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※単行本13巻のグリードアイランド編
(プレイヤー選考試験前)のエピソードから
オリジナルで夢小説を書きました。
サイト休止期間中にTOPに載せていたものです。
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今まで4人と過ごしてきた日々はとても刺激的で
ワクワクして、飽きる日なんてなかった。
こんな形でさよならなんて、ごめんね。
私は、私の夢のために、ここを立ちます。
ハンターになったら実現したいこと、叶えたいこと、
まだいっぱい残ってるから。
でも湿っぽいのは苦手。
だからあえてさよならだってことは言わないでおくね。
相変わらず私の荷物は少ない。
小さなリュックに全て詰め込んでもまだこんなに余裕がある。
そんな軽いリュックを背負って私は部屋を出た。
この廃墟ビルはどこもガタが来ていて
風が吹くだけで窓柵がガタガタ揺れた。
ゴンの部屋を訪ねてみた。
何度ノックをしても返事がないので中を覗くと
疲れ切って床で寝ている彼を見つけた。
確か必殺技(発)を練習中のゴン。
一日中修行してるんだもの。
こんな風にもなる。
額に光る汗を拭いてあげようと手を伸ばすと
彼の手が私を掴んだ。
「ゴン?起きてるの?」
「本当に…落ち着く匂い…」
寝言かな?
全く目を開かない。
「今までありがとね、ゴン。私行くよ」
手を握ると彼は穏やかな顔で笑ったように見えた。
「……き」
「え…なに?」
「…す…き…」
「…っ!?」
これもただの寝言だよね?
誰のことか気になったけれど穏やかに
眠る彼を起こすのは忍びない。
そっと彼の指を抜け出して頭を撫でてあげた。
「またね」
そして静かにその部屋を出た。
隣のキルアの部屋のドアにはでかでかと
「誰も入るな」と貼り紙がしてあった。
これはお邪魔出来そうにない。
残念だが仕方がない。
心の中で「ばいばい」と手を振った。
そして私はその足でクラピカの部屋へ向かった。
そっと中を覗くとクラピカは静かに寝ていた。
彼は旅団との対決で念も精神も消費し過ぎた。
ここに運ばれてからは、うなされては起きる。
そして寝るの繰り返しだ。
珍しくセンリツさんもゼパイルさんも居なかった。
買い物にでも出たのかな?
私はクラピカの横に座り、ぬるくなった
タオルを新しいものに代えた。
まだ熱があるみたいだ。
こんなになるまで復讐に身を投げるあなたが
私はとても心配だ。
死に急いでいるようで。
身を滅ぼしそうで。
「…行くのか?」
「!?…起きてたの?」
「誰かが部屋に入ってきたくらい分かるさ」
目線だけをこちらに向けて彼は笑った。
「ここを離れるのだろう?」
「知ってたの?」
「そんな気がした」
「その通りなの。ごめんね…。クラピカが大変な時に」
「構わない。
反対に謝らなければいけないのは私の方だ。
私の身勝手な行動にお前たちを巻き込んですまなかった」
「いいのよ。仲間だもの」
何故か自然に手が触れ合っていた。
彼の冷たい指が少しでも温まるようにぎゅっと握った。
「クラピカ…死なないでね」
「……ふっ」
彼はまた優しい笑みを零した。
「死ねはしない。私のすべきことはこの先ごまんとある。
…それに、生きてまた、お前に会いたい」
愛しげに頬を撫でられ思わず勘違いしてしまいそうになる。
「クラピカ…今はとにかく休んで?早く元気になってね」
「ああ。そうさせてもらう。気を付けてな。
こんな状態での見送りで悪い」
「ううん。最後にクラピカの笑顔が見れて良かった」
「また会おう」
離れていく手が少し名残惜しく思えたなんて、
口が裂けても言えなかった。
部屋を出て廊下を歩いていると買い物袋をさげたレオリオと会った。
「よぉ」といつものようにゆるく手を挙げて、笑っていた。
「なんだ?お前も買い物か?」
「……うん。そうだよ」
「傘持ってけよ。雨降り出したから」
「ありがとう」
言いたい言葉をぐっと飲み込んで彼の笑顔に応えた。
「ん?ちょっと止まれ」
「えっ?なに?」
彼は私の曲がった襟元を直してくれた。
長身の彼が私の目線に合わせようとすると
大きく膝を曲げ、屈まなくてはならない。
まるで子どもの世話をするように。
顔が近くて、ドキドキしてしまう。
息が顔にかかるよ。
「顔…近いよ…レオリオ」
「ああっ!すまねぇ…!」
慌てて身を離した後、彼は頬を掻きながら言った。
「夕方には帰ってこいよ!今夜はなんと
レオリオ様お手製のスペシャルディナーだからよ!
お前らやクラピカのやつにも栄養付けさせてやりてーしな」
「なっ」と笑顔で優しく語りかける彼の前で「さよなら」なんて言葉やっぱり使えなくて
私はただただ精一杯微笑んだ。
本当にあなたは、純朴で優しい。
きっといいお医者さんになれるよ、レオリオ。
手を振って彼とは別れた。
廃墟を出ると見慣れた街並みが並んでいた。
列車を使って空港へ出よう。
ケータイを見ながら目的地へ向かおうとしたその時だ。
ふと視線を感じ目線を上げると見慣れたツンツン頭の彼がいた。
「キルア…」
「あっれー?俺には挨拶もなしで出てくわけ?」
「だって『誰も入るな』って…」
「そんなの書いてたっけ?」と
惚けたふうに彼は私の方に歩いてきた。
鋭い視線に見つめられて私は思わず目線を逸らした。
「こっち見て」
顎をクイッと持ち上げられる。
無理矢理彼の方を向かされる。
「俺が気付いてないとでも思ってた?バレバレだっつーの」
「はいはい。あなたには一生敵いませんー」
「俺と会えなくなって寂しいだろ」
「えっ?そんなこと…」
「…寂しいって…言えよ」
…え?なに?拗ねてる?
「内緒で出ていこうとしたから拗ねてるの?」
「ば…っ!ちげーよ!お前にはいっぱい貸しがあるんだ!
それを忘れられちゃ困るから釘さしに来たんだ!」
「いたっ」
額をこずかれて少し痛かった。
相変わらずこういうところは不器用なんだから。
「ゴンのこと頼むね」
「ああ。当然」
振り返ると戻りたくなってしまう。
このまま進むんだ。
すれ違いざまに交わしたこの会話が最後になると思っていた。
「なぁ!」
「…?」
彼は声を張り上げて言った。
背中に語り掛けてくる大きな声。
「また帰ってくるんだろ?」
その言葉に私は天に向かってピースサインをした。
「とーぜん!」
きっと彼も私と同じように笑っていたと思う。
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