第3話 血池手繰留
「美術室……?」
渚が入って行った美術室を見て、そっと近寄り中の様子を伺う。
「あ、血池先輩……」
渚は美術部の先輩である、血池先輩と何やら話している。
血池手繰留 先輩は、コンクールでよく賞を取っている我が校で有名な生徒だ。でも、彼の作品は耀は好きではなかった。傷ついた少女の痛々しい油絵ばかりなのだが、なぜか絵の中の少女はうっとりとした表情をしてこちらを見ているのが、不気味なのだ。
「何を話しているんだろ……」
疑問に思いつつそっと覗き見ていると、渚は唐突に衣服を脱ぎ始めた。
「え、渚!?」
びっくりしてどうすればと慌てている内に、渚は一糸纏わぬ生まれたままの姿になる。
「あ、絵のモデル……とか?」
やっと思考が追いついて、閃いた考えにホッとするのもつかの間、耀は渚の身体を見て口を押さえた。
身体中傷だらけで、ミミズ腫れや引っかき傷ばかりついている。
そして、次の光景に耀は息を飲む。
血池先輩が渚に近寄り、そして……
「うっ……!!」
渚の身体を、持っていたナイフで傷つけた。
「渚っ……!!」
思わずドアを開けて中に入ろうとした耀だが、背後から抱き締められて身動きが出来なくなった。
「……!!」
「遅いから何してんのかと思えば……あんま変な事に関わんなよ」
鍵鉈騙が耀の身体を抱き締め、声を出さぬように耀の口を手で塞いでいた。
「んんー!」
騙の腕から逃れようともがくが、びくともしない。
「つ……うっ……」
その間も血池先輩は、渚の身体をナイフで傷を作っていく。
「あーゆープレイを楽しんでんだろ? ほっとけばいい。帰ろーぜあきら」
そう言う騙に納得がいかず、耀は自分の口を塞ぐ騙の手を噛んだ。
「いってー」
「渚っ!」
美術室のドアを開けて中に入る耀。
「あきら……」
渚はびっくりした顔でこちらを見る。
「渚、何をしているの? こんな傷だらけになって……何かこの人に弱味を握られているの?」
心配する耀に渚は首を振り、
「違うの。私が血池先輩の絵のモデルになりたくて、頼んだの」
血池先輩を見れば、うっすらと微笑んでいる。
「わかんないよ。絵のモデルでなんでナイフで傷つけられているの!?」
「私のモデルには、リアルな傷が必要でね。それで実際にナイフで傷を作り、血を流すその恍惚なる美しさを表現させてもらっているんだよ」
優しげな、小さな子供に諭すように話す血池先輩は、耀に穏やかな表情を浮かべて話した。
「耀。私は血池先輩のモデルを出来て幸せなの。邪魔しないで」
「渚……」
「さあ渚君、続きを。血が乾いてしまう前に」
「はい、先輩」
その渚の表情は、血池先輩をうっとりとした顔で見つめていた。絵の中の少女たちがこちらをうっとりと見つめるのは、実は血池先輩をうっとり見ていたのだと、耀は今気付く。
「そんなの、おかしいよ……」
友人の行動がわからず耀は呆然とする中、騙が声をかける。
「あきらちゃんには、まだわからねぇー世界かもな。ククク……」
そうして騙に手を引かれ、美術室を後にした。
「耀の友達が自分から進んでしてんだろ? なら、いいんじゃねーの?」
「……私やっぱり止めてくる」
再び美術室に戻ろうとする耀を、騙は止める。
「やめとけ。あれは惚れ込んでいるから、何言っても聞かねーって」
「でも……」
「ヘタしたら友情にヒビが入るぜ」
「……」
俯く耀の頭を撫でてやり、
「どーせ絵が完成したら、ヤローは興味なくすだろ」
「なんでわかるの……?」
「そーゆーヤツのニオイがするからな。あれはほっといて大丈夫だ」
