ハンギングツリー

 眠る女を抱き上げて倉庫内にある『処置室』に連れて行く。

 カーテンで周りから仕切られたこの処置室は、眠りに落ちたモノをハングドマンに仕立て上げるための空間。

 零慈は女を硬いステンレス製の手術台に乗せ、予め用意しておいた致死薬を手際良く彼女の腕に注射する。

 女が人からモノに変わるまでそっと手を握り頬を寄せ、その体温が冷たくなるまでじっと待つ。

 これは零慈にとっての儀式であり、ハングドマンになるモノ達の死を慈しむ行為だった。

「もう辛くはないからね。大丈夫だよ」

 刻一刻と女の体は熱を失っていく。

 緩やかに進む死の行進の中、女は途中で目覚めることなくやがて死体となった。

 完全に体温が消え失せてただのモノになったのを確認した後、零慈は次の段階に行動する。

 ハングドマンにするためには腐らないよう処置を施さなければならない。

 彼は独学で勉強した、死体を半永久的に保つエンバーミングという方法を的確に手早くこなしていく。

 全てはハンギングツリーに完璧なハングドマンを吊り下げるために。

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