もしも……
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「そういえばさぁ、ウチのお姉ちゃんが幼なじみに告白したら上手くいったんだって」
「へぇ~」
幼なじみという関係は難しいモノで、もし相手に「好き」とか言ってフラれようものなら関係は確実に気まずくなる。
だから……
「……もし、もしもやで。ウチが光のことを好きって言ったらどないする?」
「そんなもん断るに決まっとるやん。俺、女の子らしくて家庭的な子が好みやし。それに、愛理のことは男友達みたいにしか思ってへんねんから」
「……ですよね」
さり気なく告白してみたのに、さり気なくフラれてしまった小5の秋。
それから、3年後(現在)……
「小鷹愛理さん、ずっとあなたのことが好きでした。俺と付き合っ……」
「ウチ、好きな人がいるからあなたとは付き合えません。ごめんなさい」
「うっ、うぉぉぉ~~!!」
男の人の告白の言葉を途中で遮るようにして私は、告白を断った。断られた男の人は、ショックからか叫び声をあげながら去って行った。
「聞いたで~愛理、また告白されたんやて?」
「うん。断ったけどね」
誰から聞いたのか、クラスに戻ると友達に質問された。私は特に隠すつもりはないので、正直に答えた。
「愛理って、ホンマに男子からモテるよね~。髪は猿のように短くて、性格や仕草が男子みたいやった小学生の頃の愛理からは考えられへんわ~」
「そう?」
「うん!髪を伸ばして仕草を女の子らしくして、料理の腕も中々なものにして、すっかり女の子らしくなっとるやん」
「アハハ……」
驚き半分、感心半分といった感じで言ってくる友達に対して、私は苦笑いで答えた。
正直言えば、今でも髪型はショートの方が好きだ。だけど、小学5年生のあの日……
「俺、女の子らしくて家庭的な子が好みやし。それに、愛理のことは男友達みたいにしか思ってへんから」
と幼なじみであり、私の思い人である財前光が言ったので、彼の好みのタイプになるために私はこの3年間死に物狂いで努力して女の子らしくなったのだ。
「でもさ、死に物狂いで努力したのに寄って来るのはどうでもいい男子ばかりで、肝心の財前君とは何の変化もないんやろ?」
「うん……」
「なんでやろな?」
「それは、ウチが聞きたいよ……」
友達は、頭の上に?(クエスチョンマーク)を浮かべていた。そんな友達に私は、ため息を吐きながら言った。
「あっ、そういえば愛理に伝言を頼まれてたんだった」
「伝言?……誰から?」
「3年の先輩から。放課後、校舎裏に来て欲しいんやて。どないする?」
「……めんどくさいけど、行くわ」
誰が見ても嫌々なのが一目瞭然の顔をしながら、私は答えた。
放課後
「小鷹愛理さん、ずっとあなたが好きで……」
「好きな人がいるので、ごめんなさい」
「やっぱり、そうなんか……ハァ……」
今回は、今朝と違い男の人が言い始めてすぐくらいのタイミングで断った。男の人は、何かを納得したようにブツブツ言いながら去って行った。
「あの様子やとしばらくは立ち直られへんのとちゃう?可哀相なことするな~」
「でも、ウチが悪い訳じゃないし……ってか、誰が可哀相な事をしたって?」
「自分以外に誰がおんねん」
「何だと~!!さっきから黙ってれば勝手なことばかり言うとんのは誰や……光!?……いつからいたの!?」
男の人が去って行った方をぼーっと見ていたら近くから声がした。私は、つい会話をしていたが内容にムカついたので、誰と話しているのか振り向いて確認した。すると、そこには光の姿があったので驚いた。そして、いつからいたのか聞いた。
「いつからって、告白の最初からや」
「そうっすか……てか、何でこんな所におんねん。部活は?」
「何でって言われても、師範の打った球がこっちの方に飛んでったから回収に来ただけやし」
「そうなんや……。」
光は、いつからいたのかを素っ気なく答えた。納得した私は、校舎裏にいる理由を聞いた。すると、どうやら部活の用事でたまたま来ただけだったと知り、私はちょっと落胆していた。
「それよりも、自分、好きな奴がおったんやな」
「えっ?」
「“えっ?”やないわ。なに、ハトが豆鉄砲をくらったような顔をしとんねん。さっき自分で言うとったやん。“好きな人がいるからごめんなさい”って」
光から唐突に言われたので、私は驚きのあまり一瞬固まってしまった。そんな私の様子を見た光は呆れながら言った。
「あぁ、あれね!確かに言ったけど、そんなん告白を断る為の嘘に決まっとるやん」
「ふーん……“嘘”ねぇ~。まぁ、そうゆうことにしといたるわ」
「それよりも、光はボールを探してたんやないの?早う見つけて部活に戻らなアカンのとちゃう?」
私が答えると光は“しゃーないからそうゆうことにしといたる”といった顔で返事をした。私は、このままだとマズイと思い、話題を変える為に光が来た目的を言った。
「せやな。ボールはもう見つけたし、そろそろ戻るとするわ」
「ほな、ウチはこれで」
「ちょい待ち!」
光が部活に戻る発言をしたので、私は光に別れを告げて去ろうとしたが、光に手を捕まれて引き止められた。
「な、なに?」
「明日、俺ん家に来なアカンってこと覚えとるやろな」
「当たり前やん。忘れるわけないわ」
「ならええわ。ほな、また明日」
「ん、また明日」
光に引き止めた理由を聞くと、明日のことを覚えてるか確認してきたので、私は笑顔で答えた。私の答えを聞いた光は、安心したのか掴んでいた手を放して部活に戻って行った。
私の母親と光の母親は親友で、家も近いこともあり、私達は小さい頃からずっと一緒だった。そして、明日、光の家に行くのは毎年恒例の行事のようなものである。
明日の5月3日は、私の親の結婚記念日で、毎年親二人だけで1泊2日の旅行に行っている。そして、二人が旅行に行っている間、私と姉のことが心配な母は光のお母さんに私達の面倒を見てくれるように頼んだ。光のお母さんは、母の頼みを喜んで引き受けたそうだ。
こうして、毎年1回しかないが、光の家に泊まる日が出来たのだった。(ちなみに、姉は大学の寮に入っているので、ここ数年は私だけがお世話になっている。)
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