〇 or X
名前設定
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俺より狭い歩幅。
なのに俺より先へ先へ。
足早に動くその歩みを俺は止められない。
「ついてくるな」
「なんで」
セーラの声が冷たく俺に刺さる。
「次の試験まで休みたいの」
「俺がいたら支障が?」
「ありありよ。気が散る。消えて」
セーラとはこのハンター試験で出会った。
一次試験で俺の前を走っていた彼女に
声をかけたのが始まり。
それから時間が経つごとに彼女の存在が気になって。
視線で追ってしまう。
名前は知れたけど、他のことはなにも知らないから。
もっと近付いて、お前のことを知りたいと思った。
「俺の名前はキルア」
「聞いてないし」
「あんたセーラっていうんだろ?いくつ?」
「なんで私の名前知ってるの?」
「試験の常連生に聞いた」
「トンパか。あいつ勝手に人の情報を…」
「んで、歳は?」
セーラは不機嫌そうな顔で俺を見てくる。
「いくつだと思う?」
なんだよ。その意味深な笑みは。
「俺、そういうの得意だよ」
「当ててみな。絶対当たらないから」
飛行船の中で、窓際のベンチに座る彼女は足を組み直す。
「んー…20」
「ふーん。やっぱり老けて見える?」
「…もっと若かった?ww」
「笑うな。ムカつく。
いいよ。慣れてるから」
長い黒髪を耳にかける。
その仕草が彼女をよりいっそう大人びて見せる。
「答えは?」
「教えない」
「なんだよ」
「当てられなかったあなたの負け。
ほら、あっち行った」
シッシッと追い払うようにセーラは俺をあしらう。
やだよ。
まだ諦めないし。
「ゲームしよっか」
「は?」
「今度は俺があんたにクイズを出すよ」
俺はセーラの傍に寄って、目線を合わせる。
「1問目。俺はハンターになりたい。〇か×か」
「×」
「なんで?」
「だって、やる気が感じられないもの」
「ご名答。やっぱ分かる?」
「ゲーム感覚ならやめときな。舐めてると死ぬよ」
「ご心配なく。じゃあ2問目」
俺は更にあいつに近付く。
「俺はあんたが気になってる」
「っ!」
「〇か×か」
「…×」
「不正解。すんげー気になってる」
顔赤くなってる。
超可愛ーんだけど。
「じゃあ3問目。今、あんたの心臓…
ドキドキしてる。〇か×」
「×よ!!誰があんたなんかに!!」
意外と感情が表に出るタイプなんだ。
「不正解。〇だろ。自分の胸に手当ててみな」
セーラの耳元でそう囁く。
あいつはビクっと体を震わせ固まっていた。
「これで同点。次が最後だ」
「待って!」
セーラの顔が遠のく。
「なんだよ。今いいとこ」
「最後の出題は私にさせて」
「いいよ?」
セーラは深呼吸をしてから、ジッと俺を見る。
「私はあんたが嫌い。〇か×かで答えて」
あー、そう来る。
思わず笑いが込み上げる。
「な、なに笑ってんのよ」
「いや、なんか。勘違いしてんなと思って」
ベンチに膝をついて、ズイッとお前の方へ。
唇が触れる一歩手前まで。
「…っ」
「答えは〇。でしょ?」
「…そうよ。あんたなんか嫌い」
「でも勝負は俺の勝ち」
彼女の腕を掴み、引き寄せる。
勝利の報酬はあんたの唇。
肉厚のある唇が俺のに柔らかく触れる。
俺まで心臓が跳ねる。
やっぱりあんたが気になる。
話してよりいっそう惹かれてしまった。
「いや…っ。やめて!言ったでしょ!あんたが嫌…っんんっ」
唇で言葉を遮る。
唇に食らいつくように深く強く重ねた。
息を乱すくらい。濃厚に。
「黙らないと、もっかい塞ぐ」
「っ…」
あんたが俺を嫌いでも、なんの問題もない。
「あんたを惚れさすまでさ」
赤くなった彼女の頬を撫でて、
ジッと見つめると彼女も俺を瞳に映した。
逃がさない。
俺の今、一番欲しいものは、
あんただから。
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