cigarette
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薄暗い部屋で煙草をふかしながら、
あんたはいつも俺を待っててくれてた。
「お邪魔ー」
「邪魔するなら帰ってー」
いつもの二人のやり取りで、その日は始まる。
薄暗い部屋、ギラギラした酒瓶、怪しく灯る
ライトの下であいつはいつも俺を待ってる。
何もかも見透かすような瞳でこちらを見て
無言でいつもの席にドリンクを置く。
「また来たのー?」
「悪い?だって暇でさ」
「暇つぶしで来られちゃとんだ営業妨害よ」
この派手な出で立ちの姉ちゃんはセーラ。
この飲み屋のオーナーで、一人で店を切り盛りしている。
店が開くといつも客がゾロゾロ入ってきて、
セーラとゆっくり話せないから、
あえて俺は開店前にこうやって店に訪れる。
「子どもの来るところじゃないっていつも言ってるでしょー。
まだお酒も飲めないくせに」
「金払ってるんだからいいだろ。
常連様なんだから優しくしてよ」
「ふん」
セーラは目線をそらし、煙草に火をつけた。
ベリーみたいな独特の煙草の葉の甘い香りが妙に落ち着く。
「俺にも1本ちょうだい」
「だめ。大人になってからね」
「俺、18だよ」
「嘘つき。マイナス何歳か当ててあげよっか」
「(く~っ)」
セーラは俺をいつも子ども扱いして、
まるで弟かのように軽くあしらう。
人の気持ちも知らないで、弄ばないでくれよ。
「もーらいっ」
「あ!」
俺はセーラの吸っている煙草を隣から
奪い取り、口に含んだ。
「ケホッゲホッ…よくこんなの吸えるなー。
これのどこがうまいんだよ」
「おこちゃまには分かんないよー」
今度はセーラが俺の指から煙草を奪い取り、
得意げな目でこちらを見た。
「そんな俺と歳変わんないだろ」
「8歳も違うのによくそんなこと言えるねー」
「そんなの差に入んないよっ」
ムキになった俺は、煙草を揉み消したセーラの
手を掴み、こちらを向かせた。
「ね、キスしない?」
「…は?」
呆れた彼女は視線を落とし、
「からかわないで」と笑った。
見てろよ。
「んんっ」
俺は力任せにセーラの頭を引き寄せ、唇を重ねた。
持ち合わせた知識をフルに使って、
セーラの中を占領する。
予想外の出来事に彼女は抵抗するが、
俺の力強い腕がそれを許さない。
唇を吸い、歯列を割り、舌を中へ。
ねっちょりいやらしい感触にうっとりしながら、
俺はセーラを攻め続けた。
「キル…ア」
めったに呼んでくれない俺の名前が聞こえてきて、
なんだか嬉しい。
お互い息がもたなくなって、自然に唇が離れた。
セーラは肩を上下させながらこちらを睨む。
「…こんなの誰に教わったのかな?」
「さぁね。もっかいしてほしい?」
「生意気ね…っ」
セーラは口直しのようにまた煙草に火をつけた。
「俺、諦めないよ」
「?」
俺は身軽に椅子から飛び降り、出口へ向かう。
「大人なら、その意味分かるだろ?」
「また明日来るよ」
そう言い残して店を出た。
照れ隠しをするようにセーラが
「偉そうに…」と呟く声も聴き逃しはしなかった。
初めて交わしたキスは煙草の後味で少し苦くて、
でも甘くて、俺の気持ちを更に大きくする。
そして俺は明日もあの店へ向かう。
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