ロビンの乗った車は速度を上げ、街から離れていった。
もうどのくらい走っただろうか。

ロビンは両親が死んだこと、街がなくなったことが今だに信じられなかった。もちろん、自分だけが生きていることも。
平凡だったけど、優しい両親や温かい街の人たち…その「平凡」だと感じていた日々を思い出していた。
なぜ、こうなってしまったのだろう…私はこれからどうなるのだろう。悲しい、寂しい、怖い…色々な感情が渦を巻いてロビンを包んだ。
そして、その感情は涙となって流れ出した。

「ロビン…」
「峰不二子」と名乗った女がロビンの肩に手を置く。
「いやっ！！」ロビンはその手を振り払い、窓に額を預けて声をあげて泣きはじめた。

「…」
「…無理もねぇぜ…。」運転席の赤いジャケットの男が呟く。
「…ルパン…。」不二子はルパンに視線を送ったが、ルパンは黙って首を振った。

理不尽な悲しみは、怒りへと変わっていく。
「ねぇ！パパは⁈ママは⁈どうして殺されたの？」
「…それは…」
「あなた達は誰⁈何をしに来たの⁈どうして…どうして私をさらったの…？」
「ねぇ！答えてよ！！」

ロビンの叫びが車の中に響く。

「…ごめんなさい。止められなくて…。」
「…え…」
突然の不二子の謝罪にロビンは驚いた。

「止められるはずだった…全部私たちのせい。」
不二子は目を伏せ、絞り出すような声で言った。

「…どういうこと…？」
不二子が何か話そうとした時、車は国境の古城に止まった。
ルパン、と呼ばれた運転席の男がロビンの座席のドアを開ける。

「降りな。お嬢さん。全てを話してやるよ。」

まだ力が入らない自分の体を引きずって、ロビンは古城に歩き出した。うまく歩くことができない。ふらついたところをルパンが支えた。

どうしてパパとママは死んだのだろう。
この人たちは誰？
私は何に巻き込まれているのだろう。

考えても考えても、答えは見つからなかった。