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短編

「寒いね……」

"少女"が、Salvationが手を擦り合わせる。少し眉を下げてくしゅん、とくしゃみをする彼女の声は震えていた。

「当たり前だろ、もう冬なんだから」
「もうちょっと暖かい服にすればよかった……」
「お前、それ以外にも服なんか持ってたのか」
「当たり前でしょ、私のことなんだと思ってるの」

他愛無い話をしながら森を進めば、Salvationは疲れた、と声を漏らしてその場にしゃがみ込む。

「早ぇな、狩場はまだまだ先だぞ」
「だって寒いんだもん」
「はいはい。ほらよ、これでも飲んでろ」

そう言って渡した水筒の中には、朝方に作ったばかりのスープが入っている。彼女がそれを開いた瞬間、暖かい湯気が立ち上って、わあ、と声を漏らしている。自作した保温性の高い容器だ。
いただきます、と言って、彼女が静かにスープを飲み込む。

「……ん。暖かい……美味しいよ、ヴァルク」

そう彼女は微笑んで、



__ガタン、と大きな音が鳴って目覚めた。
反射で枕元の銃に手を伸ばし、音のした方へ構えるが、その先にはただ椅子を引いて、腰掛けようとしているSalvationが居るだけだった。

「ごめん、起こした?」

そう言って謝る彼女は無表情で、声に温度なんてものはない__いつも通りのはずなのに、それがやけに引っかかる。
それでやっと気付いた。さっきまで見ていた夢の中の彼女の表情は豊かだった、と。
思い出してみれば、その姿は、まるでただの幸福な少女のようで。

(……我ながら間抜けな夢だな、おい)

目の前の"彼女"が、Salvationが、椅子に座りながら首を傾げる。

「ヴァルク?」
「……まだ陽も出てねえじゃねえか」
「ごめん」

やはりその言葉に温度はない。ただ自分が不快そうにしているのを見て返事をしただけに過ぎないのだろう。自分が勝手に夢を見ていただけなのはわかってる、それでもその温度差に勝手に苛立ってしまう。

「薪入れてねえのか、お前」
「寒くなかったから。ヴァルクは毛布があるでしょ?」
「あぁ?お前の分も……待て、寝てねえのか?」
「うん」
「……」

ああ、やはりいつものアイツだ。人を救うために人であることすらやめてしまった彼女は、どうしようもなく救済者の姿をしている。問い詰めれば、いつものように「必要ないから」なんてふざけた言葉を返してくるのだろう。

「俺が寒いから入れとけ。陽が出るまで寝る、起こすなよ」
「わかった」

(……クソが)

何度聞いたって、やっぱり現実のお前は冷え切ってるままじゃねえか。
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