どれくらいの時間が経っただろうか。
目を覚ました時、ロビンはベッドにいた。
起きあがろうと体を起こそうとするも、体が動かない。拘束されていた。
装備も解かれていた。

襲撃に遭い、その時はなんとか自分の身を守ったが、装備を解かれた以上、ロビンには抵抗できるだけの力はなかった。
装備はロビンの身を守るスーツ。
ルパンとの共作で、運動能力を高め、武器や逃走のための道具が仕込んである。
いくらロビンの手先が器用で、色々なことができるようになったとはいえ、実践のための訓練時間は短すぎた。

「お目覚めか？お姫様。」ユリアンが冷たい笑いを向けて見下ろす。
「宝はどこだ？」
「知らないわよ…。」
「そんなはずはない。お前は、『女王の汀』の対になる宝を持っているはずだ…。」
「なんのこと…？」
「しらばっくれんじゃねぇ！」ユリアンの平手打ちが飛んだ。
「まぁいい…助けなど来ない。じっくり聞かせもらうとするさ。」
ロビンの目に涙が浮かぶ。唇を噛み、天井を見つめた。

不二子はロビンの元に向かっていた。
ロビンに持たせたペンダントは発信機と通信機が内蔵されていた。
最初はお宝のために彼女を利用するつもりだけのつもりだった。
子どもなんて…相手なんて…そう思っていた。
しかし、いつしか彼女と過ごす時間は大切なものになっていた。自分の身を挺するくらいには…。
スロットルは唸りをあげ、敵のアジトに向かった。

ロビンへの尋問は続いていた。
自白強要剤を打たれていた。頭がぼーっとする。意思も体の制御も一切ない。
この数ヶ月、色々なことがあった。目まぐるしく変わる周りと自分…パパ…ママ…ルパン…次元…五ヱ門…煌閃…不二子ちゃん…。
グルグルと回る頭の中で、皆を想った。

どうやらこのまま死ぬらしい…

その時だった。
警報音が鳴り響く。辺りは物々しくなる。

バァン！

勢いよく開けられた扉に立っていたのは、誰よりも会いたかった人…峰不二子がいた。

「不二子ちゃん！！！」
「ロビン！！！…よくも私のかわいいロビンにこんなことしてくれたわね…！許さない…覚悟なさい！」
言うや否や、不二子がマシンガンを乱射する。
敵がベッドから離れたのを機にロビンの拘束を外す。
体を解放されたロビンは起こされ、体を支えられた。
「不二子ちゃん…」
「大丈夫よ。私が一緒よ。」
「…ありがとう。」
体が思うように動かない。
壁際に追い詰められる二人。
「チェックメイトだ。峰不二子。」
「そうね。」
「お前のような女がこんな小娘のために一人で乗りこんで来るとはな。」
「あら、いいじゃない。大事なものを守りたいだけよ。」最期が近づいているのに不二子は笑っている。
「なら、二人で死ね！」
ユリアンが引き金に手をかける。

ガァン！

ユリアンが膝をつき倒れ込む。
ヘッドショットを決められていた。

「…ルパン…。」

ワルサーからはまだ煙がたなびいている。

「お怪我はないか？お姫様達？」
「遅かったじゃない…」
「相変わらず随分な言い様だぜ…。」
「今回ばかりはお礼を言わないとね…ありがとう」
ロビンが気を失い、倒れこむ。
「よく頑張ったな…もう大丈夫だぜ。」
「…ルパン…不二子ちゃん…ありがとう…。」
聞こえるか聞こえないかの声でロビンが呟いた。

「さぁ、不二子、これからどうする？」
「決まってるじゃない。お宝を手に入れるわ。」
「決まりだな。」
「次元たちは？」
「あぁ、あいつらも向かってるぜ。」
「なら、急ぎましょ。」

ルパンがロビンを背負い、三人は施設を後にした。