BLOOD
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「いたっ…」
「どうした?」
後ろに視線を向けると眉をひそめながら痛みをこらえるセーラがいた。
どうやら本のページで指を切ってしまったようだった。
「ドジだな。指貸しな」
「え…っ、キルア…!」
俺はあいつの手を掴んで血の滲んだ人差し指に吸い付いた。
舌で血を舐め取り、唇で吸う。
口内に広がる鉄分の味。
俺が毎日のように見る、人間の血の味。
最初は血を見るのも嫌だったけど、家柄上そんなこと言ってもいられず。
親父や兄貴の仕事に付いていくにつれて、
恐怖すら感じなくなっていった。
指を吸いながらちらっとあいつを見ると
すっげー真っ赤な顔で俯いていた。
きっと目は潤んでる。
そして、俺にときめいてるのだ。
もったいねーよ。
俺にそんな感情抱いたって。
俺はお前の気持ちには応えられない。
「わり。血を見るとつい自分の時もこうしちゃうんだよね。
ほら、止まった」
「ありがと…っ///キルア」
お願いだから、俺を、好きになんてなるな。
俺は闇世界の人間。
交わることは、二度とない。
ただ偶然今一緒にいて、空間を共有しているだけだ。
いつかサヨナラが来る。
俺にかかればお前のこの指を、腕を。
首だってへし折ることは造作もない。
心臓を抜くのだってそうだ。
今すぐにでも、出来るんだぜ?
今じゃ人間の血や心臓の色の違いを知りたくなったりもする。
こんなこと考えてる人間に、惹かれんなよ。
「絆創膏貼れた」
「ありがとう」
セーラは嬉しそうに人差し指を眺め、言うのだ。
「もしキルアが怪我したら今度は私が手当してあげるからね」
「え…」
「キルア、優しいのね」
『優しい』。
そんな言葉、今まで誰も、くれなかった。
でも彼女は心からそう思っているのだろう。
赤く染める頬も、熱くなる指先も、
温かいその笑顔も、全て。
俺には眩し過ぎて、彼女が愛おしく思えた。
「気を付けろよな…っ///」
こんな気まぐれな優しさにさえ微笑む彼女に、
俺は少し救われたような気がしたよ。
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