第3話 血池手繰留

「じゃあな、耀。なんかあったらすぐに携帯でおれを呼べよ」

 校門の前で鍵鉈騙と別れて、耀はとぼとぼと、校内に向かう。

「あ、耀。おはよ」

「渚、おはよう」

 私の友達は、渚以外いらない。もう、誰にも心を許さないようにしなきゃ……。

 騙がいるとすぐに離れていってしまう渚だが、学校では仲良しの友達だった。

「耀、昨日の課題やった? 私難しくて解けなかったとこあって、教えてくれる?」

「いいよ、どこが分からなかったの?」

 朝のホームルームが始まる前、渚と課題を一緒に解きながら、耀は学校の生活に溶け込んだ。

 学校は安全だから、大丈夫。怖い事なんて、なにもないから。

 むしろ、今やもう、家よりも安全かもしれない。たくさんの常識人がいて、危険が起こってもすぐに対処出来る場所だから。

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 放課後。

「じゃあね、耀。また明日」

 渚が耀に手を振ってバイバイをする。

「渚、最近どうしたのかな……」

 渚はいつも校門前、騙が待ち伏せしている所までは一緒に帰っていたのだが、最近は「用事があるから」と耀に言って、学校に残っている。

「おかえりー、耀」

 騙が校門前で耀を待ち伏せしていて、彼女に手を振る。

「あきらちゃん、どーした難しい顔して? 悩み事か?」

「なんでもありません」

 鍵鉈騙に相談する事なんて、なにもない。耀はいつも通り、話しかける騙を無視しながら、マンションまで歩く。

「じゃあまた明日な」

 耀にキスをして頭を撫で、鍵鉈騙が帰っていく。
 今日も鍵鉈騙のおかげで無事、何事もなく家に帰られた。嫌だけどしょうがない。騙は耀が外出する時は必ずついてくる。そのおかげで学校の登下校以外も普段の買い物とか用事とかも、変な人たちに襲われずに済んでいる。

 だって私にはもう、頼れる家族はいないんだから……。

 家族を思い出せば必ず思い出す、あの人の事。あの人は優しかった。ずっとずっと、私のお兄ちゃんみたいな存在でいて欲しかった。なのに……。

「もう考えるのはやめよう」

 彼との思い出は、甘さと懐かしさと恐怖で彩られている。耀の心にじっとりと染みついたまま。

「それより渚。本当、最近どうしたんだろ?」

 最近、渚は耀と登下校を一緒にしない。渚は部活などはしていないし、今まで帰りは校門前まで一緒にしていたのに。

 友人の事を考えながら、その日耀は早々に寝る事にした。




 次の日。

「それじゃあね、耀」

 今日も渚は、耀と別れて行ってしまった。

 何をしているのか気になって聞けば、

「ううん、なんでもないよ」

 と、話してくれない。

「それにあの傷……」

 渚は最近、腕に包帯を巻いている。もうずっと1週間位はしていて、最初見た時にびっくりして聞いたけど、

「ううん、なんでもないの」

 と、教えてくれない。

 やっぱり心配だ……。

 耀は渚の後をつけていく事にした。



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