彼を追いかけて
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バレないようにバレないように。
気配を消す。
不自然な素振りはしない。
至って平常心…を保とうとするけど、大丈夫かな?
不安を抱きながら私はキルアの少し後ろを走っていた。
私はキルアの許嫁のセーラ。
数日前にキルアが家を飛び出して、
ハンター試験を受験するという情報を聞きつけ、
現状に居合わせている。
まさかキキョウお母様を刺すとは
思ってもみなかったけど、
お母様もキルアに厳し過ぎ。
キルアが家を飛び出すことは予想の範囲内だった。
一次試験が始まって、受験生は地下道を走り出して、
キルアのあとを追って私も必死のパッチよ。
同い年くらいの男の子と仲良く
走ってるけど、友達かな?
気になる気になる気になる。
試験開始から2時間経過。
息が乱れて、足がもつれる。
キルアともかなり距離を離され、
実力の差を思い知らされる。
「駄目だ…っ」
受験生の軍から外れ、地面に膝をつく。
息が整わず、そのまま彼らの背中を見送る。
やっぱり私じゃ、無理だったのかな…
なんて、俯いていた時。
「バレバレ」
「…!!」
視線の先に人が立っていて、
見上げると私の旦那様の顔があった。
「なんでお前がここに?」
「分かってるでしょ…キルアが心配だったから…」
「余計なお世話だよ」
キルアは溜息をつきながら、私の前にしゃがみこむ。
「いつから気付いてた?」
「定食屋に入る前から」
「…さすが、キルア」
「おふくろに頼まれたのか?」
「違うよ。私の意思だよ」
「帰んな。お前の実力じゃ到底進めやしない」
「嫌よ。キルアと一緒にいたいもの」
「ワガママ言えるような状況じゃないの分かってる?」
キルアは私の顎を持ち上げた。
「帰れ」
「やだ」
「死ぬぞ」
「キルアと帰るまで死ねない」
そう言って睨むと、呆れた顔で私を見た。
「勝手にしろ」
そう言い残して、私の前を去っていく。
負けない。
キルアの傍にいたい。
その一心で立ち上がるけど、
足が痛くて思うように歩けない。
数メートル進んだあと、またしゃがみこむ。
悔しさで泣きそうなった。
「おい」
いつの間にか覗き込むような形で目の前に
キルアが立っていて、涙を指で拭ってくれた。
「昔からセーラのその顔に弱いんだよな」
「キルア…」
「約束しろ。俺の傍から離れないこと」
「…うんっ」
「危ない時は俺を呼ぶこと」
「うんっ」
「他の男になびかないこと」
キルアは私の唇にキスをした。
いきなりのことで驚いて、頭の中が真っ白になる。
立ち上がって私に言う。
「行くぞ、セーラ」
鉛のように重い脚を必死で動かす。
「早く着いてこいよ。……俺の嫁だろ?」
照れながら呟いたその言葉で疲れが
ぶっ飛んで、勢い良く立ち上がった。
彼のあとを追って走り出す。
そしてこれから私の旅が始まる。
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