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日本テニス選抜の合宿所で七不思議の記事を書くことになった。テニスの合宿所で何故このようなことになったのだろう。
取材の練習と息抜きもかねてという斉藤コーチの発案からこの企画が立ち上がったらしい。何か良いテーマがないかと思っていたところに学生たちが合宿所の怖い話をしていたため合宿所やそれぞれの学校にまつわる怖い話の取材をすることになったと言っていた。…こんなことでいいのだろうか?
そもそも自分は本来このようなことをするはずではなかったのだ。本来取材を受けるはずだった人が体調を崩し、急遽交代してくれと言われ断ることができずにここにいる。
レクリエーションルームに1軍メンバーのうち7名を集め、その人たちから合宿所などにまつわる怖い話を聞いて七不思議の記事を作るらしい。あの威圧感溢れる1軍たちがこんなお遊びのようなことに付き合っていることに驚きを隠せないが、彼らがやるというのならしっかりとした記事を完成させなければ。それこそあの1軍のメンバーたちに何をされるか分かったものではない。
取材開始時間が午後6時半からだったのは雰囲気作りのためなのだろうか。茹だるような暑さを振り撒いていた夏が鳴りを潜め、過ごしやすくなった秋がすっかりと世界を染め上げたこの時期は午後6時半でも辺りは薄暗い。
ましてや今日は天気も悪くこの時間でも外は数メートル先を見るのも難しい。風も強く轟々と唸っている。
なぜこんな日に薄暗い部屋で怖い話を聞かねばならないのか。それでも、自分の意志とは反対に足がレクリエーションルームのほうへ勝手に向かっているのは、心のどこかで怖い物見たさという思いがあるからだろうか。
到着したレクリエーションルームの扉を開けると一斉に12個の目が自分の方を見た。レクリエーションルームは部屋の中に大きなテーブルを一つとその周りを囲むようにして椅子が置かれ、その椅子に6人が座っている。
…6人?7人に話を聞くと言うことではなかっただろうか。まだ一人来ていないのだろうか。とりあえず空いている席へと腰を下ろした。
誰がしゃべるということもなく、何とも気まずい無言の時間が過ぎていく。自分が話せばいいのだろうけれど、なんとも話しづらい雰囲気だ。みんなどのように司会進行するのかとこちらの様子を窺っている。そして、来るべき7人目も一向に来る気配がない。ただ、いたずらに時間だけが過ぎていく。いつまでもこうしていても、どうしようもない。
「……あのう、皆さん、お忙しい中集まっていただいたと思いますのでそろそろ始めたいと思うのですが」
「7人集まるって聞いてたんだがよ、お前がその7人目か?それとも話を聞く”記者”のやつか?」
中の1人がじっと半ば睨むような目つきでこちらを見ながらつぶやいた。不愛想で蓄えている髭がいかつい雰囲気を醸し出している。話しかけられるだけでびくりと背筋が伸びる威圧感があった。
「はい。取材役の苗字名前といいます。今日は、皆さんのお話をお伺いするように斎藤コーチからいわれています。よろしくお願いします。」
「へぇ~。ほなよろしく☆」
関西訛りで褐色肌の人だ。気さくな雰囲気の人ではあるがどこか相手を見透かすような目に気味の悪さを感じるのは気のせいだろうか。
「……あのう、どうでしょうか? このまま待っていても仕方がないので、そろそろ始めませんか?」
「ええですよ」
一人が言い、残りの人たちはどうぞと言わんばかりに頷いた。
いったい、彼らはどんな怖い話をしてくれるのだろうか? 部屋の空気が妙に重く、肩にのしかかっているような気がしたのは僕だけだろうか。
立て付けの悪い窓から漏れる生暖かい隙間風が、頬を舐めるように吹いている。息をするのさえ苦しく思える。そんな思いを断ち切るようにして、大きな声でいった。
「それでは、始めましょう」
こうしてまだ見ぬ7人目を待たずして、集められた6人の怖い話が始まった。
第一話 種ヶ島修二
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