第2話 肉群切
「はあはあ……ここまで来れば、もう大丈夫ですよね?」
切と2人手を繫いで走って来て、息を切らしていた。
「あの……ありがとう、助けてくれて」
礼を言う耀に、切は笑って答えた。
「当然ですよ。耀先輩、どう見たって困っていましたから。助けるのが当たり前でしょ?」
もう怖くないですよ! と、年下の男の子に頭をよしよしされ、耀はじわりと涙が出た。
「本当、ありがとう。ずっと……つきまとわれて困っていたの……」
「ずっとって……ストーカーってヤツですか?」
耀にハンカチを渡して、背中をさする切は、心配そうに彼女を見る。
そして切は、
「わかりました! 僕、耀先輩の事、これから守ってあげます!」
ニコーっと耀を安心させるように笑って、宣言した。
「守るって……でも、どうやって……」
「耀先輩は、ちゃんと警察頼ってますか? ストーカー規制法もあるんですから、ちゃんと頼らないと。あと防犯ブザーとか持ってます? 僕のあげますよ」
「あ、持ってるから」という耀に対して、カバンから防犯ブザーを取り出した切は、「はい!」と彼女に渡す。
「もし万が一使いたい時に壊れていたら、嫌じゃないですか。だから僕は2コ以上持ってるんです」
耀は渡された防犯ブザーを見つめながら、涙が止まらなくなってしまった。
「本当、ありがとう……こんな風に誰かに頼る事が出来るなんて……久しぶりで。ずっと、他にも変な人とかに追いかけられたりするし……悩んでて……ありがとう……」
事件で両親が亡くなってしまってから、親戚たちはおろか、誰も耀に力を貸してくれる人はいなかった。警察にも、またあの事件みたいな事があったらと、怖くて相談出来ずにいたのだ。
今まで続いた緊張状態の中で、切は耀に救いの手を差し伸べてくれた救世主だった。
「泣かないで下さい、耀先輩。大丈夫ですから、一緒に対策していきましょう?」
「うん……」
そうして耀は一通り泣いた後、切のハンカチで涙を拭きながら尋ねた。
「でも、切くん……あ、そう呼んでいいかな?……切くんは、どうしてそんなに防犯グッズを持ってるの?」
不思議に思う耀に切が、あー……と、視線を逸らして、
「僕、こんな顔でしょ? よく女の子に間違えられて、痴漢行為されてきたんですよ。だからその対策にいつも持ってるんです」
そう説明した。
確かに可愛らしい女の子みたいな顔立ちで、声も変声期前らしく可愛らしい。
「そっか、大変なんだね。お互い気をつけようね」
「はい、痴漢やストーカーは、犯罪行為ですから、ヤツらの思い通りにさせずに、撃退していきましょう! ね?」
耀の手を取り、ぶんぶん振る切。
心強い味方が出来て、耀は久しぶりに心からの笑顔で笑った。
「あ、ヤバいですよ。もうこんな時間になってる!」
「本当だ! 早く学校行かなきゃ」
慌てて2人走って、学校へと向かったのだった。
────
────────
切くん、いい子だったな……。
耀は授業を受けながら考え事をしていた。
警察の人にまたあんな事があったら……って怖くて頼れなかったけど、頼ってもいいのかな……。
切の言葉で勇気が持てた耀は、今の現状を変えないと! と思い直した。
────
────────
「あきら」
下校時間、校門前で待ち伏せしていた鍵鉈騙。それを無視して歩き出す。
「あーっきら。なに無視してんの?……というより今朝のあのガキ、なに?」
沢山の同じ制服の人たちが下校する中、耀は騙の話に耳を貸さずに歩いて行く。
「……あのガキに、なにか言われたのか?」
耀の腕をつかむ騙に、
「はなして!」
と、その手を振り解こうとする。しかし、引き寄せられて、鍵鉈騙の腕の中に閉じ込められてしまう。
「や、やだ!」
嫌がる耀を抱き締めて、騙が忠告をする。
「あのガキはやめておけ、仲良くすんな。……ヤバいヤツの匂いがする……」
「あなたに言われたくない! 切くんはいい子よっ!」
「あきら。騙されんな」
「はなしてってば!」
どんと、強く騙を押して、その腕から逃れる。
「警察! 警察を呼びますよ!」
鍵鉈騙を見据えて、毅然とした態度で言う耀。
「ハア……。おれがいなきゃ、あきら他のヤツらに狙われるだろ? ケーサツなんか、肝心な時には役に立たねーって」
「もう、つきまとわないで!」
耀はそう言い残して、走っていった。
「ったく、耀ちゃんはよー……どーすっかな、あのガキ……」
切と2人手を繫いで走って来て、息を切らしていた。
