跡形もなく燃え落ちた寺を後に、次元、五ヱ門、煌閃は先を急いでいた。

「ルパンから連絡だ。組織は壊滅させた。ユリアンも死んだ。ロビンも無事だ。」
次元がヘリを操縦しながら伝える。

自分で仇を取れなかったことは悔しかったが、それではロビンが死んでいた。
住職の死から立ち直ったわけではないが、少しだけほっとした。

煌閃は懐から石を取り出す。
住職が命をかけて守ったこの石が何なのか、まだ誰にも分からなかった。

「煌閃、この一件が終わったらお主はどうするつもりだ？」五ヱ門が尋ねた。
「そうだなぁ…俺、帰る場所無くなっちまったもんな…。なぁ、五ヱ門、もし良かったらさ…」
「それはならん！」
「え…」
「これ以上、お主を危険な目に合わせるわけにはいかん！拙者の知り合いの修行者に…」
「五ヱ門、頼む！一緒に居させてくれ！！」
「ならん！」
「俺には安全な場所なんてどこにも無いんだよ！また俺を一人にする気かよ！もっと、強くなるから…足手まといにならないように強くなるから… 頼む…。」
「俺らの仕事はなぁ、常に死と隣合わせだ。ガキがそっから先首突っ込んでいい所じゃねぇ！」次元も珍しく真剣だ。
二人とも今までの日々を思うが故に、煌閃を大切に思うが故に突き放したかった。

煌閃は大きく息を吸い込み、二人をじっと見据えた。
「俺、五ヱ門が大好きだ。次元も大好きだ。だから、これからも一緒にいさせてくれ。一緒に修行してくれ。」
少年ではなく、一人の男として覚悟を決めた姿がそこにはあった。
「…。」
今まで煌閃が自分に対してこんなにも強く言ってくることはなかった。煌閃に圧倒され、二人は言葉が出なかった。

「もう決めたことだ。誰が何と言おうと、俺はついて行く。」
覚悟を決めた目は揺るがない。

ヘリは小国に近づき、速度を落とし始めた。