婦女子連続殺傷事件

「なんで葉月ちゃんが……だって、君は被害者じゃないか」

 世之介が驚いていると、清一郎が話す。

「カモフラージュだろうな。殺傷魔に襲われた者は疑われはしない。殺傷魔が男と証言していたのも、少しでも自分に疑いがいかないようにする為だろう」

「うっ、うう……」

 清一郎に拘束された葉月は最早、抵抗はしなかった。ただ顔を俯せて泣いているようだった。

「ねえ、葉月ちゃん。なんで、なんでこんな大人しそうな君が殺傷魔なんて……」

 世之介が尋ねると、葉月はぽつりぽつりと話し出す。

「憎かった……ただ、憎かった。綺麗な女性たちが憎かった……。わたしはこんな、そばかす顔の冴えない顔で、みんなわたしを貶してきた……。悔しかった、すごく。でもどうする事も出来なくて、泣いてばかりで、だから、腹が立って、それで……」

「そんな事で殺傷事件を起こしていたのか。くだらない。貶されたのならば、自分を変えようと化粧をするなり笑顔でいるようにしたり、いくらでも努力が出来ただろう。他人に馬鹿にされたらそれをバネにして、這い上がればいいものを」

 清一郎が葉月に辛辣な言葉をぶつける中、世之介は葉月に優しく話しかける。

「そんな事、出来てたらこんな事件を起こしていないよね」

 葉月の頬に手を添えて、ゆっくりと上向かせる世之介。

「君のそばかすはとてもチャーミングだよ? 目鼻立ちだって整っているし、眼鏡も変えたらきっと、貶してきた人を見返せる。そうだ、今度お涼に化粧を習いに来たらどうだい? 今度、遊びにおいでよ」

 にこりと笑いかける世之介に、葉月の瞳には大粒の涙が浮かぶ。

「うう……う、うああああんっ」

 声を上げて泣き出してしまった葉月に、世之介はおろおろする。

「どうしよう、清さん。泣かせてしまったよ」

「相変わらず、優しい奴だよお前は。自分の腹を刺した殺傷魔にまで優しく出来るとは」

 その険しかった表情を柔和にさせて、清一郎は優しく世之介を見る。

「あれ、そうだ僕。腹、刺されたんだったぁ……ああ、世界がまわる……」

「世之介!!」

 世之介は腹から血を流して、その場に倒れた。


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