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まさかこんなところであのこと再開するなんて。
俺は身じろぎひとつせずその場に立ち尽くしていた。頭のてっぺんからつま先まで、あのこに囚われたように。
「………いくや?」
その瞬間、身体中に電流が走った。鳥肌がたち、僕は彼女から目を逸らせなくなった。
「…郁弥、どうかしたの?」
背後で日和がどこか疑わしげに問いかけてくる。だが、その問いに返事をできるほど、今の僕は余裕がなかった。
そう、余裕がなかったのだ。彼女に再開しただけなのに、名前を一言呼ばれただけなのに。どうしようもなく震えて、思わずその華奢な身体を力いっぱい抱きしめていた。
「っ、郁弥!?」
「……!」
驚いたような日和の声がどこか遠くで聞こえる。腕の中にいる彼女が息を呑んだのがわかった。
「会いたかった、ゆき……」
俺は昔も今も、どうしようもなく彼女の虜だ。
「郁弥……」
郁弥の背後で連れらしき茶髪の青年が呆然としたように立ち尽くしている。郁弥のこんな姿を見たことがないのだろうか、驚きでいっぱいの表情を浮かべている。
最初は興味本位だった。
大学に行く途中のファミレスで、ガラス越しに偶然郁弥らしき人物を見かけた。スマホを操作するフリをしながら足を止めて横目で見ると、深海のような深緑の髪に赤みがかった瞳。あまり愛想のないその横顔は、間違いなく桐嶋郁弥のものだった。中学の幼くかわいさの残る顔立ちとはうって変わり、随分と大人になっている。それはそうか、中学からもう4年も経っている。
「そうだ」
このまま私が店に入って行ったら郁弥は気づいてくれるだろうか。さり気なく横を通り過ぎるだけ。それだけで気づくのは少し難しいだろうか。だが、私には絶対的な確信があった。郁弥は絶対に気づくであろうという確信が。
ファミレスのドアを開ける。郁弥の席は1番外から見える席。横目でぱっと確認しようとすると、郁弥と連れの青年が同時に立ち上がるのが見えた。伝票を片手にまっすぐこちらへ向かってくる。入口のそばにレジがあるため、このままいると丁度鉢合わせることになる。
私はわざと気づかないフリをして郁弥の脇をふっとすり抜けようとした。郁弥は私の存在に気づいてすっと道をあけようとしたが、私の顔を見ると凍りついたように固まった。
私は内心喜びで満ち溢れていた。気づいてくれた!確信はあったものの、やはり離れている期間が長かったため、忘れられているかと不安はあった。だが郁弥はすぐに私に気がついた。こんなにうれしいことがあるだろうか!
「………いくや?」
私はあたかもいま気がついた、というように驚いてみせて立ち止まった。
私が名前を呼んだ瞬間、彼は驚きと喜びと泣きそうな気持ちをいっぺんに混ぜたような表情をした。
そんな表情で私を見つめるの、あなたは。
「…郁弥、どうかしたの?」
連れの青年が訝しげに尋ねるが、もう郁弥の耳には入っていないようだ。
そしてそのまま私を強く抱きしめた。
「会いたかった、ゆき…」
泣き虫だった郁弥。そのときの声は中学のときと全く変わらない、あの郁弥のままだった。
「郁弥、郁弥」
私は郁弥の背中を何度か叩いた。
「ここお店だから、一旦外に出よう?」
郁弥は名残惜しげにそっと私から離れると、「……ゆき」と目の下を少し赤くしてつぶやいた。
「っ、郁弥!」
同時に郁弥の連れの青年が郁弥と私の間に入り、郁弥の肩を片手で掴む。
「どうしたの、郁弥。この人知り合い?」
「……別に、何でもないから」
郁弥は抱き着く姿を見られた気恥ずかしさからか、ふいっと青年から目を背ける。私はそんな姿に微笑ましくなり思わずふっと笑ってしまった。
「……笑わないでよ」
そんな私を見た郁弥は拗ねたように私を横目で見つめる。そんな郁弥がかわいく見え、私はまた笑ってしまった。
「とりあえず、外出よっか」
店の通路でひと騒ぎ起こした私たちは、そそくさと店を出た。道の端まで移動して振り返ると、郁弥が1番恥ずかしそうに頬を赤くしていて、私はその頬にすっと手を伸ばした。
「今日は会えてよかった、じゃあね。連れの方も、迷惑かけてごめんなさい」
郁弥の記憶に刻みつけられるように最高の微笑みで別れを告げると、複雑な表情をしている連れの青年に詫びをいれ、私はくるっと踵を返して走り出した。
「っ、まってゆき!!まだ…」
縋るような郁弥の声に私は1度も振り返らずに手だけ降ると、一限は間に合わないなと呑気なことを考えながら大学へと急いだ。
どうしてそんなに綺麗な顔をするの。私はもうその表情をされる資格を持っていないのに。
やはりあなたのなかにはいまもわたしがいる。中学のときのあなたのたまにみせるはにかんだような笑顔を、私はもう覚えていないというのに。
思わず喉に触れた。みんなみんな、もう水の中でなくても息ができている。
