いい子で寝よ(1話完結)
お題ガチャにて「隣で正守さんが寝ている。寝顔を見て、無意識に「好き」と言ってしまった限。まぁどうせ起きてないだろと思ったら、「俺も」と返ってきた。え、起きてたの?」を頂きました。
少々改変しましたが、狸寝入りは大好きなので話の大筋はこちらからお借りしてます。
ーー
ぼんやりと意識が浮上する。
乾いた涙で上手く開かない目をうっすらと開けると障子から明かりが漏れている、まだ明け方だろうか。カサつく喉をそっと抑えて起きようとして、腕の中の温もりに気付いた。普段は限が抱き締められている事が多いが、今日はどうやら逆らしい。いつも余裕そうで大人びた均整な顔が穏やかに限の胸に寄りかかり、限が起きようとした事を無意識の内に察知したのか腕の力が強まって、とても水を飲みに行けそうに無いな。と思い直し、体を布団にもう一度沈めて甘えん坊の頭をそっと抱えた。
皆から頼られて尊敬されて、勿論自分もそう思っている彼が、実は腕相撲では限に勝てなかったり、将棋や囲碁は得意でもババ抜きでポーカーフェイスを貫くのは苦手だったり、そういった些細な人間味が可愛くて、そして自分しか知らない気の抜けた寝顔や余裕の無い顔がたまらなく愛おしくなる。
「好きです。」
好意を乗せた声はやはり少し掠れていて、自分でも恥ずかしくなるくらい彼への愛おしさで溢れていた。だって仕方がない、離してくれない彼がこんなにも可愛い。二度寝はやめて、せっかく早く起きたのだから寝顔でも眺めて過ごそうかとそっと顔を覗くと眉間に皺が寄っていて悩ましい顔をしている。我慢できないといった様子で限にのしかかり抱きしめてぐりぐりと頭を押し付ける。
「俺も」
「!…起こしちゃいましたか。」
彼は意外と、顔に出る。ポーカーフェイスが保てないのはこういった好きの言葉一つも例外では無いらしい。狸寝入りは諦めたらしい彼は限の胸に顔を埋めて1つため息を着いてからやっと返事を寄越した。この様子では今起きた訳でも無さそうだ。
「いや、限が布団から出ようとした時には起きてたよ。」
「じゃあ俺が出るの引き留めたのわざとですか?」
「出ようと思えばこのくらいの拘束、限なら解けるだろ。」
「出来ないって分かってるのに、そういう事言うんですね。」
「やらないだけで出来るだろ。でもまぁ俺もして欲しくは無いかな。」
「水飲みたいのは正守さんのせいですよ。」
「ごめんね、じゃあ一緒に起きよっか。」
「…はい。」
彼は名残惜しそうに限の頬にキスを1つ落としてから体を起こした。自分の寝間着の胸元を少し直して腰紐を結び直している姿があまりにも無防備でなんだか危なっかしくてその背中を覆うように寄りかかった。
「どうしたの?」
「…こんなに広くて、頼り甲斐のある背中なのに、危なっかしいって思うんです。おかしいですかね。」
「俺だって、本当の限はすごく強いって知ってるのに、いつまでも守ってあげたいと思うよ。」
「だって、実際頭領の方が強いじゃないですか。」
「一応ね、でも最初会った時、小四の限相手に最終手段すら使う羽目になった。」
「それでも貴方は、俺の事を捕まえてくれた、ほとんど無傷で。腕くらい切っても、別に生えてきちゃうんですよ。」
「…直るからって、痛くてもいい理由にはならないよ。いや、限が痛くなくても俺が嫌だ。」
彼は限の話になると少し弱気になる。これも限しか知らない、彼の弱いところ。限が少しでも自分を低く見積もったり、蔑ろにしたりすると彼は自分が嫌だから駄目だと主張する。それはきっと限への気遣いや思いやりだけでなく、紛れもなく本心なのだと思う。だからこそ限は自分を大事にしようと思うようになった。例え既に治っていても自分が居ない間に限が傷を負ったと知ると、まるで割れ物に触るかのように慎重に、傷があった場所を撫でて労り悲痛な顔をするので結局限の方が音を上げる。彼には眩しいくらい笑顔で居て欲しかった。
「頭領、好きです。」
「…かわいいけど、やり直し。」
「やり直し、?」
ますます好きになる気持ちを抑えずに彼の背中へ言葉を投げると彼は限の方を向いて、手を握って、つい数時間前と同じような顔をして言った。
「正守さん、すきです。」
「愛してるよ、限。」
少しだけ最後の方の音が小さくなってしまったが、彼には間違いなく届いたらしい。いつか自分も好意ではなく愛を彼のように迷いなく堂々と伝えられる日が来るだろうかと思う。結局布団の上で随分と長くじゃれ合ってしまって、体を起こした本当の理由を思い出すのは限が咳を2つする頃だった。
