別離
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俺はセーラに呼び出された。
行き先はいつも二人で過ごした思い出の場所。
待ち合わせの時間よりかなり早く着いてしまった。
見晴らしのいい丘からは海が見えて、
潮風が俺を冷たく冷やした。
私はキルアに声をかけた。
「いつもの場所に来てほしい」と。
足取りはなんだか重くて「本当は行きたくない」
って体が訴えているようだ。
昨日私はゴンから告白された。
予想もしてなかったけど、
普段から私を思いやる姿が見えていたから、
嘘ではないことははっきり分かった。
「お待たせ」
セーラの声が後ろから聞こえてきて、俺は振り返る。
どこか悲しそうなセーラの顔に
どんな表情を返してやればいいか迷ってしまう。
「久しぶりだね。二人でここに来るのは」
「ああ」
俺は度々一人で来ていたけど、
ある日を境にセーラはいっこうに
ここに来なくなった。
その理由はなんとなく分かっている。
「昨日ゴンに告白されたんだ」
「知ってる。ゴンに聞いた」
「そっか…」
「で、お前はどうすんの?」
俺は芝生に寝そべるように空を見た。
悲しい青が広がっている。
「あいつ本気だよ。お前のこと本当に大切に想ってる」
「うん…」
言ってしまった。
私は言ったあとに後悔してしまった。
私が好きなのは、キルアなのに。
でもキルアには一族が決めた許嫁がいる。
以前一度会う機会があって、私にも紹介された。
美人で人当たりもよく、キルアにとてもお似合いな人だった。
キルアも満更でもなくて、両想いなのは
誰が見ても分かった。
「俺は嬉しいよ」
嘘だ。
「二人とも幸せになってほしい」
違う。
「お似合いだと思うんだよね」
なんで思いと反対のセリフばかり出る。
俺はずっとセーラが好きだった。
ゴンがあいつを意識するずっと前から
俺はセーラに惹かれてた。
でもゴンがセーラに好意を持ってることを
知ってから身を引くようになった。
気持ちを押し殺して、無理に親が決めた許嫁を
あいつに会わせて、見切ろうとしたんだ。
俺は世も恐れる暗殺一族の人間。
そんな環境にセーラを巻き込みたくない。
「なんでなの…」
「え…?」
「なんで…キルアは…
私のこと…好きじゃないの…?」
「…」
「なんで許嫁が…いるの…」
私は足に力が入らなくて、その場に崩れてしまった。
現実から目を背けるのはもう嫌で、
嫌悪感で頭がおかしくなりそう。
俺はあいつを抱き締めてやりたかった。
セーラの好意に気付かぬふりをして、
お前を突き放したことを謝りたかった。
でもそれは許されないことで、
行き場のない手をぎゅっと握る。
「キルアの気持ちは分かった…」
フラッと立ち上がり、歩き出すセーラ。
「来てくれてありがとね」
背を向けて離れていくセーラを俺は
ただただ見つめ、そのまましばらく動けなかった。
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