危険な女
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おふくろが婚約者候補を連れてきた。
今回が初めてじゃない。
どうせきっと今までみたいな
俺の好みとは全く違う女だと思う。
「キル、紹介するわね」
おふくろの後ろから現れたのは、
小柄で大人しそうな女。
「セーラさんよ。シルバの旧友、
ゴルド様のご令嬢よ。
仲良くなさいね」
俺の兄弟には常に2、3人の婚約者候補がいるから
(俺は気に入らないと、すぐ出禁にするけど)
今回みたいなこともそんなに特別なことじゃなかった。
「若者二人で話しなさい」とおふくろは
部屋を出ていった。
部屋に残された俺は無言で、その女も
そわそわしながら何も喋らなかった。
「なに突っ立ってんだよ。こっち座れば?」
「はい…」
自信なさげな声を出して、
俺の椅子の前にあるソファに腰をかけた。
栗色の艶のある長い髪、白い肌、整った顔。
容姿は今までの候補の中でダントツ一番だった。
「(まつ毛長っ。)
セーラっていったっけ?」
「はい…。初めまして…。」
なんだか気弱そうで、逆に心配に
なってしまう程頼りない雰囲気だ。
今までの女は気がキツくて、プライドが
高いやつばっかりだったから、意外過ぎる。
「いくつ?」
「12です」
同い年か。
歳より大人っぽく見える。
「ぶっちゃけお前もこの話乗り気じゃないんだろ?
親が決めた結婚なんてダルいよなー」
「そんなことありません…っ!!」
初めて聞いたセーラの大きな声。
「私は幼い頃からキルア様の妻になる為に
日々精進してまいりました。
キルア様の為ならなんでも出来ます」
暗殺一族同士の政略結婚。
良好な交流や縁談を結び、
両家のビジネスの均衡化(仕事の紹介、
協力、ビジネス上のトラブル防止)の為。
そしてなにより、より優れた子孫を残すことが目的。
そんなこと、分かってるんだろ?
「信じられないね。名家のゾルディック家
の金や地位が目当ての女なんてごまんといる」
「そんな酷いこと…っ」
「なら、俺に全てを捧げる覚悟ある?」
「分かるだろ?」とあいつのブラウスの
前ボタンを一つ外してやる。
それだけで赤面して固まってしまった。
「出来ないだろ」
「出来ます!!」
そう言って彼女は自ら一つ、
また一つとボタンを外していく。
恥じらうように腰までブラウスを
下ろしたセーラは小さな声で言う。
「私の全てはキルア様のものですから」
今までの自分から服を脱ぐようなゲスい女どもとは違う。
こいつは純粋で従順。
主人の命令を素直に受け入れる犬のような女。
「キルア様…」
潤んだ瞳で俺を見る姿はまさにチワワ。
なんだか虐めているようで気が引けた。
「冗談だよ!早く服着ろよ!」
なぜか胸が高鳴って、声が大きくなってしまう。
セーラはしょんぼりしながら、身なりを整えていた。
「半端な気持ちじゃないのは分かった。
とりあえず今日は帰って」
「……はい」
落ち込んだ様子で席を立つセーラは
足元にあるものを見つけたらしい。
「きゃあああぁあ!!!」
「!?」
そして物凄い勢いでこちらに抱きついてくる。
「…なんだよ。ネズミか。
この屋敷じゃよく出るんだ」
そう言って自分の胸元に目線を落とす。
俺にしがみついて震える彼女が可愛く見えた。
「ホント犬みてー」
「えっ?」
ほら、その見上げる顔なんてまんまチワワ。
「うわっ!」
体重が偏った椅子はバランスを崩して、
大きな音を立てて倒れた。
俺はセーラに組み敷かれるような形になる。
「…っなに見てんだよ」
「憧れのキルア様に会えて嬉しくて…」
そう言って涙目で俺の胸に顔を埋める。
初めて会ったにも関わらず愛しそうに
俺を宝物かのように扱う彼女に
ドキドキしてしまう俺がいた。
心臓がうるさい。
「お前、俺が好きなの?」
つい聞いてしまった。
「はい。父に紹介を受けてから、
お会いする前からキルア様に惹かれておりました。
あなたの妻になりたいと本気で思っています」
「んん…っ」
セーラから求めてきた口付け。
意外にも大胆なあいつのキスは俺の
唇をついばむように優しく、そして力強く吸い付く。
俺の背中に回すセーラの手が力強くなって、
いつの間にか俺もあいつの頭に
手を回し、唇を堪能していた。
セーラを試すかのように舌を侵入させると
慣れない仕草でゆっくりと俺のに絡めてきた。
離された唇同士からは透明の糸が伝って、
濃厚なキスだったことを理解させる。
女にリードされるなんて初めてだ。
「キルア様も私を…好きになって…?」
こいつ、やばい。
力強くあいつを俺から引き剥がす。
鼓動がさらに早くなって、動揺を隠せない。
顔があまりに熱くて、
まともにセーラを見れなかった。
「(…俺、こいつに…ハマっちゃったかも…)」
忠犬みたいなこの女。
そして俺の心を掻き乱す、危険な女。
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