シャランシャラン
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お前の匂いはどことなく甘くて、
俺の心を落ち着かせる。
その長い髪から香る。
きっとシャンプーの匂い。
俺の言葉にお前はいちいち笑って、無邪気に
はしゃぐからまた笑わせたくなる。
そんな俺を、お前は、どんな風に見てるの?
「ほら、直った」
「さすが~。キルア器用だね」
「見直しただろ」
「かなりね。助かった」
俺は修繕したイヤリングをセーラに手渡した。
それを満面の笑みで受け取る彼女。
どんだけ嬉しいんだよ。
そんなに高価には見えない貝殻で出来たイヤリング。
セーラは俺の目の前でつけてみせた。
「どう?可愛いでしょ?」
「ああ。そんなに気に入ってんだ」
「うん。彼が私に初めてくれた物だから。
大切にしたいの。
ありがとね、キルア」
その話を聞いて俺は一気にまた暗闇に引き戻される。
愛しの君には愛する人がいる。
初めはそれでもいいと思ってたんだ。
でも日に日に想いは募って、
彼女の可愛くて残酷なその口が放つ
「彼」との話が、俺の心に何度も鞭を打つ。
「もうこんな時間!行かなくちゃ!」
「待て…っ」
咄嗟にセーラの手を掴む。
この手を放せばまたあいつの元に行ってしまう。
それは近くて、すごく遠い場所。
「どうしたの?キルア」
「いや……あのさ。もう少し、ここにいろよ」
「キルア?」
喉のすぐそこまで押し寄せる『好き』。
言いたい。伝えたい。
叫んでやりたい。
キルア「俺さ…お前のこと…」
「セーラー!!」
セーラ「あっ!!来てくれたんだ!」
彼女を呼ぶ声で反射的に俺は手を放した。
「キルアもいたんだね!
急に二人でいなくなるからビックリしたよ。
何してたの?」
セーラ「へへっ、内緒♡」
セーラは俺に目線を合わせて、微笑んだ。
「宿に戻ろ。まだ念の修行終わってないよ」
セーラ「そうだね!あっ!待って!!」
セーラ『ゴンー!!待ってってばー!!』
響く彼女の声。
そして長い髪がなびいてまたあの甘い香りが鼻をついた。
彼女が走るたびイヤリングが揺れて喜んだ。
ゴン「キルアー!キルアもおいでよー!
置いてっちゃうよー!!」
キルア「先行ってろよ。後で追っかけるから」
ゴン「待ってるからねー!」
俺は笑顔で手を振る。
笑顔の裏でホントは泣いてる。
「親友の女に惚れるなんて…最悪…」
お前が誰と愛し合っても、俺はやっぱり
お前が好きだから。
友達という立場でも、少しでもお前の側で
生きられたら、それでいいから。
日に日に俺が俺でなくなっても。
残酷な天使の笑顔に寄り添い続けたい。
雨が降ってきた。
俺のところにだけ。
1粒、2粒。
3粒目は俺の頬から首元に曲線を描いて。
彼女が走るたび揺れる貝殻が
シャランシャランと音を立てる。
シャランシャラン。
俺の心が壊れる音と似ていた。
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