第1話 鍵鉈騙

 その日からだ、鍵鉈騙に纏わり付かれるようになったのは。

 彼から逃げるため、自転車通学しようにも、朝必ず鍵鉈騙の手でパンクさせられている。何度も何度も直したけど、無駄で諦めて歩きで学校へ行くようになった。

 そして携帯。
 毎日何通もくる鍵鉈騙からのメールと電話。何度携帯を変えてもかかってきて、着信拒否にすれば数日後、必ず耀の携帯に、鍵鉈騙の新しいアドレスと番号が登録されていた。

「もう、いやっ!」

 耐えられなくなった耀は、また警察の方に頼ろうとも思った。
 でも、鍵鉈騙に守られているから、他の被害に遭わずに済んでいるのも事実。それに、警察の方がまたあんな目に遭ったら……そう考えると、耀は頼る事が出来なかった。

 そうして、為す術もなく、今もこの状態が続いている。

♪~♪~

 携帯から流れるモーツァルトの
『アダージョ』の曲……鍵鉈騙からの
着信音……。

「誰か助けて……」

 携帯を無視して、耀はクッションに顔を押し付けて泣いた……。



 完

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