もう離さない
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私は彼氏とケンカをした。
この煮えくり返った行き場のない思いを
打ち明けられるのは、この世で一人、彼だけだ。
「でねー!酷いんだよー!」
「はいはい」
声を荒らげて愚痴をこぼす私を呆れた顔で見る彼。
彼の名前はキルア。
私の幼馴染で、こんな小さい時からずっと一緒で、
誰よりも心を開ける大切な人。
何かあれば私はキルアを呼び出し、
それに文句を言いながらも必ず
来てくれる彼の優しさにいつも甘えた。
「そしたらあいつなんて言ったと思う!?
『浮気されるお前も悪い』とか言うんだよ!!
有り得なくない!?」
「まー、そいつの気持ちも分からなくはないけどね」
「キルア…?💢」
「そー、突っかかるなよ」
キルアは私の髪先を指に巻いて、深く考え込む。
「しかもお前の彼氏はセーラのこと全然分かってねーよな」
「例えば?」
「負けん気強くて男勝りなとこもあるけど、
実はさみしがり屋で繊細なとことか」
「いいこと言うじゃん」
「んで、束縛心がすげー強くて、重くて、
めんどくさくなるタイプだってとこも」
「それは言わなくていい…暗くなる…」
まっすぐ私を見据えながらそう言った
彼の表情はひとつも変わらない。
相変わらずキルアは私のことをよく分かっている。
「キルアがあいつにそれ言ってきてよ」
「やだよ。俺、お前の彼氏嫌い」
「なら電話でもいい」
「しつこい」
「あー。帰りたくないなー」
側にあったソファに倒れ込み、私はため息をついた。
それを聞いた彼の視線がぐっとこっちに向いた気がした。
「いいよ」
そしてキルアは私の腕を掴んだ。
とっさに振り向いた私の顔を見て、
「いいよ。帰んなよ」
と、言った。
なに…そんな、マジな顔。
いつもの冗談だよね?
キルアが私にそんな言葉一度も…。
「冗談だと思ってんだろ」
「きゃあ…っ!」
キルアは私を引き寄せ、腕の中に収めた。
私の顔が彼の胸元へ。
心臓の音が大きく早く、脈打っている。
「すごい心臓の音…。ドキドキしてるの?」
「……お前のそばに居ると…いつもドキドキしっぱなしさ…っ」
「ん…っ」
不意に唇を奪われる。
状況が掴めなくて力任せに彼を押しやるけど、
彼のがっちりした腕からは逃れられない。
目線の行き場が分からずぎゅっと目をつぶると、
軽く笑ったキルアが「可愛いやつ」と言って、頭を撫でた。
「分かったか。バーカ」
「…えっ?」
「…まだ分かんねーのかよ。
お前のこと、好きなんだよ」
「へー……ぇ……ぇえぇええっ!?」
「この鈍感」
指でおでこをつつかれる。
予想外の出来事にどうしていいのか分からない。
「お前と初めて会った日から…ずっと。
俺はセーラが好きだった。
ずっとお前のこと大切にしてきたのに…
彼氏なんか作りやがって。
しかも同棲なんかしてるし。ムカつく」
「…キルア…」
「お前は、誰にも取られたくねーの」
いつの間にか彼の手が私の手を握っていて、
そっと持ち上げ唇を寄せた。
「あんな奴やめて、俺のものになれよ。
俺はお前を泣かせない。一生大切にする」
「…っ///」
キルアのそんな目、初めて見た。
キルアの言う通り冗談じゃないのね…?
胸の高鳴りを抑えられず、口ごもる私の唇に
再度口付けたキルアは今度は優しく微笑んで、
「もう離すつもりないけど」
と言った。
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