deep(裏)
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺は家を飛び出した。
初めて母親に反抗した。
もう殺しなんてうんざりだから。
普通の暮らしがしたかった。
夜の遊楽街を歩く。
酒が飲みたいわけでもない。
ただ一人でいたくないだけ。
そんな俺にある女が声をかける。
「哀しそうな目してるね」
薄手のドレスにガウンを羽織り、壁に
もたれたそいつは俺を見据えてそう言った。
「なんだよ」
「今にも死にそうな顔」
「死にそう」って、なんだよ。
いっそ俺のこと殺してくれよ。
「来なよ」
女に手を引かれ連れていかれたのは、泡屋。
いわゆるソープだ。
こいつ娼婦だったのか。
そいつは「出勤します」とフロントで
鍵を受け取り、俺を部屋に引き入れた。
部屋のベッドに座り、俺を隣に呼んだ。
「座れば?」
「いい。立ってる」
「あ、そ」
煙草に火をつけた女は俺を見つめる。
またあの見透かすような目で。
「なんで俺に声かけたの?」
「んー、なんかほっとけなくてね」
「ほっとけない?」
「私と似た目をしてたから」
彼女の目は澄んでいるようで、
どこか哀しい色をしていて、
俺をなにかへ引き込んでいく。
「俺に抱いてほしいの?」
「は…違うわよ。一人じゃ寂しかったんでしょ。
私もそう」
「一緒にいよう」と彼女は言った。
久々にかけられた優しい言葉。
なんだか嬉しくて、女の隣に腰掛けた。
「名前は?」
「セーラ」
「俺はキルア」
煙草の匂いに混じって香ってくる女の匂い。
歳を聞くと俺の一つ上だった。
歳に合わない仕草が娼婦の貫禄を出している。
「母親と喧嘩して飛び出してきた」
「家出ねww」
「俺の家、殺し屋でさ。
親の俺に対する期待が凄くて、
なんだか窮屈で、嫌気がさした」
「そっか」
「…驚かないの?殺し屋って聞いて」
「全然。でもあんたに殺しは向いてないよ」
チラッと俺を見たセーラは俺の頬を撫でた。
「本当は純粋で澄んだ目してるのに、
親のせいでくすんじゃって。
もったいないね」
会ったばかりなのに、なんでこいつは
俺のことが分かる?
泣きそうな俺をセーラは優しく抱き締めてくれた。
「泣いていいよ」と言われている気がして、
セーラの腕の中で声を出して泣いた。
彼女のドレスに沢山染みを作った。
次の日、俺は店を出たあと屋敷に向かった。
セーラに「家に帰れ」と言われたから。
「帰る家があるなら帰った方がいい。
私には物心ついた頃から両親がいないの。
でもあんたは違うでしょ。
母親もどんな形でもあんたを愛してる。
出ていくならケジメつけな」
胸に響いた。
俺の新しい人生のために。
自由のために俺はあの家を捨てる。
1/2ページ
