愛をこめて
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「さぁ!召し上がれ♪
腕によりをかけて作りました!!」
「サンキュ。手料理なんて久しぶり。
ゆっくり食わせてもら……う”っ…」
上機嫌で手を伸ばした食卓の上で目の当たりにしたもの。
この赤くて嫌に主張の強いこいつは…。
「…?どうしたんですか?」
「いや…これって…」
あ…赤ピーマンじゃねーか…っっ!!
この俺が唯一この世界で苦手とする食材。
うまそうなスープの中で堂々と泳いでやがる。
あえてそれをこんなダイレクトに
ぶち込んできやがるとは…まさかこいつ…確信的に…?
いや…その表情見ると、全くそのことを知らないみたいだ。
俺はニコニコと食事を見守るセーラにバレぬよう
自然に赤ピーマンをよけて食べ進めた。
「キルアくん…?」
「あっ?なに?」
「なぜ赤ピーマンだけ食べないのですか?」
「(ギクッ)」
セーラって天然なくせして、
こういうとこは鋭いんだよなー。
「だって…嫌いなんだもん」
「駄目です!そんなことしてたら大きくなれませんよ!」
「お前までミトさんみたいなこと言うなよ!
ってか、ガキ扱いすんな!」
「しますよ!そんな子どもみたいなこと言ってる
キルアくんになんて私のご飯を食べてほしくありません!」
「ちょ…っ!セーラっ」
そう言ってせっせとテーブルの上の食事を片付け始めた。
俺は慌てて彼女の手を止めさせる。
「分かったよ!食べるから!…怒んなよ」
スープの中で浮かんでた憎きやつをスプーンですくって、
匂いも形も体が認識する前に俺は口に突っ込んだ。
少し体が拒絶したけど無理矢理
喉の奥を鳴らし、ゴクンと胃の中へ流し込む。
「う”っ…んっ…」
あぁ…。
もう泣きそう…。
何してんだろ俺…。
けど、愛するセーラの手料理だ。
残さず食ってやりたいのが本音。
俺は涙目になりながら残りの赤ピーマンを全て平らげた。
「く…っ食ったぞ…。どうだ…」
「えらい!キルアくん!私とても嬉しいです!」
自分のことでもないのにこんなに笑顔で
喜ぶ彼女を見てたらなんだかこちらまで口元が緩んだ。
こんな可愛い顔を見れたんだ。
頑張ったかいがあったかな。
そしてセーラは「さぁ♪さぁ♪」と上機嫌で他の料理を振舞ってくれた。
おいしい…。
さっきはそれどころじゃなかったけど、今なら分かる。
料理ひとつひとつに彼女の心が、
愛情が込められていて。
ひとくち含むだけでなんだか温かい。
俺…愛されてんなぁ…。
「なに突っ立ってんだよ。お前も食えよ」
「あ…そうですね。私の分も持ってきますね」
「……」
「どうしたんですか?」
「…そっちも美味そう」
「んん…っ!?」
なんだかんだでどの料理よりも目の前にある
お前の唇が一番美味そうに感じて、
腕を引いて俺はそいつに口をつけた。
何度も重ねて、交差させ、時折舌で舐めとる。
目をぎゅっとつむる彼女の表情。
俺の服の袖を握る手。
時折漏らす甘い声が、俺の本能を違う方へ駆り立てる。
あ…ちょっと早かったかな。
デザートは最後にとっとかなきゃね。
ここ(食卓)でじゃない。
この奥にあるスイートルーム(寝室)で…。
心ゆくまで、味わってやるよ?
苦手なもの食べてこれだけ頑張ったんだから、
ご褒美…もらわなきゃ、だろ。
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