少々改変しましたが、狸寝入りは大好きなので話の大筋はこちらからお借りしてます。
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ぼんやりと意識が浮上する。
乾いた涙で上手く開かない目をうっすらと開けると障子から明かりが漏れている、まだ明け方だろうか。カサつく喉をそっと抑えて起きようとして、腕の中の温もりに気付いた。普段は限が抱き締められている事が多いが、今日はどうやら逆らしい。いつも余裕そうで大人びた均整な顔が穏やかに限の胸に寄りかかり、限が起きようとした事を無意識の内に察知したのか腕の力が強まって、とても水を飲みに行けそうに無いな。と思い直し、体を布団にもう一度沈めて甘えん坊の頭をそっと抱えた。
皆から頼られて尊敬されて、勿論自分もそう思っている彼が、実は腕相撲では限に勝てなかったり、将棋や囲碁は得意でもババ抜きでポーカーフェイスを貫くのは苦手だったり、そういった些細な人間味が可愛くて、そして自分しか知らない気の抜けた寝顔や余裕の無い顔がたまらなく愛おしくなる。
「好きです。」
好意を乗せた声はやはり少し掠れていて、自分でも恥ずかしくなるくらい彼への愛おしさで溢れていた。だって仕方がない、離してくれない彼がこんなにも可愛い。二度寝はやめて、せっかく早く起きたのだから寝顔でも眺めて過ごそうかとそっと顔を覗くと眉間に皺が寄っていて悩ましい顔をしている。我慢できないといった様子で限にのしかかり抱きしめてぐりぐりと頭を押し付ける。
「俺も」
「!…起こしちゃいましたか。」
彼は意外と、顔に出る。ポーカーフェイスが保てないのはこういった好きの言葉一つも例外では無いらしい。狸寝入りは諦めたらしい彼は限の胸に顔を埋めて1つため息を着いてからやっと返事を寄越した。この様子では今起きた訳でも無さそうだ。
「いや、限が布団から出ようとした時には起きてたよ。」
「じゃあ俺が出るの引き留めたのわざとですか?」
「出ようと思えばこのくらいの拘束、限なら解けるだろ。」
「出来ないって分かってるのに、そういう事言うんですね。」
「やらないだけで出来るだろ。でもまぁ俺もして欲しくは無いかな。」
「水飲みたいのは正守さんのせいですよ。」
「ごめんね、じゃあ一緒に起きよっか。」
「…はい。」
彼は名残惜しそうに限の頬にキスを1つ落としてから体を起こした。自分の寝間着の胸元を少し直して腰紐を結び直している姿があまりにも無防備でなんだか危なっかしくてその背中を覆うように寄りかかった。
「どうしたの?」
「…こんなに広くて、頼り甲斐のある背中なのに、危なっかしいって思うんです。おかしいですかね。」
「俺だって、本当の限はすごく強いって知ってるのに、いつまでも守ってあげたいと思うよ。」
「だって、実際頭領の方が強いじゃないですか。」
「一応ね、でも最初会った時、小四の限相手に最終手段すら使う羽目になった。」
「それでも貴方は、俺の事を捕まえてくれた、ほとんど無傷で。腕くらい切っても、別に生えてきちゃうんですよ。」
「…直るからって、痛くてもいい理由にはならないよ。いや、限が痛くなくても俺が嫌だ。」
彼は限の話になると少し弱気になる。これも限しか知らない、彼の弱いところ。限が少しでも自分を低く見積もったり、蔑ろにしたりすると彼は自分が嫌だから駄目だと主張する。それはきっと限への気遣いや思いやりだけでなく、紛れもなく本心なのだと思う。だからこそ限は自分を大事にしようと思うようになった。例え既に治っていても自分が居ない間に限が傷を負ったと知ると、まるで割れ物に触るかのように慎重に、傷があった場所を撫でて労り悲痛な顔をするので結局限の方が音を上げる。彼には眩しいくらい笑顔で居て欲しかった。
「頭領、好きです。」
「…かわいいけど、やり直し。」
「やり直し、?」
ますます好きになる気持ちを抑えずに彼の背中へ言葉を投げると彼は限の方を向いて、手を握って、つい数時間前と同じような顔をして言った。
「正守さん、すきです。」
「愛してるよ、限。」
少しだけ最後の方の音が小さくなってしまったが、彼には間違いなく届いたらしい。いつか自分も好意ではなく愛を彼のように迷いなく堂々と伝えられる日が来るだろうかと思う。結局布団の上で随分と長くじゃれ合ってしまって、体を起こした本当の理由を思い出すのは限が咳を2つする頃だった。
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