ハンギングツリー

 女は暗示にかけられたようにふらふらと、零慈の後をついて行った。

 ただその瞬間を楽しみにして。


「さあ、ここだよ」

 零慈の車に乗って連れられたその先は人通りの全くない倉庫。

 彼が鍵を開けその重たい扉をスライドさせる。

「僕の秘密の部屋へようこそ」

 電気のスイッチが入り一気に照明がつく。

「あっ……」

 女はその1音を発して声を閉ざす。

 煌めくイルミネーションにライトアップされて浮かび上がるそれは、ただぐるぐると規則的に回っていた。

「HangingTreeって言うんだ」

 驚いて言葉を失う彼女に零慈は説明し出す。

「そしてツリーにぶら下がるのはHangedman。タロットカードにもある吊された男だよ」

 まあ、女性もいるけどね。

 彼はうっすらと微笑みを浮かべた。

 巨大な大木を模した機械仕掛けの装置は精巧に出来ており、枝先に付いたロープに沢山の人がぶら下がりながら回る。

 倉庫内にチカチカと光る電光と機械のモーター音が静かに鳴る。

「こんなことって……」

 やっとの事で一言を発した女の声は恍惚としていた。

「気に入った? 君もこの一員になるんだよ」

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