マリンがルパン達の仲間になって半年ほど経ったある日。
マリンは息を切らし、待ち合わせにやってきた。

待ち合わせの相手は八咫烏五郎。

「ごめん！待った？」
「全然待ってないです！僕も今来たところです！」
本当は楽しみ過ぎてかれこれ1時間ほど待っていたとは言えなかった。

八咫烏と付き合い始めて数ヶ月になる。
新しく赴任したこの街で道に迷い、声をかけてくれたマリンに八咫烏は一目惚れをし、猛烈なアタックの末、付き合うことになったのだ。
八咫烏は歳上なのだが、なぜか自分にはいつも敬語で、歳上らしく振る舞わない。
そんな真面目なところが、マリンは好きだった。
ルパン達には彼氏ができたことは内緒にしていた。

マリンは八咫烏と並んで歩き出す。たわいもない話をしながら歩く時間が好きだった。

実はまだ、手を繋いだこともない。

夕陽が二人を照らしだした。
「綺麗な夕陽ー！！」川面に夕陽がキラキラと光る。
無邪気に笑うマリンが八咫烏は愛おしかった。

今日は食事をするつもりだった。
この街にあるタワーの夜景が美しく見えるレストラン。
マリンがずっと来たがっていたので、一緒に行くことにしたのだった。

二人が食事を楽しんでいると、突然銃声が聞こえた。
人々が叫ぶ声、逃げ惑う音が大きくなる。

「マリンさん！僕に隠れてください！守ってみせます！」自然と八咫烏の胸に抱かれる形になった。

その瞬間、レストランの扉が勢いよく開き、二人の男が飛び込んできた！

「ルパン！！こんなところに忍び込みおって！今日こそは逮捕だ！」
「とっつぁんも相変わらずしつこいぜぇ！」

二人の目が、抱き合うマリンと八咫烏に移る。

「！！！…ヤタ！その女から離れろ！！そいつはルパンの女だっ！！」
「！！！… マリン！そいつから離れろ！！そいつは銭形の相棒だっ！！」
ルパンと銭形の声がシンクロする。

マリンと八咫烏は見つめ合い、目を見開いた。

好きだった八咫烏が敵…
愛おしいマリンが敵…

感情が追いつかない。でも、ここで終わりにしなくてはいけない…。
悲しみのあと、マリンは八咫烏の首に手を回し、ほんの一瞬のキスをした。

「…！」

ルパンがマリンを引き離し、銭形と八咫烏にワルサー構える。
銭形もルパンに銃を構えた。そして、八咫烏も…

外からヘリの音が聞こえてきた。
次元がヘリからガラスを撃ち抜き、ルパンがヘリにワイヤーを投げる。
マリンはルパンに抱き抱えられ、空に舞い上がっていった。　

「…ヤタ…。お前…。」
「先輩…いいんです。」銭形はそれ以上何も言わなかった。

アジトに戻り、マリンは窓の外を見つめていた。
ルパンも次元も五ヱ門も黙っていた。
不二子が戻ってきた。窓の外を見つめるマリンを見て、全てを理解したようだった。
「女はね、そうやって強く、美しくなっていくのよ。」

ポロポロと涙が溢れる。不二子はマリンをただ抱きしめていた。