「あの……ありがとう、助けてくれて」
礼を言う耀に、切は笑って答えた。
「当然ですよ。耀先輩、どう見たって困っていましたから。助けるのが当たり前でしょ?」
もう怖くないですよ! と、年下の男の子に頭をよしよしされ、耀はじわりと涙が出た。
「本当、ありがとう。ずっと……つきまとわれて困っていたの……」
「ずっとって……ストーカーってヤツですか?」
耀にハンカチを渡して、背中をさする切は、心配そうに彼女を見る。
そして切は、
「わかりました! 僕、耀先輩の事、これから守ってあげます!」
ニコーっと耀を安心させるように笑って、宣言した。
「守るって……でも、どうやって……」
「耀先輩は、ちゃんと警察頼ってますか? ストーカー規制法もあるんですから、ちゃんと頼らないと。あと防犯ブザーとか持ってます? 僕のあげますよ」
「あ、持ってるから」という耀に対して、カバンから防犯ブザーを取り出した切は、「はい!」と彼女に渡す。
「もし万が一使いたい時に壊れていたら、嫌じゃないですか。だから僕は2コ以上持ってるんです」
耀は渡された防犯ブザーを見つめながら、涙が止まらなくなってしまった。
「本当、ありがとう……こんな風に誰かに頼る事が出来るなんて……久しぶりで。ずっと、他にも変な人とかに追いかけられたりするし……悩んでて……ありがとう……」
事件で両親が亡くなってしまってから、親戚たちはおろか、誰も耀に力を貸してくれる人はいなかった。警察にも、またあの事件みたいな事があったらと、怖くて相談出来ずにいたのだ。
今まで続いた緊張状態の中で、切は耀に救いの手を差し伸べてくれた救世主だった。
「泣かないで下さい、耀先輩。大丈夫ですから、一緒に対策していきましょう?」
「うん……」
そうして耀は一通り泣いた後、切のハンカチで涙を拭きながら尋ねた。
「でも、切くん……あ、そう呼んでいいかな?……切くんは、どうしてそんなに防犯グッズを持ってるの?」
不思議に思う耀に切が、あー……と、視線を逸らして、
「僕、こんな顔でしょ? よく女の子に間違えられて、痴漢行為されてきたんですよ。だからその対策にいつも持ってるんです」
そう説明した。
確かに可愛らしい女の子みたいな顔立ちで、声も変声期前らしく可愛らしい。
「そっか、大変なんだね。お互い気をつけようね」
「はい、痴漢やストーカーは、犯罪行為ですから、ヤツらの思い通りにさせずに、撃退していきましょう! ね?」
耀の手を取り、ぶんぶん振る切。
心強い味方が出来て、耀は久しぶりに心からの笑顔で笑った。
「あ、ヤバいですよ。もうこんな時間になってる!」
「本当だ! 早く学校行かなきゃ」
慌てて2人走って、学校へと向かったのだった。
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切くん、いい子だったな……。
耀は授業を受けながら考え事をしていた。
警察の人にまたあんな事があったら……って怖くて頼れなかったけど、頼ってもいいのかな……。
切の言葉で勇気が持てた耀は、今の現状を変えないと! と思い直した。
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「あきら」
下校時間、校門前で待ち伏せしていた鍵鉈騙。それを無視して歩き出す。
「あーっきら。なに無視してんの?……というより今朝のあのガキ、なに?」
沢山の同じ制服の人たちが下校する中、耀は騙の話に耳を貸さずに歩いて行く。
「……あのガキに、なにか言われたのか?」
耀の腕をつかむ騙に、
「はなして!」
と、その手を振り解こうとする。しかし、引き寄せられて、鍵鉈騙の腕の中に閉じ込められてしまう。
「や、やだ!」
嫌がる耀を抱き締めて、騙が忠告をする。
「あのガキはやめておけ、仲良くすんな。……ヤバいヤツの匂いがする……」
「あなたに言われたくない! 切くんはいい子よっ!」
「あきら。騙されんな」
「はなしてってば!」
どんと、強く騙を押して、その腕から逃れる。
「警察! 警察を呼びますよ!」
鍵鉈騙を見据えて、毅然とした態度で言う耀。
「ハア……。おれがいなきゃ、あきら他のヤツらに狙われるだろ? ケーサツなんか、肝心な時には役に立たねーって」
「もう、つきまとわないで!」
耀はそう言い残して、走っていった。
「ったく、耀ちゃんはよー……どーすっかな、あのガキ……」