俺と付き合って下さい』
(稽古で疲れているけど、大事な話があるって言うから付いてきたのに、まさか告白されるとは……さて、なんて断るか……)
『あのっ……返事は……?』
そうだ……どう断ろうか悩んでいると、青年が催促するように聞いてきたから、私はバッサリと言って断ったんだ!!
確か、その後、私の返事を聞いた青年は落ち込みながら去って行ったはず……。
え~と、断った理由は……
「……私より弱い男の人に興味はありません。だよね」
「そうです」
私の言葉に風は、待ってましたと言わんばかりに笑顔で頷いた。
でも、そのことと、風が強くなったことに一体、なんの関係が……?
私は、ふと疑問に思ったけれど、風が理由を話してくれるだろうと思い、考えるのを止めて風が話し出すのを待った。
「私がこれまで以上の努力を始めたのは、春蘭のその言葉がきっかけなんです」
「……えっ!?」
風の言葉がいきなりすぎて、思考が追い付けないでいた。
ちょっと、待って……。じゃあ、風は私の言葉を聞いて、さらに強くなるための努力をしたっていうの?でも、どうして……?
風の真意が未だに理解できていない私は、ぐるぐると思考を巡らせていた。
そんな私の様子を見ていた風は、椅子から立ち上がると私の方へやって来て、座ったままの私を後ろから抱きしめてきた。
「ちょっ、風!?」
「まだ、わかりませんか?私がどうしてここまで強くなったのか」
風が話すと、息が耳の辺りにかかり、私は恥ずかしさから顔を赤くした。
わからないも何も、この状況じゃ考えるに考えられないよ……。
私は、恥ずかしさと驚きであまり働かない思考をなんとか巡らせようとした。
……が、やはり無理だったので、私は素直に言うことにした。
「ごめん、風。私、抱きしめられているのが恥ずかしくて思考が回らないから、わからない……」
「そうですか。では、仕方ありませんね」
我ながら情けなくて、風を呆れさせてしまったと思ったが、以外にも風は笑顔で頷いた。
その後、風は私の体を抱きしめていた手を離すと、今度は私の目の前に移動した。そして、普段はあまり見せない真剣な顔をした。
「春蘭。私は今からとても大切なことを言いますから、よく聞いてくださいね」
「うん」
風の表情や顔からよほど大切なことなのだと伝わってきたので、私は黙って聞くことにした。
「あなたのことがずっと、好きでした。私の恋人になって下さい」
「……えっ!?」
風の口から出た言葉は、私が思いもよらなかったものだったため、私はバカみたいに口をポカンと開けたまま固まった。
風が私のことをずっと好きだった……そんな、まさか……でも、風は嘘をつくような人じゃない。
だから、風が言ったことは本心から出た言葉で間違いないよね。
……それにしても、風が私と同じ気持ちだったなんてすごく嬉しい……。
「春蘭、返事を聞かせてくれませんか?」
私が風と同じ気持ちだったことに喜びを感じていると、風は私が断るのではないかと思っているのか、少し怖がっているような感じで聞いてきた。
私は、そんな風がたまらなく愛しいと感じて、今度は私が彼に自分の気持ちを伝えて安心させてあげようと思った。
だから……
「風っ!!」
「えっ?!」
私は椅子から立ち上がると、風に思いっきり、抱き着いた。
私の行動が予想外だったのか、風は驚いて少し慌てた素振りを見せた。
「あの、春蘭。これはつまり……」
「私も風のことが好き!!ずっとずっと、好きだったよ!!」
私の行動の真意を確認するかのように言った風の言葉を遮って、私は自分の気持ちを伝えた。
「では、私の恋人になることを受けてくれるんですね?」
「もちろん!だって、私は風のことが誰よりも好きなんだから!」
私が笑顔で言うと、風は自分の背中に手を回して抱き着いている私を抱きしめ返した。
「よかった……」
「風?」
私がOKしたことに安心したのか、私を抱きしめている風の力が強まった。
「ねぇ、風」
「なんですか?」
「私のことをいつから好きだったの?」
私は風の腕に抱きしめられつつ、顔だけを風の方に向けて、両思いだとわかった時から疑問に思っていたことを聞いた。
「そうですね……気づけばあなたのことを好きになっていたので、具体的にいつからかは憶えていませんが、少なくとも3年以上前からだと思います」
「3年以上前からか……じゃあ、どうしてもっと早く告白してくれなかったの?」
自分の気持ちについて思い出しながら答えた風に私は自分のことを棚に上げてると思いながらも、さらに疑問をぶつけた。
3年前っていったら、私だってすでに風に惚れていたのに……。
そんなことを思いつつ、風の言葉を待った。
「本当はもっと早く告白したかったんですけど、春蘭にふさわしい相手になるために強くになろうと努力していたので……」
「……それって、もしかして私が”自分より弱い男に興味ない”って言ったから?」
「はい」
風の話を聞いていて、まさかと思った私が思ったことを口にすると、風は頷いた。
じゃあ、私があんなことを言わなければ、もっと早く風は告白してくれていて、3年も思いを秘めたまま努力する必要がなかったってこと?
もしくは、私がもっと早くに勇気を出して風に自分から告白していれば良かった?……すべては、私が原因……。
そう思った途端、私はこの3年の自分の行動を後悔し、同時にショックからか体の力が抜けていった。
「春蘭!?大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。ただ、色々と考えてたら力が抜けちゃっただけ……」
風に抱き着いていた私の体が急に倒れそうになったのを見た風は驚きながらも、しっかりと私の体を支えてくれた。
そんな風に私は、笑顔で説明した。
その後、風に”色々とあって疲れたんでしょう。少し横になればいいですよ。”と言われ、彼に言われるがまま、寝室に移動し、
私は風に後ろから抱きしめられるようにしながらベッドに座った。
「ねぇ、春蘭」
「なに?風」
風は私を後ろから抱きしめたまま、微笑みを浮かべて言ってきた。
「私を選んだことを後悔させません。ですから、私のことだけを見てると約束してください」
「うん、約束する。だから、風も私のことだけを見て幸せにしてくれるって、約束してね」
風は私の向きを反転させて、私を自分の膝の上に座らせると、これまでにないくらい優しい微笑みで告げてきた。
なので私も、しっかりと笑顔で頷いて風に答え、同じように言った。
「はい。必ずあなたを幸せにすると、約束します」
「風……」
「春蘭……」
私たちの唇は、お互いの名前を呼びあった後、自然と引き寄せられるようにして重なった。
ファーストキスの味は、すごく甘くて、私はこれまでにないくらいの幸せを感じていた。
→
1/3ページ