ある日の出来事
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もう朝の10時だというのに
なかなか彼が起きてこない。
あの子低血圧だからな。
朝に弱いのよね。
寝室へ眠る彼を起こしに行く。
「キルアーもう10時だよ。ご飯食べよ」
シーツを避けると、
少し気だるそうなキルアの顔が覗のぞく。
そんなに眠いのかな?
「大丈夫?まだ寝たい?」
「…セーラ…寒ぃ…」
珍しい。
いつも私の方が寒がりで、
キルアが温めてくれるくらいなのに、
今日はいつもの逆だ。
「ぎゅって…して…」
「分かった」
小さく震えながら身を寄せる彼の体をさする。
彼が気持ちよさそうに「温かい」と言うから、
少し安心して、そのまま私たちはまた眠ってしまった。
ふと目が覚めた。
やっちゃった…一緒に寝てたみたい。
…なんだが異常に熱い。
キルアの額に手を当てると焼けるように熱く、
汗で服がびっちょり濡れていた。
あれだけ寒がっていたのは熱が出る前兆だったようだ。
「大変っ…。着替えなくちゃ!」
うなだれた彼の汗を拭き、必死で着替えさせた。
「ちょっと待ってて!今薬持ってくるから!」
「待って…」
力なく私の腕を掴むキルア。
瞳は潤んでいて、まるで弱った子猫のようだった。
「行かないで…側にいてよ…」
いつも気丈な彼がこれだけ弱っているなんて。
余計に不安になってしまう。
「大丈夫だよ。ここにいるからね」
「うん…」
頭を撫でてやると、安心したのか、
彼は再び深い眠りについた。
体がだるい。
頭がガンガンする…。
目を開けると部屋の天井が映って、
額には冷たいタオルが置かれていた。
奥の部屋から音がする。
きっとセーラがなにかしているんだろう。
俺、風邪ひいたのか…。
かっこ悪。
「あ!目が覚めた?」
寝室の入口からひょこっと顔を出したセーラは
出来立てのお粥と薬を運んできた。
「熱は少し下がったみたいだけど、まだ高いからね。
安静にしてて」
「せっかく今日、お前と出かけるつもりだったのに…」
「デートはいつでも出来るじゃない。
今は体調を整えることが最優先!はい!」
元気よくセーラは水を差し出してきて、
俺は乾ききった喉にそれを流し込む。
うわー、俺ってばすげー病人みたい。
彼女がお粥をフーフー冷まして、俺の口元に運ぶ。
なんか恥ずいし。
「食べないの?」
「食う」
「…おいし?」
「…まぁまぁ」
俺好みの味付け。
セーラの愛情を感じる。
普段食べさせてもらうことなんてないから、
恥ずかしいけど、なんだか少し優越感。
薬を飲んで、再び布団に包まる。
セーラが優しく髪を撫でて、キスをくれた。
なんか、熱のせいなのか、ムラムラしてくる。
「ゆっくり休んでね。また顔のぞきにくるから」
「ああ」
「おやすみ」
「待って」
「ん?」
「……なんでもない」
「変なキルアー」
部屋のドアが閉まる。
布団を顔まで被って幸せの余韻に浸る。
こんなに可愛がってもらえるなら、
風邪をひくのも悪くない。
「ありがと、セーラ」
俺は瞳を閉じた。
風邪が治ったら、一番にあいつの
行きたい場所に連れてってやろう。
そんなことを思いながら。
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