ハンギングツリー

「ゆっくりと夢を見ながら眠らせてあげる」

 優しく包み込むような微笑みをうかべ彼は言った。



 倉庫内にある簡易ベッドに寝かされ女はうとうとし始める。

 さっき飲んだコーヒーに睡眠薬でも入っていたのだろう。

 彼女は安らかな気持ちで男に話しかける。

「あたし以外の人もこうして眠らせてあげたの?」

 あの沢山のハングドマン達は近くで見ると皆、幸せそうな顔をしていたから。

 きっと彼らは穏やかな死を迎えたんだろう。

「そうだよ。みんな僕に感謝をして眠っていった」

 零慈に手を握ってもらいながら女はそう、と安心したような笑みを浮かべ目を閉じる。

「今夜あなたに出会えてよかった……」

 そう言ったきり、彼女は話すことをやめて安らかな眠りに落ちていった。

 永遠を約束された目覚めることのない眠りへと。



「お疲れ様。君はもう何も考えなくていいんだよ」

 女が深い眠りに入ったのを見届けると、零慈は支度を始めた。

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