納得は出来なかったが、耀には渚を止める事が出来ない。
「渚……」
後ろ髪を引かれる思いながらも、耀は騙と帰る事にした。
渚が入って行った美術室を見て、そっと近寄り中の様子を伺う。
「あ、血池先輩……」
渚は美術部の先輩である、血池先輩と何やら話している。
「何を話しているんだろ……」
疑問に思いつつそっと覗き見ていると、渚は唐突に衣服を脱ぎ始めた。
「え、渚!?」
びっくりしてどうすればと慌てている内に、渚は一糸纏わぬ生まれたままの姿になる。
「あ、絵のモデル……とか?」
やっと思考が追いついて、閃いた考えにホッとするのもつかの間、耀は渚の身体を見て口を押さえた。
身体中傷だらけで、ミミズ腫れや引っかき傷ばかりついている。
そして、次の光景に耀は息を飲む。
血池先輩が渚に近寄り、そして……
「うっ……!!」
渚の身体を、持っていたナイフで傷つけた。
「渚っ……!!」
思わずドアを開けて中に入ろうとした耀だが、背後から抱き締められて身動きが出来なくなった。
「……!!」
「遅いから何してんのかと思えば……あんま変な事に関わんなよ」
鍵鉈騙が耀の身体を抱き締め、声を出さぬように耀の口を手で塞いでいた。
「んんー!」
騙の腕から逃れようともがくが、びくともしない。
「つ……うっ……」
その間も血池先輩は、渚の身体をナイフで傷を作っていく。
「あーゆープレイを楽しんでんだろ? ほっとけばいい。帰ろーぜあきら」
そう言う騙に納得がいかず、耀は自分の口を塞ぐ騙の手を噛んだ。
「いってー」
「渚っ!」
美術室のドアを開けて中に入る耀。
「あきら……」
渚はびっくりした顔でこちらを見る。
「渚、何をしているの? こんな傷だらけになって……何かこの人に弱味を握られているの?」
心配する耀に渚は首を振り、
「違うの。私が血池先輩の絵のモデルになりたくて、頼んだの」
血池先輩を見れば、うっすらと微笑んでいる。
「わかんないよ。絵のモデルでなんでナイフで傷つけられているの!?」
「私のモデルには、リアルな傷が必要でね。それで実際にナイフで傷を作り、血を流すその恍惚なる美しさを表現させてもらっているんだよ」
優しげな、小さな子供に諭すように話す血池先輩は、耀に穏やかな表情を浮かべて話した。
「耀。私は血池先輩のモデルを出来て幸せなの。邪魔しないで」
「渚……」
「さあ渚君、続きを。血が乾いてしまう前に」
「はい、先輩」
その渚の表情は、血池先輩をうっとりとした顔で見つめていた。絵の中の少女たちがこちらをうっとりと見つめるのは、実は血池先輩をうっとり見ていたのだと、耀は今気付く。
「そんなの、おかしいよ……」
友人の行動がわからず耀は呆然とする中、騙が声をかける。
「あきらちゃんには、まだわからねぇー世界かもな。ククク……」
そうして騙に手を引かれ、美術室を後にした。
「耀の友達が自分から進んでしてんだろ? なら、いいんじゃねーの?」
「……私やっぱり止めてくる」
再び美術室に戻ろうとする耀を、騙は止める。
「やめとけ。あれは惚れ込んでいるから、何言っても聞かねーって」
「でも……」
「ヘタしたら友情にヒビが入るぜ」
「……」
俯く耀の頭を撫でてやり、
「どーせ絵が完成したら、ヤローは興味なくすだろ」
「なんでわかるの……?」
「そーゆーヤツのニオイがするからな。あれはほっといて大丈夫だ」
納得は出来なかったが、耀には渚を止める事が出来ない。
「渚……」
後ろ髪を引かれる思いながらも、耀は騙と帰る事にした。