ハンギングツリー
ぐるぐる回るハンギングツリー。
今日もまたひとつ、飾る『モノ』が出来上がった。
「綺麗だよ、とても綺麗だ」
酷く顔色の優れない青年はひとりパチパチと手を叩いた。
数時間前。
青年、篠宮零慈は駅前の繁華街にいた。
夜のこの街は昼間の健全たる赴きが影を潜め、今は煌びやかさとその奥に隠れる情念が煙のように渦巻いている。
「ねえ、君」
沢山の中から見定めて彼が決めたモノに声をかける。
「え、あっ……あたし、ですか?」
まだ20代前半だろう、少し肌寒さを感じる夜に薄手のラベンダーのカーディガンを羽織り、水色に染まったワンピースといった春先の爽やかな服装。
「な、なにか?」
手に持つブランド物のバッグを持ち替えた女はその小奇麗な見た目に反して、鬱蒼とした闇を纏っていた。
「あなたを待っていました」
女は、突然話しかけてきた零慈を上から下まで無遠慮に眺めた。
紺色のキャップを目深に被り、黒のパーカーに青いジーンズの出で立ちはどこにでもいる格好をした青年だ。
だがその顔はひどく蠱惑的な優美さを讃えており、初めて会ったのに惹きつけられる麻薬のような魅力を放つ。
「あなたを待っていました」
零慈はもう一度同じ言葉を繰り返す。
しっかりと彼のその双眸を見た途端、女はどうしようもなくある衝動に駆られた。
この男なら安心して任せられる、と。
今日もまたひとつ、飾る『モノ』が出来上がった。
「綺麗だよ、とても綺麗だ」
酷く顔色の優れない青年はひとりパチパチと手を叩いた。
数時間前。
青年、篠宮零慈は駅前の繁華街にいた。
夜のこの街は昼間の健全たる赴きが影を潜め、今は煌びやかさとその奥に隠れる情念が煙のように渦巻いている。
「ねえ、君」
沢山の中から見定めて彼が決めたモノに声をかける。
「え、あっ……あたし、ですか?」
まだ20代前半だろう、少し肌寒さを感じる夜に薄手のラベンダーのカーディガンを羽織り、水色に染まったワンピースといった春先の爽やかな服装。
「な、なにか?」
手に持つブランド物のバッグを持ち替えた女はその小奇麗な見た目に反して、鬱蒼とした闇を纏っていた。
「あなたを待っていました」
女は、突然話しかけてきた零慈を上から下まで無遠慮に眺めた。
紺色のキャップを目深に被り、黒のパーカーに青いジーンズの出で立ちはどこにでもいる格好をした青年だ。
だがその顔はひどく蠱惑的な優美さを讃えており、初めて会ったのに惹きつけられる麻薬のような魅力を放つ。
「あなたを待っていました」
零慈はもう一度同じ言葉を繰り返す。
しっかりと彼のその双眸を見た途端、女はどうしようもなくある衝動に駆られた。
この男なら安心して任せられる、と。
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