わたしはまだ、水の中でないと息ができない。
俺は身じろぎひとつせずその場に立ち尽くしていた。頭のてっぺんからつま先まで、あのこに囚われたように。
「………いくや?」
その瞬間、身体中に電流が走った。鳥肌がたち、僕は彼女から目を逸らせなくなった。
「…郁弥、どうかしたの?」
背後で日和がどこか疑わしげに問いかけてくる。だが、その問いに返事をできるほど、今の僕は余裕がなかった。
そう、余裕がなかったのだ。彼女に再開しただけなのに、名前を一言呼ばれただけなのに。どうしようもなく震えて、思わずその華奢な身体を力いっぱい抱きしめていた。
「っ、郁弥!?」
「……!」
驚いたような日和の声がどこか遠くで聞こえる。腕の中にいる彼女が息を呑んだのがわかった。
「会いたかった、ゆき……」
俺は昔も今も、どうしようもなく彼女の虜だ。
「郁弥……」
郁弥の背後で連れらしき茶髪の青年が呆然としたように立ち尽くしている。郁弥のこんな姿を見たことがないのだろうか、驚きでいっぱいの表情を浮かべている。
最初は興味本位だった。
大学に行く途中のファミレスで、ガラス越しに偶然郁弥らしき人物を見かけた。スマホを操作するフリをしながら足を止めて横目で見ると、深海のような深緑の髪に赤みがかった瞳。あまり愛想のないその横顔は、間違いなく桐嶋郁弥のものだった。中学の幼くかわいさの残る顔立ちとはうって変わり、随分と大人になっている。それはそうか、中学からもう4年も経っている。
「そうだ」
このまま私が店に入って行ったら郁弥は気づいてくれるだろうか。さり気なく横を通り過ぎるだけ。それだけで気づくのは少し難しいだろうか。だが、私には絶対的な確信があった。郁弥は絶対に気づくであろうという確信が。
ファミレスのドアを開ける。郁弥の席は1番外から見える席。横目でぱっと確認しようとすると、郁弥と連れの青年が同時に立ち上がるのが見えた。伝票を片手にまっすぐこちらへ向かってくる。入口のそばにレジがあるため、このままいると丁度鉢合わせることになる。
私はわざと気づかないフリをして郁弥の脇をふっとすり抜けようとした。郁弥は私の存在に気づいてすっと道をあけようとしたが、私の顔を見ると凍りついたように固まった。
私は内心喜びで満ち溢れていた。気づいてくれた!確信はあったものの、やはり離れている期間が長かったため、忘れられているかと不安はあった。だが郁弥はすぐに私に気がついた。こんなにうれしいことがあるだろうか!
「………いくや?」
私はあたかもいま気がついた、というように驚いてみせて立ち止まった。
私が名前を呼んだ瞬間、彼は驚きと喜びと泣きそうな気持ちをいっぺんに混ぜたような表情をした。
そんな表情で私を見つめるの、あなたは。
「…郁弥、どうかしたの?」
連れの青年が訝しげに尋ねるが、もう郁弥の耳には入っていないようだ。
そしてそのまま私を強く抱きしめた。
「会いたかった、ゆき…」
泣き虫だった郁弥。そのときの声は中学のときと全く変わらない、あの郁弥のままだった。
「郁弥、郁弥」
私は郁弥の背中を何度か叩いた。
「ここお店だから、一旦外に出よう?」
郁弥は名残惜しげにそっと私から離れると、「……ゆき」と目の下を少し赤くしてつぶやいた。
「っ、郁弥!」
同時に郁弥の連れの青年が郁弥と私の間に入り、郁弥の肩を片手で掴む。
「どうしたの、郁弥。この人知り合い?」
「……別に、何でもないから」
郁弥は抱き着く姿を見られた気恥ずかしさからか、ふいっと青年から目を背ける。私はそんな姿に微笑ましくなり思わずふっと笑ってしまった。
「……笑わないでよ」
そんな私を見た郁弥は拗ねたように私を横目で見つめる。そんな郁弥がかわいく見え、私はまた笑ってしまった。
「とりあえず、外出よっか」
店の通路でひと騒ぎ起こした私たちは、そそくさと店を出た。道の端まで移動して振り返ると、郁弥が1番恥ずかしそうに頬を赤くしていて、私はその頬にすっと手を伸ばした。
「今日は会えてよかった、じゃあね。連れの方も、迷惑かけてごめんなさい」
郁弥の記憶に刻みつけられるように最高の微笑みで別れを告げると、複雑な表情をしている連れの青年に詫びをいれ、私はくるっと踵を返して走り出した。
「っ、まってゆき!!まだ…」
縋るような郁弥の声に私は1度も振り返らずに手だけ降ると、一限は間に合わないなと呑気なことを考えながら大学へと急いだ。
どうしてそんなに綺麗な顔をするの。私はもうその表情をされる資格を持っていないのに。
やはりあなたのなかにはいまもわたしがいる。中学のときのあなたのたまにみせるはにかんだような笑顔を、私はもう覚えていないというのに。
思わず喉に触れた。みんなみんな、もう水の中でなくても息ができている。
わたしはまだ、水の中でないと息ができない。
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