告白
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夕日が差し込んできた。
放課後の教室で私は彼を待つ。
彼から貰ったジュースはもう30分も前に飲み切ってしまった。
校舎外のグラウンドからは部活に励む生徒の声が響き、
無言の私に「早く帰れ」と言わんばかりに何度も耳を貫いた。
ゴン「遅いねー、キルア…」
私の隣で待ちくたびれたとゴンはうなだれ、
さっきまで読んでいた漫画を再び読み始める。
しかし彼が帰ってくる気配はない。
事の発端は、授業が終わりキルア達と帰ろうとした時だった。
見覚えのない女子生徒達が教室の前に数人立っていた。
落ち着かない素振りを見せ、尋ね人は「キルア先輩いますか?」
と小さな声でクラスメイトに話しかけていた。
お呼びの声がかかりキルアは席を立った。
私に「待ってろ。すぐ戻る」とだけ告げて。
それから何分経っただろう。
時計に目を移すともうすぐ1時間を過ぎようとしていた。
きっとあれは…告白だ。
キルアは学校一の人気者で、先輩後輩問わず
多くの生徒からの人気を博している。
こんな展開なんて…今まで何度も見てきた。
でもその度「かったるいから行かない」と、
彼はその場にさえ行かなかったのに、今回は…。
素直に後輩について行った彼の背中に何かを感じながら、
再度飲みきったジュースのストローを口に含んだ。
ゴン「…先に帰る?」
セーラ「……そうしよっか」
そう言って席を立った時だ。
教室のドアにもたれ掛かるキルアの姿があった。
キルア「お待たせ」
ゴン「キルア!遅かったじゃない!待ちくたびれちゃったよ!!」
キルア「悪ぃ悪ぃ。帰りになんか奢ってやるから」
まるで何もなかったかのように笑顔で鞄を背負い、帰ろうとする。
その口は何も語らない。
一体何があったの?
彼女になんて言われたの?
そして、あなたは、なんて、返したの?
キルア「セーラも行くぞ。うわっ。お前どんだけストロー噛んでんだよ。
欲求不満か?なーん…つっ…て…」
彼は私の顔を見て言葉を止めた。
ああ。
この頬に感じる温もりはなんだろう。
目頭がとても熱くて、視界がぼやける。
おまけにキルア達の顔も見えなくなってきて、
それが涙と気付くのに時間はかからなかった。
ゴン「セーラ…?」
キルア「悪ぃな、ゴン。先行っといて」
ゴン「わ、分かった」
キルアは無言で私の手を引き歩いた。
その手はとても温かくて、愛しくて、この涙の意味を
嫌でも分からせてしまう。
「なに、泣いてんの」
「ぐすっ…ずっ…」
「泣いてちゃ分かんない。教えて」
彼はハンカチなんてそんな気の利いた物持ってない。
キルアの綺麗な指が私の下瞼を添い、頬、そして顎を漂った。
なぜ好きでもないのにこんなことが出来るの?
なんて、残酷な人。
「あの女の子には…っ、なんて言われたの…?」
「はぁ?…ああ。告られた」
「(やっぱり…)…なんて答えたの?
帰りが遅かったから…きっと
くっついたんじゃないかって思ってた」
「そうだよな。あんなに可愛い子なら…付き合っても悪くないよな」
ズキンッ…
胸に鈍い痛み。
無神経で、クールで、嘘つき。
そう、いつも。
「帰ろう。なっ?」
そしてそんな風に自然に手を繋いでくる、気まぐれな優しさ。
吐き気がする。
でも、
好きなの。
この想い、いつ、伝える勇気が湧いてくるのかな?
「いいの?彼女がいるのに私となんか手繋いで…」
「んー?なんで?」
「だから、付き合ってんでしょ。その子と」
「どうだろーねー。こんな手のかかる幼馴染がいちゃ
うかうか彼女も作れないってねー」
「え?」
「まだ成就する日は遠いかなー」
「えっ!?だから、どういうこと!?」
ゴン「キルアー!セーラー!早くー!!置いてっちゃうよー!!」
キルア「今行く!!ほら!行くぞ!セーラ!」
セーラ「や…っ!そんなに引っ張らないで…っ!!」
後から分かった話。
今回声を掛けてきた生徒はキルアの部活の後輩で、
彼は恋愛相談に乗っていたそう。
その相手が自分とも知らずに、今日もその誘いに乗ってついて行ってしまったという。
付き合ってるのかって?
……それが…キルアは断ったみたい。
とりあえず一安心…。
でも、まだ、勇気が出ないから。
この想い、もう少し温めてても、いいよね?
キルア「なんでOKしなかったって?だって興味ねーし。
俺の相手はあいつって…もう決まってんだからさ」
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